彼が救われるための物語。@王家に捧ぐ歌
2003年8月18日 タカラヅカ 星組大劇場公演『王家に捧ぐ歌』千秋楽。
初日が開く前は1枚もチケットを持っていなかったわたしだが、無事に楽日まで通うことができた。ありがとうインターネット。ありがとう掲示板。
本日は13列目サブセンター。前列にはキムシンが……。スキンヘッドが目に痛い(笑)。
千秋楽、行ってよかったよ。
みんなテンション高いよー。ワタルくんはずーっとテンパッてるし。
ケロは「恋の逆ギレ男」から少し「狂信的テロリスト」に戻ってた(笑)。さすがに最後だから、自重したの?
10日に観たとき、2幕最初の「騙されるな」のシーンでケロちゃん、前を向いたまま後ろの壁を叩くシーンで、手が壁に届かず「かっくん」ってなってたんだよねえ。めちゃシリアスなシーンで、たたら踏んでくれるから、ツボに入ってたまらなかった。
だもんで今回も「立ち位置まちがってない? ちゃんと手は届く?」と心配しちゃったよ(笑)。
トウコちゃんは今まででいちばんきれいに見えた。
檀ちゃんの歌には終始はらはらさせられっぱなしだったが、場を破壊するほど致命的なハズし方は、今回はしなかった。
早朝に夜行バスで大阪に着いたんだけどねえ。1時にはムラにいますか、わたしたち。
わたしは座席あるからいいけど、WHITEちゃんなんか、立ち見だよ? 根性だわ。
小柄なBe-Puちゃんは、発泡スチロール(踏み台にするらしい)と厚底サンダル持参で立ち見。「これだけやって、よーやく緑野さんと同じ身長なのよっ」と吠える。
CANちゃんもチェリさんもいた。お喋りするのが大変な幕間。
ラストは気持ちよくスタンディング・オベーション。
みんな、ワタルを泣かせたいのか? てな感じ。いやあ、泣かせたい男だけどなあ(笑)。
ほんとに、いい千秋楽だった。
作品と、自分たちに誇りを持っている舞台人の姿が、まぶしかった。
さて。
そろそろ、萌えを話してもいいかしら。
えっ、今までも萌えの話しかしてなかったって? してたのはケロ萌えでしょ? そーじゃなくて、キャラ萌えの話。
『王家…』の登場人物たちは、誰もが魅力的だ。
ひとりずつを主役にして、SSぐらいならいつでも書けそうなくらい。
そのなかで、わたしがいちばん萌えていたのは……じつは……サウフェだった。
役として、キャラとして、これほどわたし好みの男はいない。
ほらわたし、「弱い男」が好きだから。「ヘタレ男」が好きで好きでしょーがないのよー。「泣き男」とか好きなのよー。
サウフェはいつも泣いている。
地面に這いつくばって、ベソをかいている。
泣いてなくても、大抵傷ついている。悲しみに、痛みに、顔をゆがめている。
一緒にいるウバルドやカマンテにある猛々しさが、彼にはない。
だけど、やっていることはあの暴力的な狂人たちと同じなのだ。
泣きながら、口にすることは復讐であり、憎しみである。
泣く、という弱さの象徴なよーな態度を取りながらも、彼はひとりの戦士であり、テロリストであるのだ。
いいキャラだよなあ。
他のふたりが怒りに我を忘れそうなときに、サウフェだけは泣きそうな顔するんだよ。
傷つけられたとき、怒りよりも悲しみに身を焼く男。
平時ならばきっと、やさしい穏やかな青年なのだろうと思う。それが祖国を踏みにじられ、復讐に狂っていく。
もともと狂人体質のウバルドやカマンテより、サウフェの持つ狂気に惹かれる。内面を掘り下げるのがたのしそうだ。
とりあえず受だと思うけど、攻は誰よ?
ウバルドとカマンテとは関係ありそーだが、そこに愛はカケラもなさそうだ……。
いちお、ウバルドのことは王子として立ててるよね? 彼をかばおうとしてみたり。ウバルドも、すぐ泣きの入るサウフェをあやすよーに腕を叩いてみたり、してるよねえ。
カマンテは冷酷で鬼畜なだけに見えるしなー。サウフェのことなんか、バカにしてそう(それはそれで萌えだが)。
どっちかってーと、ウバルド×サウフェかなあ。
……なんでサウフェ、すずみんなの? あの顔でケロと絡む妄想はしにくいっちゅーかな。あの顔はゆーひだけでいいんだってば。いっそゆーひなら、めちゃ萌えまくってたと思うけど……でも、ゆーひはすずみんほど演技力ないよね……(ゆーひを相当大根だと思っているな、わたし)。
あとやっぱり萌えなのは、なんといっても主人公ラダメス。
こいつ、受だよね?
どっから見てもなにやっても、受だよねええ?
「のーみそまで筋肉」の体育会系男。のーみそにシワが少ないため、自分の悲しみや苦しみが理解できない。
『王家…』の物語自体は、アイーダさえいなかったら悲劇はなにも起こらず、みんなしあわせに「ものごとはいつでも、あるべき道をたどります」てなもんで落ち着くところに落ち着いていただろう。
ラダメスはアムネリスと結婚し、エジプトのファラオとなる。
エチオピアはエジプトの植民地のひとつとして、人々は労働力として生かされ、皆殺しになることだけはなく歴史を重ねる。
エチオピア王とその息子はエジプトを恨み、戦いを仕掛けたかもしれないけど、返り討ちにあっておしまい、歴史にもエジプトにも影響ナシ、てなもんだろう(ウバルドはアイーダの愛さえあれば、祖国再興なんぞ忘れて、ふたりでしあわせに暮らしたかもしれないが・笑)。
エジプト人もエチオピア人も、誰もが予想できる範囲の、あたりまえの日々を得ていただろう。
だけどラダメスは、きっと不幸だったと思う。
『王家…』は、ラダメスの魂の救済物語だと思うんだ。
そのままでも幸福なはずの、若く美しい将軍。能力があり、未来があり、手に入らないモノはないであろう、恵まれた青年は、それでも不幸だった。
根本的な、魂の飢え。
砂漠のような乾き。
彼は欲していたんだ。オアシスを。
それは、アイーダという女のカタチで現れた。
アイーダという女が、それほどすばらしい人物であったかどうかは、関係ない。
飢えて、乾いて、倒れる寸前だったラダメスには、彼女が必要だったんだ。
強国エジプト、戦いによって富と権力を得、弱者を支配する……その図式のなかで幸福になれなかったラダメスは、それ以外の思想に自分の幸福の可能性を見いだす。
アイーダは歌う。
「戦いは新たな戦いを生むだけ」
エジプトと、ラダメスの生きている社会理念と正反対の考え方。
戦いこそが幸福を得る手段だという価値観で育った男に、その価値観の中で花開く才能を持ちながらも、不幸だった男に。
新しい風が吹く。
ラダメスがアイーダを愛したのは、必然だった。
それまでの世界では、ラダメスを救えなかったんだ。誰も。
それこそ彼は、誰からも愛され、求められていたけれど。
それでも、誰も彼を救えなかった。
アイーダという新しい世界で、ラダメスははじめて幸福とはなにかを知る。
自分が求めていたものが、なにかを知る。
この世界で感じていた違和感が、なにかを知る。
だから彼は歌う。
「この世に平和を! 戦いに終わりを!」
アイーダに言われたからじゃない。アイーダの気を引くために彼女の国を開放したいのでもない。
それがラダメスの魂が、もともと求めているものだったんだよ。
戦士として生まれ育った彼が、知らなかった思想。戦士としての自分の存在意義を否定する思想。
皮肉だね。おのれの才能を活かせる社会では、彼は幸福になれないんだ。おのれの才能を否定した世界でしか、幸福を得られない。
才能の否定。
存在意義の否定。
それでもなお、ラダメスは平和を求める。
最後、地下牢でアイーダを抱きしめながら、ほんとうの意味で彼は幸福になったのだと思う。
彼の魂は、救われたのだと思う。
将軍としての破滅も、死刑も、すべて必要なことだった。
ラダメスの魂が救われるために。
死んだから不幸なんじゃない。可哀想なんじゃない。
彼は、ようやく幸福を手に入れたんだ。
アイーダに抱かれながら。
アイーダは攻だよねえ? トウコちゃんてば、あんなにかわいらしい女の子を演じてくれているのに、女役であるからこそよけいに攻っぷりが際だっている。……男役のときは受のくせにー(笑)。
アイーダ×ラダメス。
アイーダがラダメスの髪を撫でるのが、すごく好き。
彼女が「抱かれている」のではなく、「抱いている」のだということが、とてもよくわかる。
与えられるだけではなく、彼女こそが「与えて」いるのだと、わかる。
地下牢のシーンの「愛しているから」と歌う彼女は、聖母のようだ。
ラダメスを救うために、彼を抱きしめ慰撫するために、女の肉体を持って地上に降り立った天使のようだ。
よかったね、ラダメス。
……心から、そう思う。
ふたりが互いの愛だけでなく、「この世に平和を」と歌い出すのも、わかる。
戦いが正義のこの時代で、異なる価値観を持った一対の魂。
彼らが世界に求めるもので、幕が下りるのは、必然だ。
彼らの願いがアムネリスに届き、エジプト兵たちが剣を置き、長い時間をかけて現代にも、狂信者ウバルドたちにも届く。
そーゆー物語なんだなと、わたしは思った。
初日が開く前は1枚もチケットを持っていなかったわたしだが、無事に楽日まで通うことができた。ありがとうインターネット。ありがとう掲示板。
本日は13列目サブセンター。前列にはキムシンが……。スキンヘッドが目に痛い(笑)。
千秋楽、行ってよかったよ。
みんなテンション高いよー。ワタルくんはずーっとテンパッてるし。
ケロは「恋の逆ギレ男」から少し「狂信的テロリスト」に戻ってた(笑)。さすがに最後だから、自重したの?
10日に観たとき、2幕最初の「騙されるな」のシーンでケロちゃん、前を向いたまま後ろの壁を叩くシーンで、手が壁に届かず「かっくん」ってなってたんだよねえ。めちゃシリアスなシーンで、たたら踏んでくれるから、ツボに入ってたまらなかった。
だもんで今回も「立ち位置まちがってない? ちゃんと手は届く?」と心配しちゃったよ(笑)。
トウコちゃんは今まででいちばんきれいに見えた。
檀ちゃんの歌には終始はらはらさせられっぱなしだったが、場を破壊するほど致命的なハズし方は、今回はしなかった。
早朝に夜行バスで大阪に着いたんだけどねえ。1時にはムラにいますか、わたしたち。
わたしは座席あるからいいけど、WHITEちゃんなんか、立ち見だよ? 根性だわ。
小柄なBe-Puちゃんは、発泡スチロール(踏み台にするらしい)と厚底サンダル持参で立ち見。「これだけやって、よーやく緑野さんと同じ身長なのよっ」と吠える。
CANちゃんもチェリさんもいた。お喋りするのが大変な幕間。
ラストは気持ちよくスタンディング・オベーション。
みんな、ワタルを泣かせたいのか? てな感じ。いやあ、泣かせたい男だけどなあ(笑)。
ほんとに、いい千秋楽だった。
作品と、自分たちに誇りを持っている舞台人の姿が、まぶしかった。
さて。
そろそろ、萌えを話してもいいかしら。
えっ、今までも萌えの話しかしてなかったって? してたのはケロ萌えでしょ? そーじゃなくて、キャラ萌えの話。
『王家…』の登場人物たちは、誰もが魅力的だ。
ひとりずつを主役にして、SSぐらいならいつでも書けそうなくらい。
そのなかで、わたしがいちばん萌えていたのは……じつは……サウフェだった。
役として、キャラとして、これほどわたし好みの男はいない。
ほらわたし、「弱い男」が好きだから。「ヘタレ男」が好きで好きでしょーがないのよー。「泣き男」とか好きなのよー。
サウフェはいつも泣いている。
地面に這いつくばって、ベソをかいている。
泣いてなくても、大抵傷ついている。悲しみに、痛みに、顔をゆがめている。
一緒にいるウバルドやカマンテにある猛々しさが、彼にはない。
だけど、やっていることはあの暴力的な狂人たちと同じなのだ。
泣きながら、口にすることは復讐であり、憎しみである。
泣く、という弱さの象徴なよーな態度を取りながらも、彼はひとりの戦士であり、テロリストであるのだ。
いいキャラだよなあ。
他のふたりが怒りに我を忘れそうなときに、サウフェだけは泣きそうな顔するんだよ。
傷つけられたとき、怒りよりも悲しみに身を焼く男。
平時ならばきっと、やさしい穏やかな青年なのだろうと思う。それが祖国を踏みにじられ、復讐に狂っていく。
もともと狂人体質のウバルドやカマンテより、サウフェの持つ狂気に惹かれる。内面を掘り下げるのがたのしそうだ。
とりあえず受だと思うけど、攻は誰よ?
ウバルドとカマンテとは関係ありそーだが、そこに愛はカケラもなさそうだ……。
いちお、ウバルドのことは王子として立ててるよね? 彼をかばおうとしてみたり。ウバルドも、すぐ泣きの入るサウフェをあやすよーに腕を叩いてみたり、してるよねえ。
カマンテは冷酷で鬼畜なだけに見えるしなー。サウフェのことなんか、バカにしてそう(それはそれで萌えだが)。
どっちかってーと、ウバルド×サウフェかなあ。
……なんでサウフェ、すずみんなの? あの顔でケロと絡む妄想はしにくいっちゅーかな。あの顔はゆーひだけでいいんだってば。いっそゆーひなら、めちゃ萌えまくってたと思うけど……でも、ゆーひはすずみんほど演技力ないよね……(ゆーひを相当大根だと思っているな、わたし)。
あとやっぱり萌えなのは、なんといっても主人公ラダメス。
こいつ、受だよね?
どっから見てもなにやっても、受だよねええ?
「のーみそまで筋肉」の体育会系男。のーみそにシワが少ないため、自分の悲しみや苦しみが理解できない。
『王家…』の物語自体は、アイーダさえいなかったら悲劇はなにも起こらず、みんなしあわせに「ものごとはいつでも、あるべき道をたどります」てなもんで落ち着くところに落ち着いていただろう。
ラダメスはアムネリスと結婚し、エジプトのファラオとなる。
エチオピアはエジプトの植民地のひとつとして、人々は労働力として生かされ、皆殺しになることだけはなく歴史を重ねる。
エチオピア王とその息子はエジプトを恨み、戦いを仕掛けたかもしれないけど、返り討ちにあっておしまい、歴史にもエジプトにも影響ナシ、てなもんだろう(ウバルドはアイーダの愛さえあれば、祖国再興なんぞ忘れて、ふたりでしあわせに暮らしたかもしれないが・笑)。
エジプト人もエチオピア人も、誰もが予想できる範囲の、あたりまえの日々を得ていただろう。
だけどラダメスは、きっと不幸だったと思う。
『王家…』は、ラダメスの魂の救済物語だと思うんだ。
そのままでも幸福なはずの、若く美しい将軍。能力があり、未来があり、手に入らないモノはないであろう、恵まれた青年は、それでも不幸だった。
根本的な、魂の飢え。
砂漠のような乾き。
彼は欲していたんだ。オアシスを。
それは、アイーダという女のカタチで現れた。
アイーダという女が、それほどすばらしい人物であったかどうかは、関係ない。
飢えて、乾いて、倒れる寸前だったラダメスには、彼女が必要だったんだ。
強国エジプト、戦いによって富と権力を得、弱者を支配する……その図式のなかで幸福になれなかったラダメスは、それ以外の思想に自分の幸福の可能性を見いだす。
アイーダは歌う。
「戦いは新たな戦いを生むだけ」
エジプトと、ラダメスの生きている社会理念と正反対の考え方。
戦いこそが幸福を得る手段だという価値観で育った男に、その価値観の中で花開く才能を持ちながらも、不幸だった男に。
新しい風が吹く。
ラダメスがアイーダを愛したのは、必然だった。
それまでの世界では、ラダメスを救えなかったんだ。誰も。
それこそ彼は、誰からも愛され、求められていたけれど。
それでも、誰も彼を救えなかった。
アイーダという新しい世界で、ラダメスははじめて幸福とはなにかを知る。
自分が求めていたものが、なにかを知る。
この世界で感じていた違和感が、なにかを知る。
だから彼は歌う。
「この世に平和を! 戦いに終わりを!」
アイーダに言われたからじゃない。アイーダの気を引くために彼女の国を開放したいのでもない。
それがラダメスの魂が、もともと求めているものだったんだよ。
戦士として生まれ育った彼が、知らなかった思想。戦士としての自分の存在意義を否定する思想。
皮肉だね。おのれの才能を活かせる社会では、彼は幸福になれないんだ。おのれの才能を否定した世界でしか、幸福を得られない。
才能の否定。
存在意義の否定。
それでもなお、ラダメスは平和を求める。
最後、地下牢でアイーダを抱きしめながら、ほんとうの意味で彼は幸福になったのだと思う。
彼の魂は、救われたのだと思う。
将軍としての破滅も、死刑も、すべて必要なことだった。
ラダメスの魂が救われるために。
死んだから不幸なんじゃない。可哀想なんじゃない。
彼は、ようやく幸福を手に入れたんだ。
アイーダに抱かれながら。
アイーダは攻だよねえ? トウコちゃんてば、あんなにかわいらしい女の子を演じてくれているのに、女役であるからこそよけいに攻っぷりが際だっている。……男役のときは受のくせにー(笑)。
アイーダ×ラダメス。
アイーダがラダメスの髪を撫でるのが、すごく好き。
彼女が「抱かれている」のではなく、「抱いている」のだということが、とてもよくわかる。
与えられるだけではなく、彼女こそが「与えて」いるのだと、わかる。
地下牢のシーンの「愛しているから」と歌う彼女は、聖母のようだ。
ラダメスを救うために、彼を抱きしめ慰撫するために、女の肉体を持って地上に降り立った天使のようだ。
よかったね、ラダメス。
……心から、そう思う。
ふたりが互いの愛だけでなく、「この世に平和を」と歌い出すのも、わかる。
戦いが正義のこの時代で、異なる価値観を持った一対の魂。
彼らが世界に求めるもので、幕が下りるのは、必然だ。
彼らの願いがアムネリスに届き、エジプト兵たちが剣を置き、長い時間をかけて現代にも、狂信者ウバルドたちにも届く。
そーゆー物語なんだなと、わたしは思った。
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