貧血を起こしたリカコンののち。
 すぐさま電車に乗るのは気分的に不可能だったので、へたりこむこと1時間。
 胃袋に入れられるだけ入れて、体力回復につとめた。

 へんだなあ、わたしちゃんと、食事してから出かけたのよ?
 なのに、幕間にかねすきさんに菓子パンもらって、終演後にお菓子もらって、別れたのちにひとりでごはん食べて。
 これだけ栄養取ってなお、どーして貧血なのよ。
 やっぱ心因性かな……。

 とにかく、貧血は時間さえ経てば治ります。
 いつものことなので、本人は慣れている。治るまでの時間と症状の重さは、そのときでないとわかんないから不安だけど。

 ま、とにかく。
 明るいところでへたるのもかっこ悪いので、そののち映画館へ逃げ込んだ。
 映画館なら、背もたれにどてーっともたれていても、変じゃないから(喫茶店などでそんな坐り方はできないもんよー)。

 ということで、『陰陽師2』。

 監督・滝田洋二郎、出演・野村萬斎、伊藤英明、中井貴一。

 鬼が出る。鬼が都の貴人を食らう。人々は戦々恐々。……ひとつめの要因。
 貴族社会とは別に、市井の人々の間で「神」とあがめられている男、幻角@中井貴一。彼は貧しい人々に「奇跡」を起こして見せていた。……ふたつめの要因。
 右大臣の一人娘、日美子@深田恭子は、鬼の襲来と呼応するように夢遊病になっていた。……みっつめの要因。
 都の宝物、聖剣アメノムラクモに異変が起こる。安倍晴明@野村萬斎はそれについて調べはじめる。……よっつめの要因。
 笛の名手、源博雅@伊藤英明はある夜、彼好みの琵琶を奏でる少年、須佐@市原隼人に出会い、口説く。……いつつめの要因。
 とまあ、とっかかりはこんなもんかな。これらの出来事が、全部ひとつの物語に結びついていく。
 壮大な、神話の戦い。スサノオとヤマタノオロチですよ、アマテラスですよ。コム姫、来年コレやるんだなあ、と関係ないこと考えながら見ちゃったよ。

 よーするに、晴明と博雅のふたりが「あいらびゅ〜ん」「じゅて〜むん」といちゃくらしているついでに、日本を救う話。
 ラヴストーリーとしては、前回ほど派手じゃない。やっぱり恋愛は最初の1回が盛り上がるもんね。「出会い→反発→惹かれ合う→告白→障害→結ばれる」のセオリーは、第1作ならではよねえ。
 2作目だと、「両思い→事件(当て馬登場)→両思い」と、盛り上がりに欠けるんだよなあ。
 そのぶん、女装してみたりなんだりと、変化をつけてるけど。
 こういう恋愛モノって、第1作ですべてやり尽くしていて、続編は全部ただの蛇足と同じことの繰り返しなんだよねえ。

 と、恋愛モノとして語ってみました。
 あながちまちがいでもないしな(笑)。
 晴明と博雅は相変わらずラヴラヴバカップル状態。互いに好き好きオーラ出しまくり。
 だけどそれを自覚していないバカ博雅が、他の人間にふらついたので、晴明が本腰入れて事件に介入って感じ?
 博雅は自分では日美子にのぼせあがっているつもりらしいが、これはほんとにただの一過性の風邪みたいなもんなんだろう。晴明も重くは受け止めず、からかいのネタにしたりしている。
 問題は、須佐の方。日美子のことは笑って流している晴明なのに、博雅と須佐には反応がチガウのね。そっかー、男の子の方に反応するのか……奥さん、大変だなあ、気の多い旦那だと。
 でも、それはあくまで表面的なことで、夫が自分にべた惚れなのをちゃんと理解している奥さんは、余裕で事件を解決していく。ああ、奥さん男前。

 やはりこの映画は、主役ふたりのキャラをたのしんでナンボだと思うのよ。
 奥さんに惚れきってる旦那、奥さんを崇拝の目で見る旦那、を、かわいいと思わなきゃ、やってらんないよねえ。
 崇拝だよ、崇拝。
 自分より高見にいて、自分のことをいつもからかって笑う相手に、惚れきってんだよ。女王様と下僕だよ。
 そんな関係をなんの疑問もなく、屈託なく受け入れてひょうひょうとしているのよ、旦那。晴れ渡った空のようにバカな男だよ。
 そのくせ、このバカ旦那は奥さんの生きる支えであり、その実奥さんの方がより深く旦那に惚れてるのよ。
 この微妙な力関係が、いいよねー。
 そして、野村萬斎と伊藤英明は、ソレを見事に表現しているよねえ。

 晴明を野村萬斎にやらせた段階で、「勝ち」は決定だと思った。
 夢枕獏の安倍晴明は、顔だけのアイドル俳優なんかではできない役だから。
 姿が美しく、存在感のある人でなきゃならないのよねえ。
 あの恥ずかしい夢枕おぢさんが、萬斎晴明を絶賛しているのが、よくわかるよ。いやあ、そりゃアンタ、好きでしょうよ、こーゆー男!(笑)
 『陰陽師』のエンドロールの野村萬斎の舞を見て、「もっと踊ってほしい」というところから『陰陽師2』のストーリーができたってあたり……恥ずかしい……。そこで自然に「女装」に行きつくところも……。そーだよなー、夢枕おぢさん、そーゆーの好きだったよなー。
 夢枕が小説で描いてきた「耽美な美青年」の現実版が、野村萬斎なんだよね。
 わかるわかる(笑)。
 彼は顔だけ見るとべつに美形ではないし、女装したって気持ち悪いだけだ。
 しかし、ときおりゾクッとするような妖艶な顔をする。これがすごい。
 この映画の最後、目覚めるときの晴明の表情にはくらくらきた。顔の作りとは関係なく、彼は美貌の男だと思う。耽美っちゅーのは彼のためにある言葉だと思う。

 一方、いとーちゃん。
 最初、このキャスティングは不満だったんだよねえ。
 原作ファン(マンガは読んでないんで、あくまでも原作)としては、イメージがちがいすぎたから。
 もっとごつくて不細工な、横幅のある岩のような男を想像していたんだわ。武人だから。武骨な男だから。無邪気な男だから。そのくせ、笛の名手で繊細な心を持つところが、ツボだったのよ。
 まだ、NHK制作の駄ドラマの杉本哲太の方が、イメージに合っていた。
 いとーちゃんじゃ、優男過ぎる。二枚目過ぎる。若過ぎる。
 とまあ、不安材料だらけ。
 それでもフタを開けてみれば、許容範囲だった。いとーちゃんが二枚目に作ってないのが、いい感じ。
 そして彼は、この間の『ぼくの魔法使い』で名をあげたからねえ。ただの二枚目俳優でしかなかっただけに、あの「みったん」役は、見直させてもらったよ。
 今回の映画では、その点安心して見たよー。二枚目俳優の看板は下ろしっぱなしの潔いバカ男ぶり。いとーちゃん、いい役者ぶりだー。

 と。
 主役ふたりのことしか、語る気はなし。
 映画の内容?
 それはねー、ははは。
 やっぱ日本映画はショボいですなっ。の、ひとことで終わってしまいます。
 CGや特殊メイクの貧相さ。ああ、お金かかってないのねー。セットのちゃちさ。ああ、お金かかってないのねー。
 ストーリーは、他のメディアでならもっと盛り上げることができた内容だと思う。だが、日本映画でやるには悪い面ばかり目立った感じ。
 小説やマンガ、アニメでやったら、きっとすごかったろうなあ。もしくは、ハリウッド映画なら。
 日本映画は、コレが限界か……。
 都のショボさ、人口の少なさは、『HERO』を見たばかりだとキビシイわ……当時の人口はどんなもんだったの? 史実なんか無視して壮大にした方が盛り上がったんじゃないの?
 宮廷と個人の屋敷の差が、ほとんどなかったよ……あれが帝都だなんて、かなしすぎる。
 背景のちゃちさを、役者が必死に埋めている感じ。

 その昔、NHKで『壬生の恋歌』という新撰組の連続ドラマがあってな。
 最終回で主役の三田村邦彦が、「ど…

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