わたしたちが泊まった日の出館は、いい宿でした。
 建物はきれいで、眺めがいい。朝焼けの水平線が一望できる。山上館を望む気持ちは変わらないが(笑)、第2の宿も悪いところじゃなかったよ。
 それと、浴衣によるあからさまな差別も気づかなかった。なくなったのかもしれないし、わたしが気づかなかっただけかもしれない。いちおー、第2ランクの施設だったからな。昔、差別されたときは最低ランクの施設に泊まっていたの。
 今回は、ちゃんと丹前が用意されていました(笑)。

 不思議なのは、施設に名前が変更になっていたこと。
 10日前から、日の出館は「日昇館」という名前になっていた。
 あちこちにそれについての説明がされているんだが、細部の記載は変更が行き届いておらず、結局は「日の出館」のままだ。なんでこんな意味のない名前の変更をしたんだろう?
「分与でモメて骨肉の争いがあり、部分的にオーナーが変わったんじゃないの?」
 とか、
「嵐で道路は閉鎖、船も出せずに日常世界から切り離され、孤島となりはてたうえで連続殺人事件でも起こったんじゃないの?」
 とか、弟とふたりで想像してみたり。
「ゲームとかミステリ小説とかで、『こんな意味のない複雑なつくりの建物、現実にあるわけない』っての、よくあるけど、この宿はまさにソレだなー」
「なにも考えずに改築してどんどん増やしていって、手に負えなくなってる感じだよねー」
 ゲームの舞台としてゾンビと戦うのにもいいし、ミステリ小説の舞台として密室殺人事件を起こすにもうってつけのロケーションだぞ、この宿は(笑)。

 ところでわたしは、この朝ヘコんでました。
 前日、大事を取って温泉を我慢したのに、翌朝目覚めてみれば、じんましんはさらにひどくなってましたのよ。
 注射が効いたのか、前日はわりと沈静化していたの。だからまだなんとか、観光することもできた。このまま治るのかな、とも思ったけれど、念には念を入れて、温泉を我慢したのに。
 発病3日目だよ? なんでひどくなる一方なの?
 ムカついたんで、温泉に入ったけど。あんまりひどくなっていたんで、なにをしてもこれ以上ひどくなることはないだろう、と思って。

 父ひとりご機嫌さん。
 思い存分温泉めぐりをして、スタンプを集めて。足が悪いので、我慢しているところももちろんあるんだろうけど、自分が楽しめる範囲でめいっぱい楽しんでいる様子。
 ……よかったね。とりあえず、父がたのしめたんんなら、この旅行の価値はあったわけだから。わたしは心底、へとへとだったけどさ……。

 前日に那智の滝へ行き(よりによって年に一度の火祭りの日だった)、幽玄の世界を堪能。家族の体調もあり、火祭り本体はスルーしたんだけど、霧の中の滝は空の一部が落ちてくるようで、これはこれで眼福。
 宝塚歌劇団雪組・大凪真生の千社札が目に新しく光ってたけど……滝そばの社に貼ったの、本人? ファン? ちと恥ずかしい……。(古いモノでは真矢みきもあった)
 本日はウォータージェット船に乗って瀞峡めぐり。深い山と山の間、切り立った崖の狭間を高速で移動するパノラマ見物、水上でしか得られない目線。わたしがこの船のオーナーなら、船を造り直すよ、絶対。船のデザインの陳腐さで損をしている。せっかくの景観がもったいない。
 そのあと新宮で城跡見物。……うちの弟が城跡マニアなので。我が家は鉄道マニアと山オタクと城跡マニアとヅカオタクで成り立っているのよ……。
 新宮あたりではもう、わたしの意識はかなり朦朧。じんましんがさらにひどくなっており、まともにモノが考えられない。ついに顔もまだらになり、「誰もわたしを見ないで」状態。
 そんなわたしにビデオカメラを向け「辛気くさい顔しないで、ほら、笑って」と母。笑えるかー。こんな顔、撮るんぢゃねえ。

 健康第一。
 とにかく、じんましんのおかげで、わたしは散々だったよ。
 なにもしてなくても、体力が剥ぎ取られていく感じ。めそめそ。

 で、でも、親孝行だしな……体力気力のつづく限り、がんばったよ、わたし!(息絶え絶え)

 

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