『SIREN』の医者と神父の話。

 萌えポイントだった、ひたすらクールでダークなかっこいい医者と、ヘタレでどーしよーもない神父。何故かこのふたりは双子なのだ。しかも、別の家で別の環境で育った「光と影」の双子なのだ。
 このふたりの最大の萌えは、「互いを名字にさん付けで呼ぶ」ことなんだわ……。
 「牧野さん」「宮田さん」って、名前にさん付けで呼ぶのよ。双子なのに。同じ顔なのに。ですます調で、他人行儀に話すのよー。双子の兄弟だってことは、お互い知ってるくせに。

 プレイヤー・キャラがどんどん死んでいく物語だから、医者にしろ神父にしろ、死ぬ運命にあることは予想が付く。
 問題は、その死に方だ。
 とくに医者は、絶対に死ぬはずだ。生きて幸福を掴むよーなキャラじゃない。ここまで悪を臆面なく実行できる強い男は、それに相応しい壮絶な最期を遂げてもらわなければ。
 神父の方は、生き残っても死んでも、どっちでもいいし、どっちでもアリだろうと思うけどな。

 最後までプレイして、彼らの最期を確かめた。姉弟で意見交換もさんざんしたし、ネットでの意見や事実も多少は読んだ。

 そのうえで、思うんだよね。
 医者と神父の最大のトリック、アレ、「なかったこと」にしていいよね? と。
 発売からひとつき経つからもう書いちゃうけど、医者と神父、「入れ替わった」ことが「真相」として「事実」として、語られてるよね。
 たしかにそれは事実なのかもしれないが、やっぱりそれは、わたし的には「認めたくない」のだわ。
 理由はひとつ。
 「意味がない」から。

 入れ替わる意味が、わからないんだもの。
 入れ替わらなくても、医者は医者のままやればよかったじゃない、なにもかも。神父の身ぐるみ剥いで変装する必要性が理解できない。変装して、誰を騙したかったんだ?
 制作側のトリックとしか思えない。
 「ほーら、入れ替わってるんだぞー、気づかなかっただろ? 引っかかっただろ?」てな。

 医者はいいんだ。はじめからめちゃくちゃ強い男だから。
 問題は、神父。
 とことんヘタレな、心優しき男。めそめそおどおど、無力で後ろ向き。
 この男が、なにもしないまま死ぬのは、物語として納得できないの。
 いちばん肝心の場面で、医者と入れ替わっていたんじゃあ、神父というキャラの存在意義は「医者と同じ顔をしている」だけになってしまう。
 神父は、変わらなければならない。
 なにもできないから、とあきらめるのではなく、「できること」をやらなければならない。
 神父が物語を通して「成長」しなければ、意味がないと思うんだ。
 それが「物語のルール」ってもんだ。

 実際、ふたりが入れ替わったという事実さえなければ、すっきりするんだけどな。

 医者は、屍人の巣で、自殺した。
 「俺の役目は終わった」と。
 人道からはずれようがどうしようが、この世界を「救う」ために力の限りを尽くした強い男が、自決した。
 彼の最期の言葉は、「兄さん」。
 それまで「牧野さん」と名字で呼んでいた双子の兄を、はじめてそう呼んだ。
 兄の目の前で、自殺した。

 神父は、自覚した。
 双子の弟が「俺の役目は終わった」と目の前で自殺した。
 そのことによって、自覚したんだ。己の「役目」を。自分にしかできないことがある。自分にしか、責任を取れないことがある。と。
 「化け物の役はごめんだ」と言っていた弟の死体を焼き、屍人として復活しないようにしてやる。
 弟の遺した武器を握り、戦う。それまで一度も戦おうとしなかった男が、戦いはじめる。
 神父は、死んだ医者の意志と魂を受け継いだ。おそらくは、その罪をも。自分がヘタレていた間、たったひとりで手を汚し、戦い続けた医者の業をも、神父は背負う。
 神父の前に、屍人となった看護士姉妹が現れる。医者がその手で殺した美しい姉妹。屍人姉妹は、神父に「せんせい」と呼びかける。医者をそう呼んでいたように。
 かつて、医者がそうしたように、神父もまた、姉妹をその手で殺す。
 そののちに、神父は最終武器「宇理炎」を使って己の役目を果たす。自分の命と引き替えに、迷える人々を救う。その昔、彼の父が儀式の失敗をその命で償ったように。
 死にゆく神父を迎えにきたのは、あの看護士姉妹だ。生前の美しい姿で、「せんせい」を迎えにやってきた。
 そう、彼女たちを殺すときに医者は言った。
「さすが双子だな。死に顔も同じだ」
 その言葉通りに、神父の死に顔もまた、双子の弟・医者と同じはずなのだ……。

 てな。
 医者が神父を殺して入れ替わる、意味がわからないんだもんよ。
 ふつーに、素直に、医者は自殺、それによってヘタレ神父が成長、雄々しく戦って散る、でいいじゃん。
 看護士姉妹が神父を「せんせい」と呼ぶのは、医者の「さすが双子だな。死に顔も同じだ」の決め台詞(実際、この台詞には腰が抜けた。かっこよすぎー)を受けているのよー。
 それなら、伏線全部拾った気持ちいい物語になるじゃん。
 医者と神父の入れ替わりネタは、制作者のあざといトリックにしか思えない。入れ替わりに気づかない方が、話がちゃんと通るんだもの。

 また、腐女子的にもな。
 医者と神父、おいしすぎるっつの。
 最期の台詞が「兄さん」って……神父が兄だったのか!!(笑)

 とにかく、医者がかっこよすぎ。
 実際、操作してても強いしさ。打撃系武器での最強キャラだ。

 かっこいいというと、学者も一瞬だけかっこよかったな。
 屍人の巣の水鏡ですか、あそこに生存キャラ全員集まるときの、ムービー。
「遅かったか!!」
 と、叫びながらの登場。えっ、アンタ生きてたの? もっと先の話で神父がアンタの武器持ってたから、てっきりアンタも医者みたいに死んで、武器を神父に託したんだと思ってたよ。
 しかも「遅かったか!!」ってことは、なにもかも知っていて、この場所を目指していたってことよね? 求道女の野望を阻止するために。
 この一瞬だけは、かっこよかったなあ。
 そのあとも、あたりまえにリーダー面して、高校生少年に命令していたし。ヘタレてる神父のことはあっさり見捨てるし(笑)。

 なのに、オチがアレだもんな……。
 学者の最期は語りません。愉快だから、あえて伏せる。
 一瞬とはいえ、主人公のように見えたあとだったから、すごいギャップだったよ、おじさん。

 結局、主人公は高校生少年だったんだなあ。
 彼の「バトロワ?」的ラストは、かっこよかったよ。

 それにしても、ダークな物語。
 13人もプレイヤー・キャラがいて、生き残ったのはたった1人、生死不明が3人、残り全員悲惨としか言えない最期って……なんちゅー暗いゲームだ。

 ホラーとしては、ほとんどこわくありませんでした。
 アクションゲームとして、スリルは山ほど味わったけど。

 舞台が昭和の香りのする日本だったのが、いちばんの勝因だなー。
 やっぱ日本はいいよ。
 建物とか、こわいからさー。
 屍人の巣なんて、マップ見るなりわくわくしちゃった。いちばんたのしかったな。

 これからも、日本を舞台にしたゲームが発売されて欲しい。

 つーことで、なんといっても『零』。
 腐女子萌えはできそーにないゲームだが(笑)、ホラーとしてはやっぱNO.1でしょう。
 日本が舞台って、それだけでも恐怖感UP。

 こわいよー。
 こわいよー。

 まだ最初しかやってないけど、めちゃくちゃこわいよー。

 この演出力は、見習いたいわ。
 そうか、ひとはこんなふうに怖がらせられるのか…

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