「ヤッてるばっかで、つまんなーい!」

 今日の初体験。
 映画が途中でホワイトアウトした。客席のライトが点いた。
 映画は映画館で見る、が基本方針のわたしにしても、初体験だ。
 画面がずれたりしたことは、今まで何度か遭遇したよ。しかし、ほんとーに止まってしまったのは、はじめてだ。
 試写会、『運命の女』。リチャード・ギア、ダイアン・レイン出演。

 ギアとダイアンはしあわせ夫婦。8才の息子もいるし、裕福だし、言うことナシ。
 ところが、ダイアンはセクスィ〜なフランス男オリヴィエ・マルティネスと出会ってしまう。「いけないわ、わたしには夫と息子が……」てなダイアンだったが、すっかりしっぽりマルティネスとの官能の世界へダイビング。
 繰り返される、逢瀬。会うとヤるだけなんだわ。獣のよーに、手替え品替え、がっつんがっつん。カフェのトイレで、映画館の客席で、マンションの廊下で、前から・後ろから・立ったまま、地球上のどこでもふたりの愛の巣さ、HAHAHA!!!状態。

 いつまでつづくんだろ……と、見ているこっちの目が点になっているところで。

 スクリーン、力尽きる。
 ダイアンの浮気に気づいた夫のギアが、人に頼んで彼女の素行調査をし、その結果の報告を受けるシーンで、映画は中断、客席にライトが点く。

 おいおい、不手際もここまでいくとすごいぞ、と思っているところで、とても素直な声が響いた。

「ヤッてるばっかで、つまんなーい!」

 わたしの前の列に坐っているお嬢さんだった。
 いやあ、素直かつ、なかなかどーして大きな声だ。
 周囲の者たちは一斉に同意の苦笑をもらす(笑)。

 たしかに。
 ただひたすら、ヤッてるだけの映画ナリ。
 恋愛モノにしちゃー、あまりに性愛だけを表面に出しすぎてるよなー。

 しばらくして、スクリーンが復活した。
 途切れた場面から上映が再開。
 つっても、一端切れた緊張の糸は、戻せないけどな。

 しかも、この切れた場面から、物語は別物になるのだわ。
 それまでは、妻ダイアンの物語だった。彼女視点で語られた物語だ。
 夫にナイショで若い男と浮気、ドキドキよ! ああ、わたしって不貞な女、だけど止められないの……。
 てな具合だったのによ、途切れたあとからは、いきなり夫ギア視点。
 愛する妻の裏切り、ジーザス!! どうしてくれよう、ギリギリギリ……(注・歯ぎしりの音)。
 嫉妬と怒りにかられたギアは、マルティネスの部屋を訪ねる。おいおい、いきなり襲撃かいっ。真正面から妻との関係を問いつめる。そして……。

 こっから先は、まったチガウ物語へGO!!

 不倫モノ、というか、恋愛モノのカテゴリで見ていたもんで、このシフト・チェンジにはびっくりだ。
 目は点、口は丸、って感じのうちに、物語は終盤へ。

 なんつーか……なんなんだ、このバランスの悪さは。
 前半と後半が別物って??

 やりたかったのは後半で、前半は客を呼ぶためのネタ?
 エロ満載! ダイアン・レイン脱ぎまくり、腰振りまくり、上映時間の半分はふぁっくしーん!! 見物ですよ、お客さん!!
 ……てことかニャ?

 まあ、エロは強力なエンタメだからなあ。エロが多めなら客は入るのかな。
 それならエロものに徹して欲しかった。後半ひっくり返すなら、あのエンドレス・エロはいらんやん……。つーか、ベッドでヤれよ、お前ら……。周囲の人が迷惑だろ……。

 テーマはねえ、悪くないんだけどなあ。演出に問題ありすぎだわ。

 んでもってダイアン・レイン、老けたねえええ。
 リチャード・ギア、枯れたねえええ。

 このものすごい映画が終わり、場内が明るくなったときに。
 前述のお嬢さんが、またしても素直で大きな、心からの声をあげた。

「あー、カボチャ・スープが飲みたい〜〜」

 どっからカボチャ・スープ??!!

 わたしとWHITEちゃんは内心即ツッコミを入れたよ。(目で会話)
 本能だけで喋ってくれる、前列のお嬢さん。とってもウケたし、なごんだよ。
 君に乾杯(笑)。

 

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