3日も引きずるのはどうかとも思うが……。
 今日もまた、TCAの話だったりする(笑)。

 TCAとは、「お祭りだから許せる」という、イレギュラーなものだ。
 客席にいるのは、ファンばかり。タカラヅカをはじめて観る団体客などは、いないだろう。
 だから、いつもの大衆主義を捨てて、「ファンを愉しませる」という主眼で構成ができる。

 ムラでのLOVEも、東宝てのDREAMも、その点では同じスタンスだろう。
 LOVEでは1部で、トップスターがちがう組のトップ娘役と組む、ということをわざわざ「おたのしみください」と台詞で言わせた。2部はお笑いショー、これはスターの個性を知っていないと笑えない作り。
 つまり、完全に「スタンダードを熟知している人」へのプログラムだ。
 DREAMではスターのプライベートな写真を公開し、それについて生のコメントをさせた。完全なファンサービスだ。
 ムラにしろ東宝にしろ、TCA以外では反則でしかないことを、やっている。万が一、生まれてはじめてヅカを観る人がいたら、盛大に引くだろーし、軽蔑される可能性もある。
 見事な「内輪受」な内容だったからだ。

 でも、これはTCA。だからぜんぜん、OKよ。

 ただ、同じ「内輪受」でありながら、ふたつの作品に明らかに差があったことが、くやしいだけ。

 トップスターさんというのは、とても忙しいんだよね。だからあれが精一杯なのよね。……そう自分を納得させるしか、ないなあ。
 LOVEの方のことね。
 1部の、別の組の娘役とのからみ……わざわざ「おたのしみください」と言うから期待したら、なーんだ、ただ一緒に歩くだけか。ダンスはナシなのねー。
 ははは、たしかに新鮮ね、手をつないで歩いてる。…………これを、たのしめと?
 全編、ただ、歩いて歌うだけの構成。1人出てきて、1人で歌う。また1人出てきて、1人で歌う。トップさんはとくにこの傾向。梅コマの第2部、「北島三郎、大いに歌う」とかのノリっすか。
 TCAである意味、ほとんどないっす。
 だって、いつも1人だけなら、5組揃う意味ないじゃん。
 唯一、まともにメンバーが絡んだのは、お笑い歌謡劇、「のど自慢大会」だけ。
 ええ、あってよかったわ、「のど自慢大会」。これがなかったら、TCAの意味が皆無だった。1人で別録りしたテープを、あとで編集して1つの作品にしたみたいに、みんな1人ずつしか出てこないんだもの。

 で、このTCA LOVE、なにがしたかったの?

 とてもわかりやすい、簡単な失敗例として、興味深い作品だ。

 トップ5人は、平等でなくてはならない。娘役も、それに準じる。専科も、ないがしろにしてはならない。
 つまり、全員が主役クラス。脇役なし。

 ……そんな作品、つまらないって。

 緩急のつけようがない。
 いつも同じテンション、同じレベル。誰も1番になっちゃだめ。
 MCも台本通り、ぬけがけナシ、ヒーロー不在を要求。気持ちよりも形式重視。

 わたしが演出家でも、アタマかかえるな、こりゃあ。
 いったいどんな演出をしろっていうんだ。
 しかも、トップスターさんは忙しいから、揺れるだけの振りで歌うのが精一杯、相手役が必要な複雑なダンスも演技も、お稽古時間がとれないからできない。
 ほんと、ただひとりずつ歌わせるしか、ないか。
 でもそれだけじゃあんまりなんで、「のど自慢」。これなら出演者グループごとの練習が可能。全員そろわないと一歩もすすめない構成じゃない。

 舞台裏に同情はするが、それでできあがった作品がアレじゃあ、評価できないわ。選曲含め、センスは最悪だったしねえ。つーか、本気で作ってアレだったの? ファンをバカにして、手を抜いて作ってない??

 舞台は、トップスターだけでは作れない。
 さまざまな人たちがいる、その中央に立つからこそトップスターは輝き、タカラヅカの醍醐味はそこに生まれる。

 そのことを、再確認させてくれた。
 この、わっかりやすい失敗作で。

 LOVEを観たあとに、東宝DREAMを観て。
 ほっとしたよ。こちらは、ちゃんとピラミッドが形成されていた。
 タカラヅカだった。
 メインになるのは組内2番手の男役たち。かれらより少し露出を抑えるかたちで3番手たち。その下に娘役たち、さらに下に花組の若手たち。
 そして、トップというかたちで、トド、娘役トップというかたちで檀ちゃんが現れる。
 見事なまでに、2、3番手男役たちの魅力をアピール!! することを目的に作られてるなあ。完全なファンサービス。娘役は総脇役状態。
 トドはトップスター、冗長になる舞台を締める意味でも、お笑いなし。芸だけ勝負、おもしろみはなし。でも、この人の立場と芸風に合っているから、適材適所。
 檀ちゃんは、娘役で唯一無二の扱い。男たちにかしずかれる女王の位置だ。されどお笑いにも参加、そのへんの立ち位置がうまいね。
 プライベート写真の使用とMCは諸刃の剣、失敗すると最悪だが、うまく使ったもんだ。やっぱテーマを決めてあったのが、強いな。

 こちらの作品も、ある意味興味深い。
 徹底した男役重視。娘役はただの背景。
 タカラヅカの性質を、剥きだしにしている。

 わたしは、LOVEを失敗作だと思っている。そして、DREAMを成功作だと思っている。
 それは、出演者がどーこーではない。作品として、だ。
 どちらも「お祭り」ならではの「内輪受」作品、3回限定だから許される、という前提で作られたもの。
 なのに、あからさまな明暗。

 タカラヅカであるなら、トップスターを中心とした、ピラミッドは崩してはならんのだ。
 いや、ヅカじゃなくても、「作品」ならそうだろう。
 登場人物すべてが同じ扱いのTVドラマが、おもしろいもんか。同じ色一色で塗りつぶした、背景も人物もわからなくなった絵を見て、なにをたのしめというのか。
 まちがってるよ。

 みんなが大好きな主役だけ出して、主役だけの扱いをして、さあよろこびなさい、なんて、バカげてる。

 タカラヅカが、タカラヅカであることを、忘れないで。

 あー。
 企画段階から、まちがってたよね……今年のTCA。
 たとえ、どんなに「所詮TCA」であっても、今年ほどひどいものじゃなかった。だって最低限それは「タカラヅカ」であり、トップスターを中心としたピラミッドが形成されていたのだもの。

 それでも。
 草野球チームのユニホームを着たナルセは、かわいかった……。

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