わああぁぁぁん。

 プチ・ショックなことが。

 わたしの今のブームは、前にも書いたと思うが「FROG STYLE」っちゅーカエルのシリーズ。
 こいつがちまたでひそかに人気で、次々と新商品が発売されているんだ。
 しかし、地域性があるのか、大阪では手に入らないこともしばしば。
 7月発売済みのグミなんて、大阪ではまだ一度も売っているところを見たことがないぞ? わたしだけでなく、他の子もそう言っていたぞ。
 なのに、東京ではあったりまえに、とっくに売られているんだよねえ。コミケ旅行のときに買ったけどさっ。
 そんなふうに、手に入らないことだって、あるわけさ。

 そして今、「FROG STYLE」ファンの間で熱く語られているのが、「FROG STYLE CANNED FROG」。
 シリーズ最新作、しかも今回はセブンイレブン限定商品ときた。
 行動範囲にセブンイレブンかないわたしなんぞは、ネットがなかったら存在を知らないままにいたよ。

 製造が追いついていないのか、入荷が遅れているだけなのか、まだまだレアらしい、この「FROG STYLE CANNED FROG」。
 公式HPのBBSでも、捜索情報と捕獲報告が錯綜している。
 昨日の段階ではまだ、大阪での捕獲報告はなかった。
 大阪では未発売? そんなバカな。たしかに、大阪はローソンのお膝元、セブンイレブンはほとんど存在しないが……どこかにはあるはずだ。

 つーことでわたしは、「FROG STYLE CANNED FROG」捜索の旅に出た。
 まずはセブンイレブンの公式HPで、店舗を検索する。何軒かをチェックし、日が陰ってから(紫外線はばばあの大敵)さあ出発だ!!

「どこへ行くの? 菓子パンを買ってきてちょうだい」
 颯爽と自転車にまたがると、ちょーど通りかかった母におつかいを言い渡される。
 いいよ、パンだね。コンビニに行くわけだから、ぜんぜんOKさ。
 自転車を漕ぎ出すと、親の家の前、玄関ドアを開けて父が顔を出している。
「これを頼む」
 父はハガキの束を差し出した。わかったよ、ポストを経由して行くよ。
 堤防まで来たときに、電話が鳴った。
「ついでに東急ハンズに行って、封筒を買ってきてちょうだい!!」
 ……母だった。
「さっきは咄嗟だったから、思いつかなくて。でもせっかくだから、ついでに買ってきてもらおうと思って!!」
 ついでってなんだ?
 わざわざ用事を作って、わざわざ電話をしてくるわけ?
 アンタら、外出する人間にはなにがなんでもおつかいを課せるのねっ?! そーしないと損だと思ってるわねっ?!

 仕方がないので、ポストを経由したあと、ハンズに行きました。
 ……ハンズは、ものすごいことになってました。
 そーいや毎年やってるよな、「ハンズ・メッセ」。年に何回か、東急ハンズが社をあげてやるお祭り。イベントやったり、セールをやったりで、人口密度は最高になる日々。
 今日はその、お祭りの最終日でした。
 ……ママ。こんな日に、ふつーの封筒買いに来るバカはわたしだけかも?
 人混みをかき分け、封筒売り場にたどり着き、「で、どんなのがいいって?」と、電話でママと話しながら選ぶ。
 買い物額、210円。チーン。

 人混みに疲れたカラダで、見知らぬ街を自転車で走る。
 セブンイレブンはどこ?

 RPGじゃないんだからさー、目的地にたどり着くまでに、いろいろ他の用事言いつけられて、回り道して、って、なんだかなあ。
 またしても電話が鳴って「あ、ついでに**も買ってきて!」と、用事が増えないことを祈りましたさ。

 そして。
 2軒目のセブンイレブンで、ついに見つけましたよ、「FROG STYLE CANNED FROG」!!
 かわいいー。
 白い不透明カプセルにいつものロゴとイラストの付いた帯がつけてある。
 大人買いしそうになる自分を、制御する。
 コンプリートにこだわっちゃいけない。キリがなくなる。いくつか買えば気は済むんだから、少しだけ買えばいいわ。

 と、自制の結果、ふたつだけ買った。

 「FROG STYLE CANNED FROG」は全10種類。まだひとつも持っていないわたしは、ダブる心配がないからとても気楽。ママに言いつかった買い物もして、幸福な気分で帰路につく。

 頼まれたモノを届けに親の家に行くと、ちょうど弟も帰宅しており、家族がぞろりと茶の間にそろっていた。
 よーし、ここでわたしの「FROG STYLE CANNED FROG」を自慢しちゃうぞっ。

 簡単に商品説明をしながら、白いカプセルを開ける。
 中から出てきたのは、大きな肉をかじっているピンクの王様カエルの絵の付いた、小さな缶。
「MEAT FROGだ!」
 現物を見るのははじめてだが、すでに知識だけはあるわたし。
 ああ、なんてかわいいのかしら。
 うっとりと缶を眺めたあとに、その缶を開ける。
 中には、おなかに肉の絵の描いてある、白い骨を片手に持ったピンクのカエルのフィギュアと、葉っぱのカタチのタグ。
 ああ、なんてかわいいのかしら〜〜。
 この絶妙のライン、色、デザイン。
 見ているとしあわせな気持ちになるわ。

 そして、しあわせはもうひとつある。
 ふたつ買ったんだもの。
 次はナニが出るかしら、と、もうひとつのカプセルを開ける。

 ええ。
 わたしのプチ・ショックは、これよ。

 わああぁぁぁん。

 またしても、まーたーしてーも、「MEAT FROG」だったのよおおお。

 どうして?
 10種類もあるのに。
 ダブる確率の方が、はてしなく少ないのに。
 どーしてダブるのよおおお。

「なんだ、同じモノを買ってどうするんだ」
 父にわたしの悲しみは通じない。
「中身がわからないから、同じモノが出る可能性があるんだ」
 プチ・ショックなわたしのかわりに、弟が答える。
「どうして中がわからないんだ。返品できないのか」
「……いるんだ、こーゆーことを言うバカな客が」
 販売業の弟は溜息をつく。
 そう。ガチャガチャを置いている店とかにはよく、手書きで「商品の性質上、同じ商品が出ることや、希望の商品が出ないことがありますが、交換・返品はできません」と書いて貼ってある。
 手書きってことは、店員が書いたんだ。
 おそらく、そーゆークレームがあったから。
 こーゆーカプセル系のおもちゃは、なにが出るかわからない。そーゆールールのゲームなんだ。子どもたちはそれを理解して買い、欲しいものは友だち同士で交換したりして、コミュニケートする。
 そうやって彼らは社会を広げ、また学習するわけだ。
 だが、大人はそれがわからない。「俺様は客だぞ」とふんぞり返り、クレームを出す。
「ダブったからって、子どもは文句を言ってきたりしない。ルールを知った上でたのしんでいるわけだから。でも、その子の親が勝手に難癖をつけてきたりするんだ。子ども社会を理解する気もなく」
 と、弟。
「なにを言ってるんだ? 同じモノを買わされるなんて、変だろう?」
 父にはこーゆー文化があることが、理解できない。わたしも弟も、理解できない人に説明する気にならない。もー、いいよ。ダブったやつは、いつか誰かと交換するために保管しておくよ。
 わたしはばばあだが、ルールは知っている。この悲しみも、値段のうちさ。それをたのしんでこその娯楽なのさ。

 今日のわたしのしあわせと、プチ・ショック。

 なんてかわいい「MEAT FROG」。
 でも他のカエルも欲しいの。誰か交換してえぇぇ。

 

コメント

日記内を検索