同人誌が届く。

 聞いていたとおり、印刷悪いなぁ。
 もしわたしが作った本ならば、ゆるさないだろー汚さ。だってこれ、お客さんから「乱丁本なので交換してください」って言われそうなくらい、印刷ずれてるよ?
 かねすきさんの本だから、彼女が「印刷汚くても、安かったからいい」と言うのなら、それはそれでよし。

 台風で延期になっていた、仕事の打ち合わせリベンジ。
 まだどーなることかわからないが、とりあえずスタート。
 担当のライス氏とは、仕事の話そっちのけでえんえん喋る。結局4軒ハシゴした……しかも、FIVEの赤い観覧車経由……。はじめて乗ったよ、あの観覧車……。

 初対面からライス氏はわたしにこう聞いた。
「あなたは作品を書くとき、自分の書きたいモノを書く? それとも、上から言われたように書く?」
 これはなかなか、逃げ場のない質問だ。
 作品への情熱を問われているのか、それとも、職人としての柔軟性を問われているのか。
「あなたの本を1冊読みました。あれは、書きたくて書いた? それとも……」
 書きたくて書きました。ええ。恥ずかしいほどの情熱でもって、書きました。
 今まで、書きたいモノしか、書いてません。
 でもそれで、ダメだったんです。今現在、失業中なんです。
 正直に、ありのままを答えましたさ。
 そしたらそれで、よかったらしい。
「上から言われたままを書くライターは、必要ないんです。緑野さんは、緑野さんの作品を書いてください」
 書くことへの情熱を。貪欲なオリジナリティーを。ライス氏はそれを重視する人だった。
 わたしの文体は「重すぎる」そうで、それは彼的には相当イケてないらしい。文体についての不満はあるが、スピリッツは買う。とにかく一度書いてみろ。……そんな感じのことを言われる。
 ライトな文体なあ。わたしには、なかなかに難しいかもしれん。

 ライス氏は編集者、わたしは作家としての立場で話すので、くいちがうこともたしかにあるが、ふたりの目的はひとつだ。「いい作品をつくる」。
 うん。わたしは今、心から仕事がしたいんだ。ふてくされて、ひきこもりしているのは、もうあきたよ。

 ところで。
 かっぱ横町のHenry(つづりがわからん)が、とても心地よかったぞ。料理もおいしいのだが、なにより、スタッフの雰囲気がいい。
 店長さんらしき男性もにこやかで、フレンドリー。ウエイトレスのお嬢さんも、きれいでやさしい。食べているときの心配りが、実に気持ちよかった。
 それだけでも十分ポイント高く、ライス氏もご満足の様子。この店を紹介したわたしも満足。
 だがさらに。
 お勘定のときにライス氏が「お金足りるかなぁ?(笑)」とつぶやいたら、ウエイトレスのお嬢さん、にっこり笑って。
「汚れたお皿がたっぷりありますから、労働で払っていただければいいですよ(はぁと)」
「あ、それならそうしようかな」
「そうしてください、厨房は暑くて死にそうなんです。よろしくおねがいします(にっこり)」
「…………お金で払います」
 清楚できれいなお嬢さんなのに、すかさずこう返すか。いやあ、大阪はいい街だ(笑)。

 

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