5分前着で映画が見られなかったのは、近年ではじめてのことだ。
 そりゃー、何年前だったか、『恋愛小説家』という前評判だけのクソ映画は、30分前に行っても満員御礼門前払いだったけどさ。(2度も出直し、3度目の正直で1時間以上前に行って並んで入った。……クソだった)

 『T.R.Y.』を見に行った。5分前に映画館に着いたら、満席だった。
 ……満席? 売れてるのか、この映画?!
 ちょっとびっくりだ。ここ数年、門前払いされたことなんか一度もなかったからさ。

 仕方なく、次の上映まで時間を潰し、つーか、そもそもの目的だった父のお使いをすませてから、なにがなんでも見て帰った。映画っちゅーのは思い立ったときに見ないと、見逃しちゃうもんなんだわ……。

 やはり映画館は8割強の入り。……水曜日とはいえ、邦画だよ? すげえ。

 ま、とにかく。

 舞台は20世紀初頭。世界をマタにかける詐欺師の織田裕二は、世界各地で男や女をコマし、惚れられまくる魔性の男。今回は魔都上海で革命家をコマし、暗殺者をコマし、日本では野心あふれる陸軍将校をコマし、男たちのはぁとをハァハァさせたまま、風のように消えていったのでした。今日もまた、世界のどこかで彼は、あらゆる男たちをコマしまくっているでしょう……。
 という、大変心温まる世界的規模の色男の話でした。

 感想は、「男って恥ずかしい……」ってとこですか。
 これ、女が女のために作ってるわけじゃないよねええ?
 そりゃ一部腐女子を意識してはいるだろーけど、大方はふつーに男が男のために創ってんでしょ?
 女はさ、「出会う女すべてに惚れらたい」とは特別思わないよね? それくらいなら男に惚れられたいと思うわな。
 でも男ってのは、「男に惚れられたい」と思う生き物なんだよなあ。だから平気で、「男に惚れられる、男の中の男」モノを書く。真正面からずどんと書く。
 ……恥ずかしい……。
 映画の中で織田裕二は、そんな「男たちの夢」の権化として描かれている。
 強くてハンサムで、といっても女性的なきらきら王子様じゃなく線の太い地に足がついた系のいい男で、かわいげがあって調子が良くて、泣きごとも言うけど、やるときゃやるぜだし、義理人情に厚くて打たれ強い。
 日本人の男が憧れる男、なんだよなあ。ウエットなんだもんよー(笑)。
 いい女に惚れられても、そっちへわざと足を踏み出そうとしない感じなんかも、男の夢か?(笑)
 それから、織田のライバルとして登場する帝国軍人、渡辺謙。この人の描きっぷりももー、「男の夢」。
 渡辺謙様に関してだけは、「美」を意識して演出してるよね? ね?
 いや、わたしははっきりいって、渡辺謙様目当てで行ったよーなもんなんで、これには腹をよじらせてもらいましたが、じつにすばらしい演出でした。
 渡辺謙様は、美しかったです。
 男たちが胸に描く、「理想の軍人将校」の姿がそこにありました。
 実際に戦争を知っている世代の人の理想じゃなくて、わたしたち以下の世代の男たちの、ね。
 つまり、「軍服かっこいー!」「軍隊ってかっこいー!」なハァトで描かれた、理想の姿よ。アニメの中に出てくる美形軍人の姿よ。
 日本軍のカーキ色の軍服ってさ、他国の軍服に比べてイケてないじゃん。資料として残っている写真を見ても、着ているのが4等身のチビ日本人だったりするから、余計にさ。
 それが、渡辺謙様が着てしまうと、かっこいいのなんのって。
 身長があって横幅もあるから、服に負けないのな。しかもあのくどい男くさい顔だから、「軍服」という一種オーラを持つコスチュームを着こなしてしまうんだわ。
 そのうえ、くるぶしまである同色のマントっすよ?!
 そして、彼の全身を映すときはカメラが「今、美しいモノを撮っています!」という意気込み十分の映し方をするのよ?! わざとななめになってみたり、スローになってみたり。
 おいおい、主役の織田相手にもそれくらいやってやれよ、と言いたくなるくらい、渡辺謙様のことは「美しい人」というスタンスで演出されています(笑)。

 たのしかった。
 渡辺謙様の軍服姿を見るだけでも、価値があります。つーかわたしにとっての価値のほとんどはそこにありました。眼福眼福。
 ストーリーにしろ、キャラにしろ、目新しいモノはナニもありません。お約束だけでできあがっています。
 だから、ツボがあるかどうか、って感じかな。たのしめるかどうかの鍵は。
 織田か、渡辺謙様を好きならOKっしょ。
 腐女子もたのしめるはず。とにかく、出会う男たちは国籍年齢問わず、みんな織田っちにラヴラヴ、目がハァトですから(笑)。
 合い言葉は「俺は日本人は嫌いだ。……だが、お前は別だ」です。

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