エロ「エロ」エッサイム。我は求め訴えたり。@魔界転生
2003年5月1日 映画 おどろいたことがひとつ。
「『魔界転生』映画化だって」
と言ったわたしに、弟が、
「ええっ、山田風太郎のアレを?」
と返してきたことだ。
「山田風太郎……? ふつー、沢田研二の、とか言わないか?」
「沢田研二? なに?」
「だって、前に沢田研二でやってるでしょ?」
「なにを?」
「映画。『魔界転生』」
「ええっ?!」
弟は、元祖『魔界転生』の映画を知りませんでした……。
「なんで知らないのよ、アンタそのころもう、小学生だったじゃない。高学年だったじゃない。あのころの角川映画っつったら、キャッチコピーだけで一世を風靡してたでしょうが」
「キャッチコピー?」
「『エロイムエッサイム、エロイムエッサイム、我は求め訴えたり』……って、志村けんもさんざんパロってたじゃない!」
「知らんわ。それより『魔界転生』って言ったら、山田風太郎だろう!!」
「なんでそこで原作者なのよ?」
「アレを映画化するなんて言ったら、ふつーおどろくって。山田風太郎だぞ? バカ活劇小説だぞ?」
「てゆーかアンタ、つまりそれ、読んでるってことよね?」
「まあ、あれはあれでなー」
にやり。それなりにたのしんで読んだらしい。
「前のは天草四郎が沢田研二だったんだけど、リメイク版は窪塚洋介。柳生十兵衛が佐藤浩市」
「ほお」
「それだけでも見に行く気満々だけど、そのうえ、宮本武蔵が長塚京三様なのよーっ」
俳優にはいろいろあるが、「様」付けで読んでしまう俳優は数少ない。長塚京三様は、長塚京三「様」なのだ。
「ふーん。まあ、イメージはあるか」
「あと、加藤雅也とか、濃くていい男が出るし。CG気合い入りまくりの愉快な大作になるみたいよ」
と言うわたしに、弟は薄く笑いながら言う。
「『魔界転生』はなー。“もしも歴代の剣豪が柳生十兵衛と戦ったら?”っていう妄想ではじまった、架空戦記ばりのアホ小説だからなー。……アレを映画化するなら、そりゃ特撮になるだろーな」
アホ小説? ……そーなんですか?
わたし、原作知らないし。興味の範囲外。時代小説読むなら、司馬遼とか読むし。
弟は史学科卒の歴史オタクで時代劇大好き男なんだけど、彼に言わせると「山田風太郎」という名を言うときは「ぷっ(笑)」というニュアンスが入るらしい。バカにしているだけ、ではなく、愛情もこめて。
それにしても……前作を知らないなんて。
同世代の人間なら、誰でも知ってると思ってたよ。
沢田研二主演の『魔界転生』。映画自体は見たことなくても、存在ぐらいは知ってて当たり前だと思っていた。
つーか、原作ファンなら映画化ぐらい知っておけよ。
とゆー、長い前降りですが、見に行きました、『魔界転生』。
前作を云々言っておきながら、実はわたし、前作はよく知らないのです。
テレビでやっているのをちらりと見たことがある程度。
つーか。
沢田研二と真田広之のキスシーンしか、おぼえてないんですよ。
当時はたしか、自分のテレビを持っていなくてね。
祖父母と一緒に茶の間で見るにはそぐわなかったのよ……。
時代劇だから、ってことで、なんとかチャンネル権は獲得できたものの、きちんと見ることはできなかったような。
暗くてエロかった記憶があるので、保護者と一緒に見るのはきつかったのでしょう。
原作は知らないし、前作もよくおぼえていない。
沢田研二の妖艶さ、真田広之とのキスシーン、千葉真一の暑苦しさ、ぐらいしかおぼえてない。
窪塚くんが天草四郎ってことは、窪塚くん、ダレとチューすんだ? と思ったくらい、モノ知らずでした。
真田広之の役は、リメイク版では存在しないのね……。
あとから知ったよ。
さて。
そんなわたしが、WHITEちゃんと並んで鑑賞しました、リメイク版『魔界転生』。
いちばん痛切に思ったことは。
「エロくない」
でした。
こんなもんなのか?
ちっともエロくなかった。
前作には、なんともいえん「隠微さ」「妖艶さ」があったと思ったし、また、わたしは勝手にそれを期待していた。
日本物、時代劇っていうのは、一歩まちがえるととてつもなく暗く美しい世界になるよね。黒地に金、の世界観っていうか。蒔絵の持つ美しさっていうか。
『陰影礼賛』じゃないけど、白く美しい生クリームにはない、和菓子の暗い美しさっていうかさ、光より影に美を求める習性ゆえのこだわりっていうか。
日本物ゆえの、時代劇ゆえのエロさと美しさを、わたしは期待していたのよ。
それがまったくなかった。
美しく色っぽくしようと努力はしているようだが、そもそもツボがちがうとしか言いようがない。
耽美、というものをまったく理解しない、健全な人が健全なアタマで、理屈だけでエロスを表現してみました、みたいな?
つまらん……。
おかげで、窪塚天草四郎は、中途半端に途方に暮れる。
窪塚くん自身の力で、妙な透明感はある。でも、演出と彼の透明感は別の方向に引き裂かれていて、不安定でどっちつかず。
かみあっていないもどかしさ。
「色気のなさ」が全編に漂うので、せっかく復活した魔界人たちも、存在感が薄い。スポーツのように戦い、滅んでいく。
もっとどろどろしててもいいんじゃないのか? 魂を悪魔に売ってでも、蘇りたい未練があったんだろう?
未練とか執着とか欲望とかは、「色気」と同意語なんだなと確認。色気に欠けるままだと、ただ「かっこいい殺陣」を見せるためだけに現れた子ども向け特撮ヒーローになってしまう。
もちろん、映像はきれいで迫力もある。殺陣もかっこいいですとも。
各役者たちも、かっこいいです。コスプレが美しいです。豪華な俳優陣を「わかるわかる」ってなイメージでキャスティング。ぱっと見には素敵です。
佐藤浩市、いい男だなあ。
いつも総受なこの男が、骨太な戦士を演じております。最初のうちはいつもの受男だけど、物語が進むに従って、どんどん研ぎ澄まされて男前になっていく。
窪塚洋介、最初のシーンがいちばん美しいっす。生前の天草四郎。透明な美しさ。たしかにこの少年なら「神の声」を語っても信じられるわ。てな。前髪が素敵。「もう、神など求めぬ」……彼の絶望が素敵。
長塚京三様、ごま塩頭、いいです。
今彼は微妙に太っていて、かつての美しさがかなりマイナスになっています。男はなー、これくらいの年齢がいちばんきついんだよなー、って感じ。加齢臭ぷんぷんってか。
それが白髪になることで、一気にロマンスグレーですよ、京三様!! いっそそれくらいトシ食ってくれた方が、わたし的にはOKです。武蔵コスプレ、素敵よー。
加藤雅也、相変わらず男前。男に惚れる男、を演じてこその君の濃さ。『天国の階段』に引きつづき、佐藤浩市命の役ですか(笑)。柳生十兵衛と戦いたさに魔界から戻ってきましたか(笑)。出番が少なくて残念です。
濃いと言えばこの人、杉本哲太。この人も時代劇の方が男前だよなあ。顔も芸風も濃すぎるからかなあ。
しかし、わたしとWHITEちゃんの共通意見としては。
「オジー、男前だったね」
「うん、オジーがすごくかっこよくなってた」
映画を見終わって、最初に言ったのがコレさ。
オジー……古田新太。宝蔵院胤舜役。
役によってほんと別人だね。
「なんか、痩せてなかった?」
「痩せてたよー。じゃあ次の『キャッツアイ』の映画ではまた太るんかな?」
「太ってなきゃオジーじゃないよー。オジーといえば“垂れたおっぱい”でしょ? 白いランニングシャツ越しに、大きなおっぱいがこう、垂れさがってたじゃん」
わたしたちはひょっとして、古田新太ファンなんでしょうか。
あの名作『木更津キャッツアイ』以来、彼へのチェックは他の俳優の比ではありません。
しかし、窪塚くんより佐藤浩市より、古田新太を語るか……わたしたち……。
それにしてもわたし。
『デアデビル』と『魔界転生』って、2本立てで見るよーな作品じゃないよ……。
両方とも、次元が似すぎていて、つづけてみると疲労増大効果あり。
「『魔界転生』映画化だって」
と言ったわたしに、弟が、
「ええっ、山田風太郎のアレを?」
と返してきたことだ。
「山田風太郎……? ふつー、沢田研二の、とか言わないか?」
「沢田研二? なに?」
「だって、前に沢田研二でやってるでしょ?」
「なにを?」
「映画。『魔界転生』」
「ええっ?!」
弟は、元祖『魔界転生』の映画を知りませんでした……。
「なんで知らないのよ、アンタそのころもう、小学生だったじゃない。高学年だったじゃない。あのころの角川映画っつったら、キャッチコピーだけで一世を風靡してたでしょうが」
「キャッチコピー?」
「『エロイムエッサイム、エロイムエッサイム、我は求め訴えたり』……って、志村けんもさんざんパロってたじゃない!」
「知らんわ。それより『魔界転生』って言ったら、山田風太郎だろう!!」
「なんでそこで原作者なのよ?」
「アレを映画化するなんて言ったら、ふつーおどろくって。山田風太郎だぞ? バカ活劇小説だぞ?」
「てゆーかアンタ、つまりそれ、読んでるってことよね?」
「まあ、あれはあれでなー」
にやり。それなりにたのしんで読んだらしい。
「前のは天草四郎が沢田研二だったんだけど、リメイク版は窪塚洋介。柳生十兵衛が佐藤浩市」
「ほお」
「それだけでも見に行く気満々だけど、そのうえ、宮本武蔵が長塚京三様なのよーっ」
俳優にはいろいろあるが、「様」付けで読んでしまう俳優は数少ない。長塚京三様は、長塚京三「様」なのだ。
「ふーん。まあ、イメージはあるか」
「あと、加藤雅也とか、濃くていい男が出るし。CG気合い入りまくりの愉快な大作になるみたいよ」
と言うわたしに、弟は薄く笑いながら言う。
「『魔界転生』はなー。“もしも歴代の剣豪が柳生十兵衛と戦ったら?”っていう妄想ではじまった、架空戦記ばりのアホ小説だからなー。……アレを映画化するなら、そりゃ特撮になるだろーな」
アホ小説? ……そーなんですか?
わたし、原作知らないし。興味の範囲外。時代小説読むなら、司馬遼とか読むし。
弟は史学科卒の歴史オタクで時代劇大好き男なんだけど、彼に言わせると「山田風太郎」という名を言うときは「ぷっ(笑)」というニュアンスが入るらしい。バカにしているだけ、ではなく、愛情もこめて。
それにしても……前作を知らないなんて。
同世代の人間なら、誰でも知ってると思ってたよ。
沢田研二主演の『魔界転生』。映画自体は見たことなくても、存在ぐらいは知ってて当たり前だと思っていた。
つーか、原作ファンなら映画化ぐらい知っておけよ。
とゆー、長い前降りですが、見に行きました、『魔界転生』。
前作を云々言っておきながら、実はわたし、前作はよく知らないのです。
テレビでやっているのをちらりと見たことがある程度。
つーか。
沢田研二と真田広之のキスシーンしか、おぼえてないんですよ。
当時はたしか、自分のテレビを持っていなくてね。
祖父母と一緒に茶の間で見るにはそぐわなかったのよ……。
時代劇だから、ってことで、なんとかチャンネル権は獲得できたものの、きちんと見ることはできなかったような。
暗くてエロかった記憶があるので、保護者と一緒に見るのはきつかったのでしょう。
原作は知らないし、前作もよくおぼえていない。
沢田研二の妖艶さ、真田広之とのキスシーン、千葉真一の暑苦しさ、ぐらいしかおぼえてない。
窪塚くんが天草四郎ってことは、窪塚くん、ダレとチューすんだ? と思ったくらい、モノ知らずでした。
真田広之の役は、リメイク版では存在しないのね……。
あとから知ったよ。
さて。
そんなわたしが、WHITEちゃんと並んで鑑賞しました、リメイク版『魔界転生』。
いちばん痛切に思ったことは。
「エロくない」
でした。
こんなもんなのか?
ちっともエロくなかった。
前作には、なんともいえん「隠微さ」「妖艶さ」があったと思ったし、また、わたしは勝手にそれを期待していた。
日本物、時代劇っていうのは、一歩まちがえるととてつもなく暗く美しい世界になるよね。黒地に金、の世界観っていうか。蒔絵の持つ美しさっていうか。
『陰影礼賛』じゃないけど、白く美しい生クリームにはない、和菓子の暗い美しさっていうかさ、光より影に美を求める習性ゆえのこだわりっていうか。
日本物ゆえの、時代劇ゆえのエロさと美しさを、わたしは期待していたのよ。
それがまったくなかった。
美しく色っぽくしようと努力はしているようだが、そもそもツボがちがうとしか言いようがない。
耽美、というものをまったく理解しない、健全な人が健全なアタマで、理屈だけでエロスを表現してみました、みたいな?
つまらん……。
おかげで、窪塚天草四郎は、中途半端に途方に暮れる。
窪塚くん自身の力で、妙な透明感はある。でも、演出と彼の透明感は別の方向に引き裂かれていて、不安定でどっちつかず。
かみあっていないもどかしさ。
「色気のなさ」が全編に漂うので、せっかく復活した魔界人たちも、存在感が薄い。スポーツのように戦い、滅んでいく。
もっとどろどろしててもいいんじゃないのか? 魂を悪魔に売ってでも、蘇りたい未練があったんだろう?
未練とか執着とか欲望とかは、「色気」と同意語なんだなと確認。色気に欠けるままだと、ただ「かっこいい殺陣」を見せるためだけに現れた子ども向け特撮ヒーローになってしまう。
もちろん、映像はきれいで迫力もある。殺陣もかっこいいですとも。
各役者たちも、かっこいいです。コスプレが美しいです。豪華な俳優陣を「わかるわかる」ってなイメージでキャスティング。ぱっと見には素敵です。
佐藤浩市、いい男だなあ。
いつも総受なこの男が、骨太な戦士を演じております。最初のうちはいつもの受男だけど、物語が進むに従って、どんどん研ぎ澄まされて男前になっていく。
窪塚洋介、最初のシーンがいちばん美しいっす。生前の天草四郎。透明な美しさ。たしかにこの少年なら「神の声」を語っても信じられるわ。てな。前髪が素敵。「もう、神など求めぬ」……彼の絶望が素敵。
長塚京三様、ごま塩頭、いいです。
今彼は微妙に太っていて、かつての美しさがかなりマイナスになっています。男はなー、これくらいの年齢がいちばんきついんだよなー、って感じ。加齢臭ぷんぷんってか。
それが白髪になることで、一気にロマンスグレーですよ、京三様!! いっそそれくらいトシ食ってくれた方が、わたし的にはOKです。武蔵コスプレ、素敵よー。
加藤雅也、相変わらず男前。男に惚れる男、を演じてこその君の濃さ。『天国の階段』に引きつづき、佐藤浩市命の役ですか(笑)。柳生十兵衛と戦いたさに魔界から戻ってきましたか(笑)。出番が少なくて残念です。
濃いと言えばこの人、杉本哲太。この人も時代劇の方が男前だよなあ。顔も芸風も濃すぎるからかなあ。
しかし、わたしとWHITEちゃんの共通意見としては。
「オジー、男前だったね」
「うん、オジーがすごくかっこよくなってた」
映画を見終わって、最初に言ったのがコレさ。
オジー……古田新太。宝蔵院胤舜役。
役によってほんと別人だね。
「なんか、痩せてなかった?」
「痩せてたよー。じゃあ次の『キャッツアイ』の映画ではまた太るんかな?」
「太ってなきゃオジーじゃないよー。オジーといえば“垂れたおっぱい”でしょ? 白いランニングシャツ越しに、大きなおっぱいがこう、垂れさがってたじゃん」
わたしたちはひょっとして、古田新太ファンなんでしょうか。
あの名作『木更津キャッツアイ』以来、彼へのチェックは他の俳優の比ではありません。
しかし、窪塚くんより佐藤浩市より、古田新太を語るか……わたしたち……。
それにしてもわたし。
『デアデビル』と『魔界転生』って、2本立てで見るよーな作品じゃないよ……。
両方とも、次元が似すぎていて、つづけてみると疲労増大効果あり。
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