だってわたしは今、ヲトメだから。
 愛しのダーリンだけを見つめるの。

 3回目の『王家に捧ぐ歌』観劇。
 貸切公演B席の隅っこでささやかに、ひとりだけを見つめ続ける。

 潔いほどに、ケロしか見ていません。

 この人、ものすごく表情が変わる。
 細かいの。
 剣舐めも、指舐めも見所だけど、1幕終わりの台詞のないあたりは、秀逸だよ。
 捕らえられた父王と、エジプト兵士。
 エチオピア解放を唱えるラダメスを見る目……。

 狂気に満ちた危ない男なのに、ときおり、泣きそうにせつない目をする……。

 くらくら。
 誰か助けてください。
 この人、素敵すぎます。

 ケロ・ウバルドに感情移入して『王家…』を観ると、やばいです。気分はテロリスト。
 彼の狂気を突き詰めていく作業は、とてもたのしそうだ。

 なんといっても『王家…』ときたら穴だらけな物語なんで、わからないところが山ほどあります。
 ウバルドはその謎な部分の代表みたいな男です。

 この男、なんなんですか?

 敗戦国エチオピアの王の息子、なのよね?
 エジプトにいるってことは、彼もまた囚人なの?
 でもそれにしては、自由に王宮を闊歩しすぎてないか?
 しかも、帯剣してますが。
 実は捕まってないの? だとしても、いくらなんでも堂々としすぎてるだろ。世界一の強国エジプトは、敗戦国の戦士が簡単に忍び込み、自由に歩き回れるくらい軍事に無関心なの?

 プログラムや機関雑誌を買って読めばわかるのかもしれんが、わたしにとってば舞台がすべてだ。舞台を観ただけで判断するさ。
 で、舞台を観ているだけじゃ、さっぱりわからない。
 ウバルドって、なに? この男の存在、変。
 とっても都合良くアイーダを虐め、とっても都合良くファラオを暗殺する。
 なんていい加減な設定。

 ああ、だけど。
 そのみょーな設定の男から、目が離せない。

 勝手にいろいろ考える。

 ウバルドって、アイーダのこと、愛してるよね?

 ウバルドは王の息子だが、「王子」には見えない。実際、そう呼ばれることもない。
 家臣のカマンテまとぶや、サウフェすずみんと一体化しているところを見ても、まっとーに王子様だとは思えない。
 王の息子だが、王子ではない。彼の母親は身分が低く、正式な王子としての身分を持ってないんじゃねーか?
 だから彼は考える。
 王位を継ぐためには、正妃の娘、第一王位継承者であるアイーダを娶るしかないと。
 ウバルドのアタマの中にあったドリーム。美しい異母妹アイーダと結婚し、ラブラブ王様生活。「いやだ、お兄様ったら」「こら、もうお兄様じゃないだろう」「だって……ポッ」「こいつぅ」「いやん」な素敵未来。
 それが。
 国は戦争に負けるわ、捕虜になるわ、しかも未来の妻アイーダは、敵国の将軍なんぞに目をハート型にしているし。ちょっと待った、俺の未来予想図どうしてくれる?!
 ……ウバルドが、逆ギレしてアイーダを虐めまくったり、暴走しまくるのも、納得だわ……こう考えると。

 だってウバルド、アイーダのこと、愛してるよね?
 だからこそ、彼女をあそこまで憎むのよね?
 兄の妹に対する感情じゃ、ないよね? もっと切実でどろどろした、男と女の愛憎だよね?

 ウバルドと、カマンテ、サウフェの関係も今イチ謎。
 いちお、ウバルドがえらそーにしてるけど、根本的に同質として描かれているからなあ。
 ウバルドがデキてるとしたら、どっちとがいいですか?(笑) 彼は倫理とか理性とか持ち合わせが少なそうなので、手近で処理していそうだなと。
 カマンテは、ウバルドと似たもの同士って気がする。同じくらい、最悪に見える。唯一サウフェは多少情緒を持っているかも。じゃ、サウフェがひとり受状態とか。彼はアイーダに惚れてるみたいだから、受として合格だよねえ。
 この最悪な男3人で、ドロドロしている救いのない話とか、描いてみたいなー(笑)。
 すずみんが受?!とか考えちゃうと、正気に戻るんだけどな(笑)。

 ああそれにしても、ケロちゃんラ〜ヴ。
 わたしは今ヲトメ。

             ☆

 今日は月バウ発売日。
 わたしは三番街へ並びに行きました。
 もちろんそれは、CANちゃんのためにです。
 忙しいCANちゃんは、土日しか観劇できないの。土日だって、下手したら「結婚式です」と嘘をつかなければ休めないの。
 わたしはチケット余らせているくらいだから、どーでもいいんだけど、CANちゃんのためにいい番号の抽選券を引かなければ。

 ナメてました。

 きりやんが出ないんだから、並びはきっとスカスカ。さぞかし人数少ないだろーな、と。
 千秋楽でも土日でも、鼻歌まじりに買えるはずさ。
 CANちゃん、待っててね。いい席で大好きなさららんを観られるよ、きっと!

 すごい人数でした。並び。

 わたしとWHITEちゃんは、まさかの白紙を引きました。
 呆然。
 白紙? 白紙って、はずれ? 買えないってか?
 たかがさららんだぞ?!(失礼) なんなのよ、それっ?!

 江戸モノだよ? 人情モノだよ? 青天だよ?
 しかもしかも、谷正純演出だよ?!
 きりやん以外で誰がこんなハンデだらけの作品を演じられるというの。
(コウちゃんなら余裕で演じられるでしょう。ついでに、ケロでもぜんぜんOK。でも、彼らが主演することなどあり得ない)

「みんな、どうして? たかが、さららんだよ?!」
 と、さららんラヴこの道何年、のCANちゃんでさえ、首を傾げていました。

 結果を言おう。
 たしかに、並びの人数は多かった。かしげバウくらいの人数は並んでいたさ。
 しかし。

 実際に買う人は、ほとんどいなかったのだ。

 ……なんだったんだよ、あれは。
 買わないのに、ただ並んだだけ。
 ファンクラブ制度の弊害だ。
 一般の、ほんとーにさららんや、他の出演者のファンで、あるいは作品に興味があったりする、ふつーの人たちを閉め出しているよ。
 発売枚数よりはるかに多い人たちが並んだんだ、はずれを引き、泣く泣く購入をあきらめた人たちが、いたんじゃないのか?

 なのに、チケットは売れなかった。

 午後1時過ぎには、チケットカウンターに客の姿はない。
 売り切れは千秋楽のみ。残りの日程はすべて売れ残り。

「こんな番号じゃ土日は買えない。さららんを観られない」
 と、泣く泣く仕事に行ったCANちゃん。つらい思いをした分、損したね。サクラたちさえいなかったら、かなしい気持ちを味わうことなく希望のチケットが買えたのに。

 とりあえず、チケットは選び放題、買い放題です。
 もしもまだ月バウチケを持ってなくて、観たいと思っている人、三番街へGO。
 チケットは、ほんとうに欲しいと思っている人が買うべきだ。

 まあ、まさかのきりやん休演で、いろいろFCも大変だったんだろうけどさ。
 一般人からすると、ヤな感じのチケ発売だったよ。

 

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