弟と近所のファミレスでごはんを食べたんだが。
 どーしたことだ?
 ウエイトレス、おばさん率高し。
 つーか、おばさんばっかし。

「……変じゃないか?」
「変だよな」

 夜のファミレスは、若いアルバイトくんたちの職場だ。このファミレスはできてから20年くらい経ってるんだが、その改装改築主義主張の迷走いろいろあった長い歴史のなか、夜におばさんたちが働いているなんてこと、一度もなかった。

「この時間帯なんて、主婦が働く時間じゃないだろ? 家庭はどうしてるんだ? 亭主や子どもの晩ごはんは?」
「たしかに、昼間はおばさんが働いているけど……今は夜なのに」

 ファミレスやコンビニ、それからファストフード。それらの店は、昼間はおばさん率が高い。彼女たちは、夕方になると若いバイトに交代して家へ帰っていく。夕方の主婦は忙しい。
 反対に若者たちは、昼間は学校に通っているので、夕方から夜に働く。若者とおばさんは、こうやって時給いくらのアルバイト業界を回していく。

 それが今までの常識だったのに、今日のこの店は、おばさんばかりが働いている。
 若者向けのかわいい制服を着て、ゴールデンタイムに働いている。

「……不景気ってこと?」
「一家の主婦が、家庭を放り出してこんな時間に働かなきゃ、やっていけないほど逼迫しているのか?」
「今の若い子は、ファミレスなんかでバイトしないのかしら。時給安いから?」
「安い時給でも、おばさんならそりゃ働くだろうけど」

 それにしても、雰囲気がチガウ……。
 おばさんがウエイトレスだと。なまじ制服がかわいいぶん、ブラックな雰囲気。

「会議している客はいるし。なんか、変な店だな」
「なんでこんな時間まで会議してるのよ」
「自社ビルじゃないから、もう時間外ってことで追い出されたとか。ありえるぞ」

 いつもなら、若い客でにぎやかな店なのに。
 いちばん目立つ大テーブルでは、書類を広げたスーツの人たちが本気で仕事中。食事のついでに、とかではなく、食器すらすでにないテーブルでふつうに会議をしている。

 雰囲気がチガウ……。なんなの?

「どーでもいいけど、スープの補充はいつしてくれるのよう」
「聞いてくれば」
「もう一度言ったもん。2度も言えないよー」

 おばさんしかいないウエイトレスは、人数が明らかに足りていない。
 サラダバーもスープバーもなくなりかけている。でも、補充されない。人数が足りなくて、そこまで手が回らないのだ。料理を運び、レジを打つだけでいっぱいいっぱい。
 3種類あるスープの、2種類が空になっていたので、わたしは補充を訴えた。……のに、補充してくれたのは1種類だけ。もうひとつは空のまま放置。
 つーか、あの大きなスープタンクが空になっているのをはじめて見た。ふつー、空になる前に補充されるから、底が見えるなんてことあり得ないんだよね。本気で人手が足りていない模様。

「パンプキンスープ〜〜。飲むまで帰らないからね〜〜」
「あー、うるさい。スープなんかどうでもいいだろう」
「よくないわっ。スープバーがたのしみで来てるんだからねっ」

 わたしは汁物好きなんだ。わざわざスープバー料金を別途払ってるんだから、スープは5杯以上飲むことにしてるんだいっ。
 しかも今日は大好きなパンプキンスープがメニューにあった。大喜びで飲んでいたのに。
 よりによって、パンプキンスープの補充をしてくれない……あと1杯は飲んでやるー。そーでなきゃ帰らないぞ。

「不景気ってことか……どこもかしこも」
「夜中のファミレスで仕事をする人たち、人件費を抑えるために少ない人数で店を回すファミレス、しかもおばさんばかり。不景気は目に見えるかたちで、こんなところに。……嫌すぎ」

「まあ、ウエイトレスの年齢は、現在の店長の趣味、て可能性もあるかもしれないけどな。熟女趣味とか」
「それ、もっと嫌すぎ」

 

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