イベント好きなので、行って来ました、花エリザ初日!
 だけど、舞台は観ないで、他でエリザベートしてました(笑)。
 わたしが行った場所は、変身写真館っす。

 いいチケットがあれば観るつもりだったんだけど、さすがエリザだねえ。サバキはろくなの出てないよー。
 定価で観るのはちょっとな、という席ばっかだったから、早々にあきらめちゃった。

 かわりに、変身写真館でエリザベートのドレスを着ました。はっはっはっ。
 ワゴンねーちゃんがいてくれたおかげで、サービスたっぷり。つーか、そもそもワゴンさんが大劇で働いてなかったら、写真撮ろうなんて考えなかった。職場のワゴンさんを見たかった、というのもあるんだな(笑)。

 変身写真館を利用するのは、はじめてじゃない。
 できたばかりのころに、撮りに行ったことがある。
 横浜の友人が撮りたいと言うから、それにつきあったのな。
 もちろん、ドレスを着ましたよ。金を出すなら輪っかのドレスでしょう!! 男役の服なんか、着たくないよ。
 スカーレットの白いドレスを着ました。
 でも髪が短いので、リボンができなかった。んでティアラで代用。
 友人がどうしてもと言うので、男役の服も一着だけ着たなあ。あれはなんだったっけ。自分じゃまったくおぼえてないのだが、友人が娘役のドレスを着て、ふたりでトップコンビのやうにポーズつけて撮りました。いや、取らされるのよ、ポーズは。
 どうやら、『うたかたの恋』だったみたいね。わたし、ルドルフをやったんだわ。当時は『うたかたの恋』を観たことがなかったので、ぜんぜんわかんないままに着ていたの。だからおぼえてなかったんだな。今日、変身写真館で見本の写真見て、思い至ったわ。そーいやあの友人は、シメさんファンだった、と。……ファンならなおさら、わたしなんかがルドルフでよかったんか……?

 あれから8年ばかりの日々が流れ、変身写真館は進化している。
 スカーレットにはウィッグがあるんですってぇ?! 今なら、ショートカットの客でも、ちゃーんとスカーレットヘアができるそうな。
 髪型だっていろいろ整えてくれるんだよ? 以前はそんなサービスなしで、アタマはそのまんまが基本だったのにぃ。
 お化粧が自前なのは同じだけど、今は口紅を貸してくれる。ルージュ一本でぜんぜん変わるよ、このサービスはありがたい。……値段は同じなのに、こんなに進化してるよ、写真館。

 で、あっという間でした。
 フィッティングルームに入ってから、カメラの前に立つまで。
 え? と言ってるうちにドレスを着せられている。早っ。
 アクセサリもあっちゅー間につけられている。
 「髪型どうします?」と聞かれても……わかんねーよ、「プロにお任せします」としか言えない。
 「エリザベートは本来真ん中分けなんです!」と、腕に覚えありなおねーさんが、びしばしと櫛を使い、わたしの髪を「タカラヅカのエリザベート」にしていく。
 ここでトピックス。
 なんとエリザベートの鬘は今回新調したそうな。「お客さんが、新しい鬘の最初の使用者です」って言われちゃった。おおっ。新品ですか、いちばん乗りですか! そりゃ気分いいなあ。ただし。「新品なんで、まだ人の頭の形に馴染んでないんで、落ちやすいです」アタマを動かすなと言い含められる(笑)。
 きれーでした、鬘。飾りがきらきらしてて。重いし。

 しかし。
 わたしは背が高すぎるので、エリザのドレスは丈が足りない。……ワゴンさんから聞いていたけれど、ちょっとショックだわ。ドレスの中で足を広げて、わざと短足にして写真撮るんだよー。ひでーよー。スカーレットのドレスはぴったりだったから、ヅカのドレスって身長170センチの女用に作ってあるんだと信じてたのに……。でも考えてみれば、裸足でドレスを着て長さがぴったりってことは、やっぱりあのスカーレットのドレスも短かったんだよね……。ヒール履いたら、くるぶしから下がにょきっと飛び出してしまったはずだから。
 163センチくらいの人がいちばんきれいに着こなせるのかなぁ。

 わたしは相当身体が曲がっているらしい。写真を撮る段になって、何度も身体や顔の角度を訂正される。他に客がいないからか、とても丁寧に撮ってくれた。スタッフのおねーさんありがとう!

 前に撮ったときもそうだったけど。いちばんたのしいのは、ドレスを着せてもらっているときだね。
 鏡の中の自分を見ているのは、とてもたのしい。ああ、女に生まれた醍醐味だなあ、きれーなおドレス着られるのはさぁ。
 ドレス姿のわたしって、けっこういい感じ。なかなかイケてんじゃん、ふふふ。
 なーんて、悦に入ってられる。
 しかし。
 できた写真を見ると、一気に現実に引き戻される。
 ははははは。
 現実は、厳しいなあ(涙)。

          ☆

 その、エリザベート・コス写真を家族に見せていたときのこと。

「写真と言えば、今日おかんが新婚旅行のときのアルバムを引っ張り出していて、『わたしはお姉より美人だ!』ってさわいでたぞ」
 と、父が言う。
 お姉、というのはわたしのことだ。おねえ、と読む。家族からは名前ではなく、こう呼ばれておるのだ。

「なんだと?」
 わたしの目はきらんと光る。
 母の目もきらんと光る。
「そうよ! わたしはずっと、あんたはわたしより美人だって思ってたけど、新婚旅行のアルバムを改めて見たら、ちがってたわ。わたしの方が美人よ」
「聞き捨てならんな」

 わたしと母の視線が、ばちばちと火花を散らす。

「ぼ、ぼくはここにいていいのか?」
 わたしと母の間に坐っていた弟が、うろたえた声を出す。

 母は鼻息荒く古いアルバムを持ってくる。新婚旅行のアルバムだ。
 わたしよりも美人だと? ずうずうしいことを言いおってからに。
 わたしはそのアルバムをめくった。弟も横からのぞき込む。
 そしたら……。

「かわいい……」

 意外。
 マジ、かわいかった、母。
「美人、というのはぜんぜんちがうけど……かわいいよね」
 わたしが言うと、弟もうなずいている。

「ほーら見なさい」
 勝ち誇る母。むかっ。

「たしかに顔はかわいいけど、スタイル悪っ。なによこの顔の大きさ。スタイルはわたしの方が絶対いいよ!」
「そんなの、持って生まれたってだけでしょーが」
「顔だって持って生まれたもんだろーがっ」
「……あの、ぼくはここにいていいのか?」
 言い合う母とわたし、間でおびえる弟の図再び。

「しかし、おかんとお姉、ぜんぜん似てないなー」
 弟はアルバムを見ながら言う。
「でも、今はそっくり」
 そして、実際にわたしと母の顔を見て言う。

「いやだわ」
 と、同時に声を上げる母とわたし。

「まあ、この写真のおかんは、今のお姉よりはるかに若いわけだしな」
 とフォローする弟。だがはたしてそれは、フォローなのか?

 そして、そのアルバムを見たわたしたち家族の共通意見は……。
「おとん、貧相」
「なんでこう、貧乏臭そうっていうか、幸薄そうかね」
「たよりなさそう」
 いいとこないな、若き日の父よ。

「結論。母は娘より美人で、息子は父より男前」
 母は勝ち誇って宣言する。
 むかっむかっ。
 なんだその失礼な言いぐさは。

 娘が母よりブスだったら、それは生物としての退化だろ、親の責任だろ?
 あんた今まで、わたしが「なんでわたしを美人に生んでくれなかったの?」と嘆くたびに、「親より美人に生んでやったんだから、義務は果たした!」と言っていたじゃないのーっ。
 その「母としての立場」をあっさり覆しますか、それが「女の本能」ってやつですか!

 そして。
 火花を散らし、舌戦を繰り広げる母と娘の間で。
「ぼく、ここにいていいの」
 と、いちいちおびえる弟よ、あんたも十分シツレイだぞっ?! そんなにわたしたちがこわいのか?(笑)


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