嫌よ嫌よも好きのうち。@弟切草
2002年7月4日 ゲーム せっかくだから、『弟切草』の話をしよう。
ゲームショップで働いていたから、このゲームがよく売れたのは知っている。
いつまでも、そりゃーしつこく売れ続けていた。
同じメーカーから出ている『かまいたちの夜』がとてもおもしろかったので、きっと『弟切草』もおもしろいんだろーと思っていた。ええ、疑いもせずに。
きっかけがなかったから、プレイすることはないままだったが、機会さえあればやってみたいとずっと思っていた。安心していた。「チュンソフト」というブランドに。
きっかけは、妙なところからやってきた。
仕事関係の人から、いきなり『弟切草』の文庫本をもらってしまった。
なんでいきなり『弟切草』? その人からの走り書きのような手紙には、作者の長坂おじさんのはしゃぎっぷりが書いてあった。作者さんがかなり愉快な人なのかね。それでつい、なんの関係もないわたしにも、仕事の資料を送るついでに送ってくれた?
小説をもらってしまったから、あわててゲームを買った。だってゲームのネタバレがあったらいやだもんね。先にゲームをやろう。
『かまいたち』も『街』もおもしろかったから、『弟切草』もきっとおもしろいにちがいない。テレビのCMはめちゃくちゃこわかったし。
そして、ぼーぜん。
な、なんなんですか、これ……。
『弟切草』って、売れたよね。ヒット作だよね。サウンドノベルっちゅージャンルのパイオニア、この作品があったからこそ、サウノベが確立したんだよね?
この超絶大駄作がっ?!
たしかに、こわかった。
絵も、音も。SEの入り方、演出。すばらしかった。さすがだ、チュンソフト。
ただ、問題は。
テキスト。
最低。
読みながら、首をひねった。
なんなんだ、このうすら寒いセンスは。
たいてい、うすら寒い。ところどころは極寒。
あちこちでは、寒さを通り越して怒りの熱さにまで。
なんなの?
せっかくのすばらしい演出を、文章がすべて、ぶちこわしている!!
感情移入できないバカ全開のキャラ。納得できない破綻したストーリー。そして、選びようのないくだらない選択肢。
なんなんだ、こりゃ?!
あきれて、4回やっただけで弟に貸し出してしまった。『かまいたち』は40回もやったのに。『街』はオールクリアしたのに。
で、読んでみました、小説『弟切草』。覚悟を決めて。
…………ふふふ。
すごかったよ。
ほんっとに、すごかった。
わたし、生涯語り継ぐと思うわ、このすごさ。話題にせずにはいられないもの。
わたしの読書人生に置いて、ワースト1を争う輝かしい1冊!!(笑)
ここまでアタマの悪い文章は、見たことがない。
「てにをは」の問題じゃないの。「てにをは」はふつー。まちがってない。だから文章の基本は書けている。
世の中には、文章の基本がこわれてるのに出版されている本がいっぱいあるから、それくらいではおどろかないよ。
長坂おじさんの文章のすごさは、文法的なことじゃないんだわ。
センスがない、ってことなの。
言葉の選び方、カタカナの使い方、キャラクター造形、ストーリー展開、すべてが下品。アッタマわるー、って感じ。
えーと、思い浮かべてください。若者のことなんかなんにもわかってない、完璧なおじさんの姿を。時代錯誤なくらい、天然記念物なくらい「おじさん」という生き物。
だがそのおじさん、自分を若いと思っているし、若者の会話にまざりたくてうずうずしている。で、聞きかじりの若者っぽい言葉を駆使して、若者たちの間に入ってくる。自分はイケてると信じてるから、自信満々。サムいおやじギャグをとばしまくり、周りをブリザード状態にさせているのに、まったく気づいていないでご満悦。
おやじギャグのことさえ「ああ、こーゆーのはオジンギャグっていうんだっけ、アハハ」と自分で言って、「おれってかっこイー」と思っている。オジンじゃないです、おやじです、とつっこみたくても、すかさず「女の子が言ったらオバンギャグだネ!」とつづけてひとりで笑っているので、もーなにも言えない。
文章のすごさにまず、ダウン取られたな。10カウント取られる前に、なんとか起きあがったが。
次に来たのが、登場人物のコワレっぷり。人間の感情と思考を持っていません。
一人称なのがまた痛い。「ムフフ」と「ずきゅん」を繰り返す主人公とヒロイン。頭の中はセックスのことだけ。姿の見えない殺人鬼に追われていても、ソファーを見ればそこで「ムフフ」、草むらで「ムフフ」、ヒロインは鏡の前で裸でポーズ、いやあのだから、殺人鬼がすぐそこにいるかもしれないんですけど。
ああ、ここで挑戦者2度目のダウンだ、立ち上がれるか?!
そしてもちろん、ストーリーもめちゃくちゃだー。
エイリアン的思考の人たちが出ていて、人間の理解できるストーリーになるはずがないから、これはもうおどろくに値しないけどな。
かろうじて立ち上がった挑戦者、もう戦う気力はない。ふらふらなところを難なくノックアウト!!
総合芸術だよ、『弟切草』!
文章、キャラクター、ストーリー。すべてが総合して、なにひとつ裏切ることなく最悪だ。
はじめはとっとと読んで古本屋に売るつもりだったんだけど、100ページくらい読んだ段階で、降参した。
鉛筆片手に、最初から読み直し。
つっこみを書き込む。
……つっこまずにいれないって、コワレすぎてて。
読み終わったあとは、友人たちに回覧GO! 書き込み奨励、変だと思ったところ、脱力したところ、怒りに震えたところ、なんでも書き込んでくれ! イラストも大歓迎だ!
友人たちも大はしゃぎ。愉快な書き込みで埋まったこの本は、宝物です。
もうすっかり、長坂おじさんのファンです。
『弟切草』3部作は、知人に頼んで全部送ってもらいました。あるパーティでは、長坂おじさんご本人に会えるっちゅーんで、よろこびました。……会えなかったけど。
ゲーム『弟切草』は、演出とシステムはいいんだよ。悪いのは長坂先生の文章。
ゲーム『街』は名作で、8本あるシナリオのなかに、とってもサムいものがあったけれど、それはわざとサムくしているんだと思ったし、8本のシナリオの中にはそーゆーものも必要だろうと思った。だがそのサムいものこそが、長坂先生作で、狙ってサムいんでなく、彼のナチュラルな持ち味なんだと判明。
最悪を極めると、怒りや憎しみよりも、愛が生まれてしまうものなのです。
人間って不思議。
わたしと、わたしの弟は「長坂おじさん」の大ファンよ。先生の新作をたのしみにしている。
でも。
お願い先生、もうゲームは作らないで。
ゲームショップで働いていたから、このゲームがよく売れたのは知っている。
いつまでも、そりゃーしつこく売れ続けていた。
同じメーカーから出ている『かまいたちの夜』がとてもおもしろかったので、きっと『弟切草』もおもしろいんだろーと思っていた。ええ、疑いもせずに。
きっかけがなかったから、プレイすることはないままだったが、機会さえあればやってみたいとずっと思っていた。安心していた。「チュンソフト」というブランドに。
きっかけは、妙なところからやってきた。
仕事関係の人から、いきなり『弟切草』の文庫本をもらってしまった。
なんでいきなり『弟切草』? その人からの走り書きのような手紙には、作者の長坂おじさんのはしゃぎっぷりが書いてあった。作者さんがかなり愉快な人なのかね。それでつい、なんの関係もないわたしにも、仕事の資料を送るついでに送ってくれた?
小説をもらってしまったから、あわててゲームを買った。だってゲームのネタバレがあったらいやだもんね。先にゲームをやろう。
『かまいたち』も『街』もおもしろかったから、『弟切草』もきっとおもしろいにちがいない。テレビのCMはめちゃくちゃこわかったし。
そして、ぼーぜん。
な、なんなんですか、これ……。
『弟切草』って、売れたよね。ヒット作だよね。サウンドノベルっちゅージャンルのパイオニア、この作品があったからこそ、サウノベが確立したんだよね?
この超絶大駄作がっ?!
たしかに、こわかった。
絵も、音も。SEの入り方、演出。すばらしかった。さすがだ、チュンソフト。
ただ、問題は。
テキスト。
最低。
読みながら、首をひねった。
なんなんだ、このうすら寒いセンスは。
たいてい、うすら寒い。ところどころは極寒。
あちこちでは、寒さを通り越して怒りの熱さにまで。
なんなの?
せっかくのすばらしい演出を、文章がすべて、ぶちこわしている!!
感情移入できないバカ全開のキャラ。納得できない破綻したストーリー。そして、選びようのないくだらない選択肢。
なんなんだ、こりゃ?!
あきれて、4回やっただけで弟に貸し出してしまった。『かまいたち』は40回もやったのに。『街』はオールクリアしたのに。
で、読んでみました、小説『弟切草』。覚悟を決めて。
…………ふふふ。
すごかったよ。
ほんっとに、すごかった。
わたし、生涯語り継ぐと思うわ、このすごさ。話題にせずにはいられないもの。
わたしの読書人生に置いて、ワースト1を争う輝かしい1冊!!(笑)
ここまでアタマの悪い文章は、見たことがない。
「てにをは」の問題じゃないの。「てにをは」はふつー。まちがってない。だから文章の基本は書けている。
世の中には、文章の基本がこわれてるのに出版されている本がいっぱいあるから、それくらいではおどろかないよ。
長坂おじさんの文章のすごさは、文法的なことじゃないんだわ。
センスがない、ってことなの。
言葉の選び方、カタカナの使い方、キャラクター造形、ストーリー展開、すべてが下品。アッタマわるー、って感じ。
えーと、思い浮かべてください。若者のことなんかなんにもわかってない、完璧なおじさんの姿を。時代錯誤なくらい、天然記念物なくらい「おじさん」という生き物。
だがそのおじさん、自分を若いと思っているし、若者の会話にまざりたくてうずうずしている。で、聞きかじりの若者っぽい言葉を駆使して、若者たちの間に入ってくる。自分はイケてると信じてるから、自信満々。サムいおやじギャグをとばしまくり、周りをブリザード状態にさせているのに、まったく気づいていないでご満悦。
おやじギャグのことさえ「ああ、こーゆーのはオジンギャグっていうんだっけ、アハハ」と自分で言って、「おれってかっこイー」と思っている。オジンじゃないです、おやじです、とつっこみたくても、すかさず「女の子が言ったらオバンギャグだネ!」とつづけてひとりで笑っているので、もーなにも言えない。
文章のすごさにまず、ダウン取られたな。10カウント取られる前に、なんとか起きあがったが。
次に来たのが、登場人物のコワレっぷり。人間の感情と思考を持っていません。
一人称なのがまた痛い。「ムフフ」と「ずきゅん」を繰り返す主人公とヒロイン。頭の中はセックスのことだけ。姿の見えない殺人鬼に追われていても、ソファーを見ればそこで「ムフフ」、草むらで「ムフフ」、ヒロインは鏡の前で裸でポーズ、いやあのだから、殺人鬼がすぐそこにいるかもしれないんですけど。
ああ、ここで挑戦者2度目のダウンだ、立ち上がれるか?!
そしてもちろん、ストーリーもめちゃくちゃだー。
エイリアン的思考の人たちが出ていて、人間の理解できるストーリーになるはずがないから、これはもうおどろくに値しないけどな。
かろうじて立ち上がった挑戦者、もう戦う気力はない。ふらふらなところを難なくノックアウト!!
総合芸術だよ、『弟切草』!
文章、キャラクター、ストーリー。すべてが総合して、なにひとつ裏切ることなく最悪だ。
はじめはとっとと読んで古本屋に売るつもりだったんだけど、100ページくらい読んだ段階で、降参した。
鉛筆片手に、最初から読み直し。
つっこみを書き込む。
……つっこまずにいれないって、コワレすぎてて。
読み終わったあとは、友人たちに回覧GO! 書き込み奨励、変だと思ったところ、脱力したところ、怒りに震えたところ、なんでも書き込んでくれ! イラストも大歓迎だ!
友人たちも大はしゃぎ。愉快な書き込みで埋まったこの本は、宝物です。
もうすっかり、長坂おじさんのファンです。
『弟切草』3部作は、知人に頼んで全部送ってもらいました。あるパーティでは、長坂おじさんご本人に会えるっちゅーんで、よろこびました。……会えなかったけど。
ゲーム『弟切草』は、演出とシステムはいいんだよ。悪いのは長坂先生の文章。
ゲーム『街』は名作で、8本あるシナリオのなかに、とってもサムいものがあったけれど、それはわざとサムくしているんだと思ったし、8本のシナリオの中にはそーゆーものも必要だろうと思った。だがそのサムいものこそが、長坂先生作で、狙ってサムいんでなく、彼のナチュラルな持ち味なんだと判明。
最悪を極めると、怒りや憎しみよりも、愛が生まれてしまうものなのです。
人間って不思議。
わたしと、わたしの弟は「長坂おじさん」の大ファンよ。先生の新作をたのしみにしている。
でも。
お願い先生、もうゲームは作らないで。
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