祖母の七回忌。

 時の流れは速い。
 夢の中には当たり前に出てくるけどね。祖母も祖父も。彼らがいることが「日常」の風景だからでしょう。

 しかし、お坊さんがお経を上げている間ずっと、猫が仏壇の上にいたんですが……あれっていいのか?
 線香が煙かったらしく、顔をしかめながらも仏壇から降りない。
 法事の最中、猫と追いかけっこをするわけにもいかず、参列者全員がはらはらしながら猫の挙動に注目。

「猫は仏典を守るために連れてこられた動物ですから」
 と、お坊さん。苦笑しながら許容。
 仏教との相性は悪くはないのかもしれないが、猫よ、法事の間はおとなしくしてくれよ。飼い主がこまるよ。

 平日に行うことでわかるように、大袈裟な法事ではないのだ。
 だが、それでも親戚はやってくる。
「こあらちゃん、仕事はどうなの?」
 と聞かれるのがつらい。
 はあ、まあ、ぼちぼち。
「あれから本は出たの?」
 あれからって、いつからですか。
「本屋で探してるんだけど」
 探さなくていいです。
「読んだけど、ぜんぜんわからなくて」
 だから言ってるじゃん、読んでもわからないから読まなくていいって。
「こあらちゃんの書くものは難しいから」
 ……対象年齢がちがうだけです。難しいものなんか書いてません。そんなアタマはありません。
「ねえ、名刺ちょうだい」
 その名刺持って、なにする気ですか。今、切らしてます。つーか永遠に切らしている予定です。

 頼むから、触れないでくれよ、わたしの仕事のことは。
 興味津々されると面倒だー。
 つーか、わたしからひとことも言ってないのに、なんで親戚ってみんな知ってるのかしらね。
 犯人はわかってるけどね。親が吹聴してまわったらしいからね。やれやれ。
 どうせ特殊な職業だよ、後ろ暗い人生だよ、わかってるから、放置してくれー。

 中でも叔母のひとりが、わたしの本を探すのに必死になっている模様。
「似たような本がたくさんあるのね、びっくりしちゃった」と。
 てきとーに会話をしながら、わたしはびくびく。
 わたしの本を読むのはいい。うれしくはないが、まだいい。
 だがな叔母よ、わたしの本を探すときにまちがって、ボーイズを手に取らないでくれよ? たぶん、近くにあるだろうからさ。
 んでもって、ヘンな混同や混乱はしないでくれよ?
 んでもって、還暦を過ぎてBLに目覚めたりとか、しないでくれよおおお??

 いろんな意味でびくびく(笑)。

 

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