異世界ファンタジーだからこそ。@座頭市
2003年9月10日 映画 いつもの映画館の、スクリーンの数は10。
だけど、いつも見たい映画が見られる時間にやっているとは限らない。
天気が悪いから、今日は映画はやめておくかなー、時間もないしなー。
と思ってサイトを見れば、ちょうど1時間後に『座頭市』がある。
窓を開ければ、雲が切れ、青空が少し見えてきていた。
んじゃ、行くかな。すっぴんに日焼け止めクリームだけ塗り込んで、自転車にまたがる。
いつもの映画館のいいところは、服装をかまわずにすむところ。
近所のおばちゃん、の格好のままでうろついていい場所。
梅田だと、こうはいかないからねえ(笑)。
つーことで、『座頭市』鑑賞。
監督・北野武、出演・ビートたけし、浅野忠信、大楠道代、夏川結衣。
わたしは北野武が嫌い。
彼の映画は、趣味に合わない。
それは、過激な暴力表現のせいだ。
北野映画を見たのはわずか数本。ビデオでも多少見たけれど、これは自分的には「映画を見た」に数えていないので、カウントに入れていない。だから、「見た」のはほんの数本でしかないんだが。
見るたびに、「やっぱ合わねえ」と思った。
どうしてそんな表現をするの、演出をするの。生理的に不快。わたしなら、そんな表現はしない。そうしなくても、同じテーマを描くことはできる。
どの作品を見ても、わたしが不快になる点は同じであり、そのたび監督がその表現を好きでやっていることがよくわかった。
よーするに、趣味がチガウんだ。その作品のよい悪いとは別、ただの「好き・嫌い」ってやつ。
わたしは、北野作品が嫌い。
ついでに、役者としての「ビートたけし」も嫌いだぞっと。監督として才能はあるんだろーが、役者としては大根じゃん。なにやってもビートたけしじゃん。演技しないですむ役以外は、作品の邪魔になる程度の実力しかないじゃん。と、思っている。
それでも『座頭市』は気になった。
浅野忠信が好きだということも大きい。浅野くんが時代劇、凄腕の浪人……という設定だけでヨダレもの(笑)。
そして、時代劇なのにタップダンスありのミュージカル仕立てだということに、興味大。
日本の時代劇っていうのは、良質のファンタジーになりうる世界観だと思うんだ。それこそ、『指輪物語』系の異世界ファンタジーね。派手に、エキゾチックに、淫靡に、あざやかに。大風呂敷を広げてエンタメに徹することのできる、すばらしい世界。
そのにおいを感じて、『座頭市』を見に行ったのだわ。
んで。
おもしろかった。
北野映画ではじめて、おもしろいと思えた。
わたしがそう言うと、WHITEちゃんは、
「北野武の“はじめての”エンタメ作品だからね」
と、笑って言った。
そうか、はじめてなのか、北野武。
悪党親分@岸部一徳の支配する宿場町に、ワケ有りの強者たちが偶然集まってきた。
盲目の按摩@ビートたけし、浪人@浅野忠信、親の仇を追う芸者姉妹@家由祐子・橘大五郎たちだ。
浪人は悪党一味の用心棒に就職し、按摩と芸者姉妹、そして町のちんぴら@ガダルカナル・タカは成り行きで悪党一味と敵対、芸者姉妹の仇がどうやらこの町の悪党一味らしく、対決必至。さあ、どうなる?!
ストーリーは単純明快。役者たちの顔を見た段階で、すべてがわかる。
悪役は悪役、善人は善人。死ぬのはこいつらで、生き残るのはこの人たち。全部お約束。
お約束上等、ワンパタ上等、それがとても小気味よい。
お約束ゆえの安心感と、そのうえで漂う緊張感と適度のスパイス、リズムの良さと笑い。エンタメであるということを理解した作り。
とくに気持ちいいのはリズムだわ。ここが「異世界」であり、「観客を愉しませるためにある世界」だということを、考えてあるの。
だから、下手な時代劇が持つ、かったるさとかウザさがない。テンポ良くさくさくすすむ。
わたし、北野武の過剰な暴力が嫌いなんだけど、なるほど、時代劇だとそれが気にならないわ。異世界ファンタジーだからね。現代で無駄に残酷に人が殺されるのは理解できないけれど、時代劇はOK。だってはじめからそういう世界観だから。命が今より軽かった時代。人殺しの武器をふつーに腰に下げて歩いていた時代。この世界観で、それに沿った倫理が展開されていることに、不快はない。
お約束のものを描くのは、あとは技術とセンスだよね。
北野武はつよい人だと思うから、その感性で強く楽しいモノを描いてくれたら、愉快なモノができるよね。
ヒーロー・座頭市は、とにかく強い。だけど普段はすっとぼけたおっさん。目が見えないから、というよりは、ぬけたふうのおっさんだから強いようには見えない。だけどほんとはめちゃ強い、というギャップが正しく「ヒーロー」でいい。
対する浪人、浅野忠信はもー、とにかくかっこいい。いついかなるときも、二枚目、色男。見るからにかっこいい色男が、戦うとなお凄惨にかっこいいのだ。萌え〜。見ていて気持ちいい。
このふたりの「強い漢」たちの決戦には、期待がふくらむさ。
正しいエンタメの姿がそこに。
話題のタップダンス・シーンは、感動。
日本人だから、タップダンスの神髄は理解できないと思うんだけど、そんなこととは別に、感動したよ。
拍手と足拍子って、人間が出す、もっとも原始的な「音楽」だよね。
神に捧げる音であり、人間が人間であるゆえに、感情を持つイキモノであるゆえに、つくる音なんだよね。
音階を持つ楽器による音楽でなく、リズムだけの音楽。
きっと、人間がいちばん最初につくった音楽は、手拍子と足拍子だけのものだったと思う。
その、ヒトとしての根元に響くよ。
タップダンスは。
なまじ、時代劇だから。
タップダンスなんていう文化のない、今よりもシンプルな楽器と音楽しかない時代を表現することに、あえてそれを使ってあるわけだから。
なんというか。
生きるちからを感じる。
ラストのタップ・シーンを見ながら、天神祭を思い出したよ。そして、氏神様である近所の小さな神社のお囃子(天神祭を起源とした、同じお囃子なのよ)を、思い出した。
現代のタップダンスも、神社のお囃子も、まちがいなく根は同じだ。
人間であること。
よろこび、かなしみ、しあわせ、ふしあわせ、感情を持つ、そして生きている、人間であること。
そーゆーものが、現代のタップダンスと、古来からの祭りのシーンの融合に、感じられた。
わーん、こーゆーの、好きー。
一緒に踊りたくなるよー。
どうしてこれは映画なの? 手拍子したくなるんですけど、ヅカのフィナーレみたいに(笑)。
役者たちは適材適所。キャスティングを見た瞬間に「にやり」とする、まんまの使い方、そして演技。
ビートたけしも、大根ぶりが邪魔にならない。彼の持ち味のままでやれる役。しかも、座頭市ってば、顔のアップは最後くらいしかないんだよ? いやあ、わかってるねえ、監督。座頭市のアップなんて、誰も見たくないってば。
つーか、目の見えない座頭市は、顔ではなくカラダ全体で演技をするわけだから、顔を映す必要はないの。それよりも、彼の曲がった背中や、ときに鋭く動く腕や指を映すのが正しいの。
ただ、わたしの目にはおせい@橘大五郎が「美女」には見えなかった。なんだ、あのブス? ごついなー、でかいなー、プロレスラーか? と思って見てたよ……。でもまあ、雰囲気あるから、ハリウッド女優みたいに、顔ではなく雰囲気で美女なんだろーな、と思って見ていたよ。
男だと知って納得。だが、16歳だと知ってびっくり(笑)。
ああ、時代劇…
だけど、いつも見たい映画が見られる時間にやっているとは限らない。
天気が悪いから、今日は映画はやめておくかなー、時間もないしなー。
と思ってサイトを見れば、ちょうど1時間後に『座頭市』がある。
窓を開ければ、雲が切れ、青空が少し見えてきていた。
んじゃ、行くかな。すっぴんに日焼け止めクリームだけ塗り込んで、自転車にまたがる。
いつもの映画館のいいところは、服装をかまわずにすむところ。
近所のおばちゃん、の格好のままでうろついていい場所。
梅田だと、こうはいかないからねえ(笑)。
つーことで、『座頭市』鑑賞。
監督・北野武、出演・ビートたけし、浅野忠信、大楠道代、夏川結衣。
わたしは北野武が嫌い。
彼の映画は、趣味に合わない。
それは、過激な暴力表現のせいだ。
北野映画を見たのはわずか数本。ビデオでも多少見たけれど、これは自分的には「映画を見た」に数えていないので、カウントに入れていない。だから、「見た」のはほんの数本でしかないんだが。
見るたびに、「やっぱ合わねえ」と思った。
どうしてそんな表現をするの、演出をするの。生理的に不快。わたしなら、そんな表現はしない。そうしなくても、同じテーマを描くことはできる。
どの作品を見ても、わたしが不快になる点は同じであり、そのたび監督がその表現を好きでやっていることがよくわかった。
よーするに、趣味がチガウんだ。その作品のよい悪いとは別、ただの「好き・嫌い」ってやつ。
わたしは、北野作品が嫌い。
ついでに、役者としての「ビートたけし」も嫌いだぞっと。監督として才能はあるんだろーが、役者としては大根じゃん。なにやってもビートたけしじゃん。演技しないですむ役以外は、作品の邪魔になる程度の実力しかないじゃん。と、思っている。
それでも『座頭市』は気になった。
浅野忠信が好きだということも大きい。浅野くんが時代劇、凄腕の浪人……という設定だけでヨダレもの(笑)。
そして、時代劇なのにタップダンスありのミュージカル仕立てだということに、興味大。
日本の時代劇っていうのは、良質のファンタジーになりうる世界観だと思うんだ。それこそ、『指輪物語』系の異世界ファンタジーね。派手に、エキゾチックに、淫靡に、あざやかに。大風呂敷を広げてエンタメに徹することのできる、すばらしい世界。
そのにおいを感じて、『座頭市』を見に行ったのだわ。
んで。
おもしろかった。
北野映画ではじめて、おもしろいと思えた。
わたしがそう言うと、WHITEちゃんは、
「北野武の“はじめての”エンタメ作品だからね」
と、笑って言った。
そうか、はじめてなのか、北野武。
悪党親分@岸部一徳の支配する宿場町に、ワケ有りの強者たちが偶然集まってきた。
盲目の按摩@ビートたけし、浪人@浅野忠信、親の仇を追う芸者姉妹@家由祐子・橘大五郎たちだ。
浪人は悪党一味の用心棒に就職し、按摩と芸者姉妹、そして町のちんぴら@ガダルカナル・タカは成り行きで悪党一味と敵対、芸者姉妹の仇がどうやらこの町の悪党一味らしく、対決必至。さあ、どうなる?!
ストーリーは単純明快。役者たちの顔を見た段階で、すべてがわかる。
悪役は悪役、善人は善人。死ぬのはこいつらで、生き残るのはこの人たち。全部お約束。
お約束上等、ワンパタ上等、それがとても小気味よい。
お約束ゆえの安心感と、そのうえで漂う緊張感と適度のスパイス、リズムの良さと笑い。エンタメであるということを理解した作り。
とくに気持ちいいのはリズムだわ。ここが「異世界」であり、「観客を愉しませるためにある世界」だということを、考えてあるの。
だから、下手な時代劇が持つ、かったるさとかウザさがない。テンポ良くさくさくすすむ。
わたし、北野武の過剰な暴力が嫌いなんだけど、なるほど、時代劇だとそれが気にならないわ。異世界ファンタジーだからね。現代で無駄に残酷に人が殺されるのは理解できないけれど、時代劇はOK。だってはじめからそういう世界観だから。命が今より軽かった時代。人殺しの武器をふつーに腰に下げて歩いていた時代。この世界観で、それに沿った倫理が展開されていることに、不快はない。
お約束のものを描くのは、あとは技術とセンスだよね。
北野武はつよい人だと思うから、その感性で強く楽しいモノを描いてくれたら、愉快なモノができるよね。
ヒーロー・座頭市は、とにかく強い。だけど普段はすっとぼけたおっさん。目が見えないから、というよりは、ぬけたふうのおっさんだから強いようには見えない。だけどほんとはめちゃ強い、というギャップが正しく「ヒーロー」でいい。
対する浪人、浅野忠信はもー、とにかくかっこいい。いついかなるときも、二枚目、色男。見るからにかっこいい色男が、戦うとなお凄惨にかっこいいのだ。萌え〜。見ていて気持ちいい。
このふたりの「強い漢」たちの決戦には、期待がふくらむさ。
正しいエンタメの姿がそこに。
話題のタップダンス・シーンは、感動。
日本人だから、タップダンスの神髄は理解できないと思うんだけど、そんなこととは別に、感動したよ。
拍手と足拍子って、人間が出す、もっとも原始的な「音楽」だよね。
神に捧げる音であり、人間が人間であるゆえに、感情を持つイキモノであるゆえに、つくる音なんだよね。
音階を持つ楽器による音楽でなく、リズムだけの音楽。
きっと、人間がいちばん最初につくった音楽は、手拍子と足拍子だけのものだったと思う。
その、ヒトとしての根元に響くよ。
タップダンスは。
なまじ、時代劇だから。
タップダンスなんていう文化のない、今よりもシンプルな楽器と音楽しかない時代を表現することに、あえてそれを使ってあるわけだから。
なんというか。
生きるちからを感じる。
ラストのタップ・シーンを見ながら、天神祭を思い出したよ。そして、氏神様である近所の小さな神社のお囃子(天神祭を起源とした、同じお囃子なのよ)を、思い出した。
現代のタップダンスも、神社のお囃子も、まちがいなく根は同じだ。
人間であること。
よろこび、かなしみ、しあわせ、ふしあわせ、感情を持つ、そして生きている、人間であること。
そーゆーものが、現代のタップダンスと、古来からの祭りのシーンの融合に、感じられた。
わーん、こーゆーの、好きー。
一緒に踊りたくなるよー。
どうしてこれは映画なの? 手拍子したくなるんですけど、ヅカのフィナーレみたいに(笑)。
役者たちは適材適所。キャスティングを見た瞬間に「にやり」とする、まんまの使い方、そして演技。
ビートたけしも、大根ぶりが邪魔にならない。彼の持ち味のままでやれる役。しかも、座頭市ってば、顔のアップは最後くらいしかないんだよ? いやあ、わかってるねえ、監督。座頭市のアップなんて、誰も見たくないってば。
つーか、目の見えない座頭市は、顔ではなくカラダ全体で演技をするわけだから、顔を映す必要はないの。それよりも、彼の曲がった背中や、ときに鋭く動く腕や指を映すのが正しいの。
ただ、わたしの目にはおせい@橘大五郎が「美女」には見えなかった。なんだ、あのブス? ごついなー、でかいなー、プロレスラーか? と思って見てたよ……。でもまあ、雰囲気あるから、ハリウッド女優みたいに、顔ではなく雰囲気で美女なんだろーな、と思って見ていたよ。
男だと知って納得。だが、16歳だと知ってびっくり(笑)。
ああ、時代劇…
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