気持ちよく笑ってきました、TCA。
 

 参加することに意義がある、苦労してチケ取りして、でも実際観てみると「なんでこんなもんのために、がんばったんだろ……」と虚しくなる。それがTCA。
 ……だったんだけど。

 いやあ、今年はたのしかったよー。

 テーマの選択が成功だったと思うよ。
 「宝塚大劇場10年の軌跡」。
 TCAを観に来るよーな、コアなファンがたのしめるテーマだ。行くぜ完全内輪受け。
 ほぼ全編パロディ状態だったので、「ファン向けの祭り」としての意義を正しく果たしていた。

 長く観てきた人間には、うれしいねえ。だって、10年間の思い出の曲を、思い出の人が歌ってくれるんだもの。
 そう、できる限り関係者をキャスティングしてくれるのよ。衣装付きだから、なつかしいのなんのって。
 もう当時のキャストは退団していないだろうって? ……いるのよ、それが。
 新人公演で、その役をやった子たちが。
 

 個人的に、もっとも感動したのは、ケロのフランツをふたたび観られたことです……。
 ケロー、ケロちゃあん。なつかしーよー。
 でも、路線でもない君がフランツを新公で演じたなんて、君のファン以外は知らないんじゃないかと、おばさんチト心配したよ……。
 

 そして。
 オープニングから「うっきゃ〜〜♪」だったのが、銀橋。
 ケロとゆーひが、並んでる〜〜。
 うれしーよー、ふたたびこの並びを観られるなんてー。
 ゆーひくん、笑ってるし。彼の笑顔を見るのは、何ヶ月ぶりだ? この間の月組公演、ほんとに笑わなかったからな……。
 しかもゆーひ、ウインクとばしてるし……ゆーひのウインク……超レア。なんでアンタ、そんなにご機嫌さんなの? オペラグラス越しにウインクを受け取り、びびったよ。

 
 今回、脚本がいいと感心しました。
 TCAで脚本がいい?!
 ……時代も変わったな。
 演出は藤井&齋藤。
 たしかに、時代も変わった。老人の演出する時代ではなくなったんだね。ハラショー。

 不在の宙組を除く4組が、それぞれ「組の10年間」を寸劇で見せる構成。
 これが、うまいんだわ。

 ・過去10年間の作品を使う。
 ・トップスターは通し役。
 ・上記のトップスターの役に、他の作品の役をからめる。
 ・他のキャストは、できるだけ当時の関係者(新公経験者)を使う。
 ・幹になるストーリーがパロディで、それに絡む小ネタもまた、パロディである。

 わたし、こーゆー、構成をがんばっている作品、好きなのよー(笑)。
 くだらないパロディを、一生懸命計算して作ってあるなんて、素敵だわ。

 いちばんうまいと思ったのが、雪組。次が花、月、星の順。おもしろかった順でもなくキャストの良かった順でもなくて、構成のうまい順ね。

 雪は「幹」になるストーリーが『ノバ・ボサ・ノバ』。ソール@コムとボーロ@シナちゃんの前に、次々といろんなキャラが現れる。サンドリーヌ@りら(by再会)、夫差@壮くんと西施@となみちゃん(by愛燃える)、坂本竜馬@いづるんと岩崎弥太郎@キム(by猛き黄金の国)、ジュリアン@ハマコ(byバッカスと呼ばれた男)、ヴァルモン@カシゲ(by仮面のロマネスク)。
 主役の前に、新公経験者を多く使ったキャラが現れ、絡むというのは、他の組も同じ。
 雪組がアタマひとつ抜きでていたのは、ストーリーまでもが本公演の流れをちゃんと汲んでいたということ。
 ソール@コムは泥棒で、べそかきサンドリーヌ@りらから「ネックレス」を盗む。観た人にはわかる、「あの」ネックレスだ。
 それを見ていた夫差@壮くんと西施@となみちゃんは、扮装は完璧に『愛燃える』なのに、台詞はしっかり『ノバ・ボサ・ノバ』。ルーア神父とシスター・マーマ。ふたりは芝居っけたっぷりに『愛燃える』の世界も披露。ソール@コムは、このふたりからもしっかり盗みをはたらく。
 つづいて出てくる連中からも、ソール@コムはなにかしら盗んでいく。朗々と喋り、朗々と歌う、テンション高くて傍迷惑な(笑)ジュリアン@ハマコからは、大きな帽子を盗む。
 この帽子をソール@コムがかぶるシーンは、どうやら『風共』のパロディ。バトラーからの贈り物を、スカーレットがいそいそかぶるシーンよね。
 そこへ出てきたヴァルモン@カシゲ。帽子をかぶったソール@コムを、恋人メルトゥイユ夫人だと思いこむ。ソール@コムは、メルトゥイユになりきって受け答え。
 ……女装アイドル、我らがコム姫に女役までやらせますか。なんてソツのない構成なの……?! コムとカシゲのラブシーンもどきを見せてくれるとは、やるな!
 ヴァルモン@カシゲからも、ソール@コムはちゃっかり盗みをはたらく。ヴァルモン@カシゲはそれに気づき、「強盗だー!」。他の面々も出てきて、『ノバ・ボサ・ノバ』の有名シーンを再現。
 そこからあくまでも『ノバ・ボサ・ノバ』で陽気に盛り上げ、フィナーレへ。

 他の組は、キャラを使って遊んでいるだけで、ストーリーまで本公演のパロディをしているわけじゃないのよ。
 ストーリーや有名シーンまできちんとパロにして、そのうえコム姫に女役までさせた雪組が、プロットはいちばん凝っていてうまかったよ。

 次は花組。「幹」はいちおー、『ブラック・ジャック』。でも、ストーリーはない。キャラだけ使ったお遊びね。
 ブラック・ジャック先生@オサのもとに、いろんなキャラたちが次々と相談に現れる、という設定。
 ストーリーはないけれど、キャラはそれぞれ味を活かした作り。新公経験者をうまく使っている。
 とくにルートヴィヒ@ゆみこが、ブラック・ジャック@オサを「美しい……」と机に押し倒すのなんか、うまいわー。オサに対しても、ルートヴィヒという役に対しても。
 ここまでなら他の組もそうだけど、花組はクライマックスを芝居仕立てに盛り上げてるんだよね。
 悩みを打ち明ける貞奴@ふーちゃんが「死にたい」ともらすと、ブラック・ジャック@オサってば、「死ねばいい!」と、トート閣下に早変わり!!
 秀逸なのは、ピノコ@あすか!! 彼女は突然ルキーニに変身。狂気を秘めた目で、あの「トート閣下からナイフをいただくシーン」を演じてくれるのだ。そして、貞奴@ふーちゃんを刺殺。「グランド・アモーレ!!」の台詞も健在。
 バックには「あの」昇天装置が現れ、トート閣下@オサと貞奴@ふーちゃんが、スモークの中を昇天していく……。
 この最後の盛り上がりの劇的さが素晴らしかった、花組。

 月組の「幹」は『ガイズ&ドールズ』。『グランドホテル』のホテルにやってきたらしい、スカイ@リカと酔っぱらいサラ@えみくら。ドアマン@きりやんに門前払いを受ける。
 ホテルには次々と過去作品のキャラたちが現れる。スカイ@リカたちには「部屋はない」のに、他の客はもみ手で通すってのはどういうことだ?! とおさまらないスカイ@リカが、彼らに勝負を挑む。
 あくまでも、キャラのお遊びに終始。
 しかも最後には究極の内輪受けをやってくれた。この前のシーンで、タニがひとりで「宙組に移動になりました」と挨拶をしているのだ。これが伏線。
 最後に登場キャラ総出で「ドリフ的混乱シーン」をやってみせたとき、……あれっ? どさくさにまぎれてタニが混ざってるぞっ?! 指摘されたタニが、泣きながら走り去る。……かっ、かわいいっ!(笑)
 この究極の内輪受けが、うまい。

 星組はもっと散漫。
 「幹」は『国境のない地図』。天才音楽家ヘルマン@ワタルのもとへ、他の人たちが歌を習いに来る、という設定。……ちゃんとセットには「宝塚音楽学校」のマークが輝いている(笑)。
 歌を習いに来たわりに、最後は「イントロクイズ」になっていたりと、かなり力業。
 構成自体はいちばんお粗末。
 

 だが、繰り返すが今のは、構成の話だ。プロットが複雑だからって、それがそのまま作品の善し悪しとイコールってわけじゃない。プラスαがあるのが、舞台だもんな。

 どの組も、すごく笑えたよー。
 

 専科のみなさんには、お笑いシーンなし。真面目に濃く、濃ぃい歌声を披露してもらった。

 唯一お笑いがあったのが、トド様。バトラー@トドに絡む、5人の2番手男役スカーレット。
 タニ、きりやん、あさこ、カシゲ、トウコ。
 ……ねえ、あさこ。この中で君だけが、「本役」だよね? あとはみんな、所詮「お祭りのお遊び」よね?
 なのに君がいちばんイケてないってのは、どうよ、どうなのよあさこ!(笑)
 こわかったよ、スカーレット@あさこ。ごついのなんのって。似合っていない度ではきりやんもいい勝負だったが、彼は見事に「成りきって」いた。表情がスカーレットそのものだったのだわ(こわかった)。
 タニちゃんはたんなるお笑い系の似合わなさ、カシゲとトウコはノープロ、美しかった。
 この強面のスカーレットを前に、バトラー@トド様たじたじ。笑いを振りまいてました。

 ワタ×コムの『ベルばら』はシリアス、とっても美しかったけど……それだけだったなー。他のシーンのインパクトが強すぎて、印象に残らない……。
 

 いやしかし、とってもたのしんだよー。今日は立ち見(場所取りする気なかったんで、開演1分前に入場、でも我が視界に障害物なし・笑)だったんだけど、とても有意義でした。


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