星組大劇場公演『王家に捧ぐ歌』千秋楽。

 初日が開く前は1枚もチケットを持っていなかったわたしだが、無事に楽日まで通うことができた。ありがとうインターネット。ありがとう掲示板。
 本日は13列目サブセンター。前列にはキムシンが……。スキンヘッドが目に痛い(笑)。

 千秋楽、行ってよかったよ。
 みんなテンション高いよー。ワタルくんはずーっとテンパッてるし。
 ケロは「恋の逆ギレ男」から少し「狂信的テロリスト」に戻ってた(笑)。さすがに最後だから、自重したの?
 10日に観たとき、2幕最初の「騙されるな」のシーンでケロちゃん、前を向いたまま後ろの壁を叩くシーンで、手が壁に届かず「かっくん」ってなってたんだよねえ。めちゃシリアスなシーンで、たたら踏んでくれるから、ツボに入ってたまらなかった。
 だもんで今回も「立ち位置まちがってない? ちゃんと手は届く?」と心配しちゃったよ(笑)。
 トウコちゃんは今まででいちばんきれいに見えた。
 檀ちゃんの歌には終始はらはらさせられっぱなしだったが、場を破壊するほど致命的なハズし方は、今回はしなかった。

 早朝に夜行バスで大阪に着いたんだけどねえ。1時にはムラにいますか、わたしたち。
 わたしは座席あるからいいけど、WHITEちゃんなんか、立ち見だよ? 根性だわ。
 小柄なBe-Puちゃんは、発泡スチロール(踏み台にするらしい)と厚底サンダル持参で立ち見。「これだけやって、よーやく緑野さんと同じ身長なのよっ」と吠える。
 CANちゃんもチェリさんもいた。お喋りするのが大変な幕間。

 ラストは気持ちよくスタンディング・オベーション。
 みんな、ワタルを泣かせたいのか? てな感じ。いやあ、泣かせたい男だけどなあ(笑)。
 ほんとに、いい千秋楽だった。
 作品と、自分たちに誇りを持っている舞台人の姿が、まぶしかった。
 

 さて。
 そろそろ、萌えを話してもいいかしら。
 えっ、今までも萌えの話しかしてなかったって? してたのはケロ萌えでしょ? そーじゃなくて、キャラ萌えの話。

 『王家…』の登場人物たちは、誰もが魅力的だ。
 ひとりずつを主役にして、SSぐらいならいつでも書けそうなくらい。

 そのなかで、わたしがいちばん萌えていたのは……じつは……サウフェだった。

 役として、キャラとして、これほどわたし好みの男はいない。
 ほらわたし、「弱い男」が好きだから。「ヘタレ男」が好きで好きでしょーがないのよー。「泣き男」とか好きなのよー。

 サウフェはいつも泣いている。

 地面に這いつくばって、ベソをかいている。
 泣いてなくても、大抵傷ついている。悲しみに、痛みに、顔をゆがめている。
 一緒にいるウバルドやカマンテにある猛々しさが、彼にはない。
 だけど、やっていることはあの暴力的な狂人たちと同じなのだ。
 泣きながら、口にすることは復讐であり、憎しみである。
 泣く、という弱さの象徴なよーな態度を取りながらも、彼はひとりの戦士であり、テロリストであるのだ。

 いいキャラだよなあ。
 他のふたりが怒りに我を忘れそうなときに、サウフェだけは泣きそうな顔するんだよ。
 傷つけられたとき、怒りよりも悲しみに身を焼く男。
 平時ならばきっと、やさしい穏やかな青年なのだろうと思う。それが祖国を踏みにじられ、復讐に狂っていく。
 もともと狂人体質のウバルドやカマンテより、サウフェの持つ狂気に惹かれる。内面を掘り下げるのがたのしそうだ。
 
 とりあえず受だと思うけど、攻は誰よ?
 ウバルドとカマンテとは関係ありそーだが、そこに愛はカケラもなさそうだ……。
 いちお、ウバルドのことは王子として立ててるよね? 彼をかばおうとしてみたり。ウバルドも、すぐ泣きの入るサウフェをあやすよーに腕を叩いてみたり、してるよねえ。
 カマンテは冷酷で鬼畜なだけに見えるしなー。サウフェのことなんか、バカにしてそう(それはそれで萌えだが)。
 どっちかってーと、ウバルド×サウフェかなあ。
 ……なんでサウフェ、すずみんなの? あの顔でケロと絡む妄想はしにくいっちゅーかな。あの顔はゆーひだけでいいんだってば。いっそゆーひなら、めちゃ萌えまくってたと思うけど……でも、ゆーひはすずみんほど演技力ないよね……(ゆーひを相当大根だと思っているな、わたし)。

 
 あとやっぱり萌えなのは、なんといっても主人公ラダメス。
 こいつ、受だよね?
 どっから見てもなにやっても、受だよねええ?
 「のーみそまで筋肉」の体育会系男。のーみそにシワが少ないため、自分の悲しみや苦しみが理解できない。

 『王家…』の物語自体は、アイーダさえいなかったら悲劇はなにも起こらず、みんなしあわせに「ものごとはいつでも、あるべき道をたどります」てなもんで落ち着くところに落ち着いていただろう。
 ラダメスはアムネリスと結婚し、エジプトのファラオとなる。
 エチオピアはエジプトの植民地のひとつとして、人々は労働力として生かされ、皆殺しになることだけはなく歴史を重ねる。
 エチオピア王とその息子はエジプトを恨み、戦いを仕掛けたかもしれないけど、返り討ちにあっておしまい、歴史にもエジプトにも影響ナシ、てなもんだろう(ウバルドはアイーダの愛さえあれば、祖国再興なんぞ忘れて、ふたりでしあわせに暮らしたかもしれないが・笑)。
 エジプト人もエチオピア人も、誰もが予想できる範囲の、あたりまえの日々を得ていただろう。

 だけどラダメスは、きっと不幸だったと思う。

 『王家…』は、ラダメスの魂の救済物語だと思うんだ。
 そのままでも幸福なはずの、若く美しい将軍。能力があり、未来があり、手に入らないモノはないであろう、恵まれた青年は、それでも不幸だった。
 根本的な、魂の飢え。
 砂漠のような乾き。
 彼は欲していたんだ。オアシスを。
 それは、アイーダという女のカタチで現れた。
 アイーダという女が、それほどすばらしい人物であったかどうかは、関係ない。
 飢えて、乾いて、倒れる寸前だったラダメスには、彼女が必要だったんだ。
 強国エジプト、戦いによって富と権力を得、弱者を支配する……その図式のなかで幸福になれなかったラダメスは、それ以外の思想に自分の幸福の可能性を見いだす。
 アイーダは歌う。
「戦いは新たな戦いを生むだけ」
 エジプトと、ラダメスの生きている社会理念と正反対の考え方。
 戦いこそが幸福を得る手段だという価値観で育った男に、その価値観の中で花開く才能を持ちながらも、不幸だった男に。
 新しい風が吹く。

 ラダメスがアイーダを愛したのは、必然だった。

 それまでの世界では、ラダメスを救えなかったんだ。誰も。
 それこそ彼は、誰からも愛され、求められていたけれど。
 それでも、誰も彼を救えなかった。

 アイーダという新しい世界で、ラダメスははじめて幸福とはなにかを知る。
 自分が求めていたものが、なにかを知る。
 この世界で感じていた違和感が、なにかを知る。

 だから彼は歌う。
「この世に平和を! 戦いに終わりを!」
 アイーダに言われたからじゃない。アイーダの気を引くために彼女の国を開放したいのでもない。
 それがラダメスの魂が、もともと求めているものだったんだよ。
 戦士として生まれ育った彼が、知らなかった思想。戦士としての自分の存在意義を否定する思想。
 皮肉だね。おのれの才能を活かせる社会では、彼は幸福になれないんだ。おのれの才能を否定した世界でしか、幸福を得られない。
 才能の否定。
 存在意義の否定。
 それでもなお、ラダメスは平和を求める。

 最後、地下牢でアイーダを抱きしめながら、ほんとうの意味で彼は幸福になったのだと思う。
 彼の魂は、救われたのだと思う。

 将軍としての破滅も、死刑も、すべて必要なことだった。
 ラダメスの魂が救われるために。

 死んだから不幸なんじゃない。可哀想なんじゃない。
 彼は、ようやく幸福を手に入れたんだ。

 アイーダに抱かれながら。
 

 アイーダは攻だよねえ? トウコちゃんてば、あんなにかわいらしい女の子を演じてくれているのに、女役であるからこそよけいに攻っぷりが際だっている。……男役のときは受のくせにー(笑)。
 アイーダ×ラダメス。
 アイーダがラダメスの髪を撫でるのが、すごく好き。
 彼女が「抱かれている」のではなく、「抱いている」のだということが、とてもよくわかる。
 与えられるだけではなく、彼女こそが「与えて」いるのだと、わかる。
 地下牢のシーンの「愛しているから」と歌う彼女は、聖母のようだ。
 ラダメスを救うために、彼を抱きしめ慰撫するために、女の肉体を持って地上に降り立った天使のようだ。

 よかったね、ラダメス。
 ……心から、そう思う。

 ふたりが互いの愛だけでなく、「この世に平和を」と歌い出すのも、わかる。
 戦いが正義のこの時代で、異なる価値観を持った一対の魂。
 彼らが世界に求めるもので、幕が下りるのは、必然だ。
 彼らの願いがアムネリスに届き、エジプト兵たちが剣を置き、長い時間をかけて現代にも、狂信者ウバルドたちにも届く。

 そーゆー物語なんだなと、わたしは思った。


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