うっきゃー、寿美礼ちゃんラ〜ヴ!!

 とゆーだけで、デイジーちゃんと電話で盛り上がる。
 赤坂ACTも行くこと決定です。
 理屈はこの際置いておきましょう。
 おさファンは昇天必至です、『不滅の棘』。

 
 本日は映画+観劇+仕事の3コンボ。多忙ナリ。
 そのうえ、帰宅するなりデイジーちゃんから煩悩爆発TEL。ふたりでおさ語りGOだ。
 なんて長くて濃い1日。

 
 永遠の生命を持った男の、愛と慟哭の物語。『不滅の棘』。
 正しくヒーローもの。
 問答無用で、主人公ただひとりの人生を描いている。
 欲張りすぎて失敗する作品が多い中、主人公ひとりだけの物語にしてしまったのが勝因かと。
 ひとり芝居に描き直すことも可能な作りのミュージカルでした。

 テーマはべつに深くもなんともありゃしません。
 めーっちゃ「ありがち」で「お約束」で「普遍的」なものです。
 だからいいんです。

 世の人々が大好きな「お約束」というのは、「金よりも愛が尊い」です。これが基本で、あとはこのバリエーションです。
 「金」の部分には、「うらやましいもの」全部があてはまります。「若さ」「美しさ」「権力」「地位」なんでもよし。
 一般に、「物語」はこれらを「否定」することで成り立ちます。
 たとえば「若くなくても、君は素敵」「外見的な美しさより、心の美しさの方が大切さ」「悪の権力者と戦う!」「与えられた地位を捨てて、夢に生きる」など。
 『不滅の棘』で描かれる「不老不死の美貌の男」は、このお約束の「金」の部分を持ち合わせているわけですね。ならばやることはひとつ、「金」部分の全否定です。
 「不老不死」で「美貌」で「誰からも愛される」……しかし彼は「孤独」で「不幸」なのだ。
 「不老不死」とくれば、お約束、「限りある命こそが素晴らしい」。「金」は否定してこそ「物語」です。

 あとは、この「お約束」をどう描くか。
 これが「物語」の醍醐味です。

 
 『ひとり芝居・不滅の棘』は、真っ向勝負で「お約束」に挑んでいます。
 主人公のエリイは意志に反して不老不死になってしまった美貌の若者。
 幕開きから、彼の孤独と慟哭が全開です。
 なんせ「金」部分を全部持ち合わせてしまっているわけですから。超絶お金持ちの美人さんがしあわせいっぱいハッピーなだけの物語なんぞ、誰も見たくありません。すべてを持ち合わせた人間が実は孤独だったりしてはじめて、観客は感動するんです。
 エリイは孤独。エリイは悲劇。これが大前提。
 白。
 世界は白。
 エリイの目に映る、色のない世界。彼の孤独、彼の慟哭を映した世界。
 登場人物も背景も、なにもかも白一色。わたしたち観客は、エリイの目に映る絶望を、そのまま見せられるわけです。
 だってわたしたちは、不老不死ではないのですから。つまり「金」を持っていないのです。「金」を持っていることが幸福で、それ以外は不幸だと言われたら、観ているわたしたちの立つ瀬がありません。わたしたちが持ち得ないものを持っているエリイには不幸になってもらわなければ。そして、「金」を持っていないわたしたちこそが幸福なんだ、という結論に着地してくれなくてはなりません。
 しかし、テーマをただ叫ぶだけでは「物語」ではありません。
 どれほど彼がかなしいのかをエピソードを交えて表現していかなければ。
 とゆーことで、幕開きで全開だったエリイの孤独は一旦ナリを潜めて、元気な現代物の殻をかぶって物語は進みます。

 舞台は現代(正確にはちょっくら昔だけど)のプラハ。
 ブルス男爵家の財産をめぐる、100年にも渡る長い裁判が行われている。100年前に死んだブリーダ・ブルスの財産を受け取るのは誰だ?
 なんせ100年前のことなので、ブリーダ・ブルスの真意などわかりようがない。なのに、その「100年前のこと」を見てきたかのように語る男が現れる。男の名はエロール・マックスウェル、超絶スーパースター様。彼は裁判の原告被告両方に近づき、なにかを得ようとしている様子。
 エロールは何故、100年前のことを知っているのか? 弁護士助手のアルベルトは彼のたくらみを暴く。100年前の書類と、今生きているエロールの筆跡が同一のものである。これはエロールがブルス男爵家の財産を目当てに、書類を偽造した動かぬ証拠!!
 ミステリならば、これでよし。アルベルトは探偵役。
 しかし観客は知っている。
 エロールこそが、幕開きで壮絶な孤独にあえいでいた、不老不死の青年エリイなのだ。
 100年前彼は、ブリーダ・ブルスと愛し合った。書類は偽造でもなんでもない、彼自身が100年前に書いたものだ。

 この裁判とそれをめぐる事件を通して、一貫して描かれるのが、エロール=エリイの孤独。慟哭。
 スーパースター様で、女たちに騒がれて、なにもかも持ち合わせている美貌の若者は、なにゆえにか、壮絶な孤独にあえいでいる。絶望している。
 彼の華やかさと、かなしみの対比。

 事件と、彼をとりまく女たちで「物語」を回し、正しい「お約束」の結末に着地する。

 すなわち、

「限りある命を大切に生きよう!!」
「人は必ず死ぬ。でも、それだからこそ、命は尊いんだわ!」
「わたし、今日からもっとやさしくなるわ」

 とか、観客に思わせる、正しきエンタメの姿よ。

 
 お約束に徹し、舞台上を主人公の心象としての「白」に統一してまで「ひとり芝居」にし、主人公をひたすらかっこよく美しく、そしてかなしく、終始した。
 ブラボー。
 素晴らしいです。

 なんつっても「ひとり芝居」なので、主人公エロール=エリイ役の寿美礼ちゃんの役割の大きさは、並大抵ではありません。
 よくもやった、演じきった。
 主人公に説得力がなければ、すべてコケる作品だった。
 なんせ「スーパースター様」だよ。自分で自分をスタァだと名乗って失笑されないオーラが必要。

 なんつーか、「正しき花組のトップスター」の姿を見たよ。

 「スーパースター様」としての「唯我独尊! 俺の前にひざまずけ!!」な姿と、その孤独っぷりに、ヤラれました。
 好みっす。アンタもー、わしの好みっすよー。
 いちばんの見せ場は、派手こいショー・シーンでもなければ、美しい姿で愛だのかなしみだのを歌うところでもなく、あの椅子のシーンだと思うよ。
 真っ白な舞台に痛い、黄色い椅子。そこに背を向けたまま坐った姿。顔は見えないし、背中も見えない。椅子の背と、腕、頭のてっぺんがちょいと見えるかな程度の露出。
 そして呼ぶのは、今はもういない女の名。

 想像力、という力。

 顔もなにも見えない状態で、観客は想像する。
 彼のかなしみを。

 ……ええ。想像しましたとも。
 なにもかも持ち合わせた、超俺様なスーパースター様の、真の顔を。
 疲れ果てた老人のような、苦悩と哀しみに満ちた寝顔を。

 も、萌え〜〜。

 
 ひとり芝居だったんで、他の登場人物たちの比重は軽いです。
 エロール=エリイの「運命の恋人」であったブリーダ・ブルスも、幕開きにちょろりと出てくるだけ。印象は薄いです。しかも出てきた瞬間から「恋・最高潮!」なもんで、唐突といえば唐突です。
 でもわたしゃ、それで十分です。
 ひとり芝居っすから! 舞台全部が白一色の段階で、「これはエロール=エリイの物語」ってことで納得。彼の「ファム・ファタール」としてのイメージってことで、薄くてもOK。そればかりか、残像があればいいくらいだ。
 むしろ、弁護士助手で探偵役のアルベルトくんが突然歌い出したことの方が違和感あったよ。
 だって彼、ただの脇役でしょ? 探偵役でしょ? 突然愛の歌、歌われてもな……びっくりしたよ。
 そこではじめて、「そーいやこの男、二番手男役だっけか」と思い出した……すまんなあさこ……ハッチさんと2個イチでしかなく、君を個別認識してなかったよ。(もちろん、あさこちゃんが演じている、ってことで注目はしていたが、あまりに影が薄いのでスルーしていた)

 エロール=エリイをとりまく女たち、という構図は大変よかったです。
 ただ、タカラヅカだから、トップ娘役のふーちゃんの処遇に首を傾げたりはするんだけどな。
 老女も中年女も妖艶な未亡人も小娘も、なんでも来い!! な、エロール=エリイが素敵。来るもの拒まず、差別はせず、な態度が、彼の孤独を一層印象づけるよ……。

 
 ここで問題です。
 究極の女たらしエロール=エリイ様は、妖艶な未亡人タチアナとの一夜のあと、なーぜーか、服をしっかり着込んでおられました。
 そして、タチアナは大層ご立腹。彼との情事に傷ついたようです。

「あの男、服脱がなかったんじゃない?」
「自分はネクタイしめたままで、女だけ脱がせたのよ」
「そりゃ女も怒るわなー」

 てな話を、わたしとかねすきさんはしておりました。
 ここまではいい。
 問題は次だ、かねすきさん。

「そればかりか、挿れてやらなかったんじゃない?」

 ……かねすきさん……。
 そこまで、言いますか……。年頃のお嬢さんが……。

「挿れてもやらなかったんじゃ、女も怒るよー、ひどーい」

 エロール=エリイ様、真実はどうですか?


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