犬は人につき、猫は家につく。
我が家の猫は、わたしにだけなついている。
わたしと猫は狭く汚いこの家で、とりあえずふたりっきりで暮らしている。
抱っこされるのは大嫌いだけど、わたしの膝には乗ってくる。そのまま眠ってしまって、降りない。
わたしがトイレに入ると、入口までついてくる。長く(つっても数分だけどさ)入っているとドアを掻いたり鳴いたりと大騒ぎをするので、いつもドアを少し開けてある。顔を見たら安心するのか、隙間から目が合うとそれでおとなしくなる。あるいは中に入ってきて、便器に坐るわたしの膝に乗ったりする。
風呂に入っていても同じ。必ず1度はドアの前で大騒ぎをする。風呂のドアの開け方だけは何故か知っているので、勝手に開けて入ってくる。水が大嫌いだから、すぐに逃げるように出て行くけれど。わたしが長く入っていると、何度も勝手にドアを開けて、顔をのぞかせる。ドアの前でうるさく鳴く。
夜はわたしのベッドの上で眠る。1時間おきくらいにわたしの顔をのぞきに来る。
早朝のいちばん冷え込む時間になると、眠るわたしの頬を前足でつついてくる。肉球がぺちゃっと頬に押しつけられる。「いつもの体勢」というのがあり、わたしにそれを要求する。わたしの腋を枕にして、布団に肩まで入って眠る。いちばん寒い時間は、こうやって暖を取る、らしい。
わたしが出かけるときは、玄関で大騒ぎをする。つっかけを履くだけなら反応しないが、下駄箱から靴を出して履くと必ず大騒ぎする。「どこへ行くんだ!」「おれも連れて行け!」と。後ろ足で立ってドアに前足をかけ(直立猫。けっこう長い。でかい)、ぎゃーぎゃー鳴きわめく。
とまあ、猫とわたしはそれなりに仲良く暮らしている。
猫はわたしにだけなつき、わたしの顔の見えるところにしかいない。わたしがいなくなることを、いつもおそれている。
しかし。
……しかし、だ。
わたしはよく、猫を親の家に連れて行く。
出かけるときなどは、親の家に猫を預けていく。猫にとって、わたしの親の家はもうひとつの家である。
親の家に連れて行くと、猫の態度は豹変する。
人間きらい。
触られるのきらい。
抱っこなんてもってのほか。
エサをよこせ。水をよこせ。でも触るな。
わたしの家で暮らしているときは、わたしの膝が定位置なのに。そうでなくても、わたしの顔の見えるところにしか、いないのに。
他の人にも触らせないが、わたしにも一切触らせない。
しばらく預けていて、数時間ぶりとか何日ぶりとかにわたしの顔を見ても、ぜんぜん知らんぷり。
わたしの顔を見ても、ちっともうれしそうにしない。
呼んでも反応なし。
親の家に行くと、わたしにも他の家族にも、猫の態度は一律同じ。
「知っている人」
という認識。
知っている人だから、危害は加えてこない。知っている人だから、要求すればエサをくれる。
……という認識。
どういうことっ?!
親たちは、信じないのよ。
「家では、猫はわたしの膝から降りないのよ。いつも一緒に寝ているのよ」
「嘘でしょ。だって、アンタが触っても逃げるじゃない。いやだって言うじゃない。ちっともなついてないじゃないの」
家ではなついてるのよーっ。
わたしのそばから離れないのよーっ。
家とよそでは態度がチガウって、どういうこと、猫よ?!
猫は、家にいるときに限り、わたしになついている。
犬は人につき、猫は家につく。
……ねえ、ひょっとして、猫にとってわたしは「家の一部」ですか?
猫の大好きな「自分の家」の、「お気に入りの場所」みたいなもん? 動いて、エサをくれたりする「場所」だと思っている??
だから「家」以外の場所では、わたしのことは「お気に入り」とは認識されない?
今も猫は、膝の上にいる。
重い。
我が家の猫は、わたしにだけなついている。
わたしと猫は狭く汚いこの家で、とりあえずふたりっきりで暮らしている。
抱っこされるのは大嫌いだけど、わたしの膝には乗ってくる。そのまま眠ってしまって、降りない。
わたしがトイレに入ると、入口までついてくる。長く(つっても数分だけどさ)入っているとドアを掻いたり鳴いたりと大騒ぎをするので、いつもドアを少し開けてある。顔を見たら安心するのか、隙間から目が合うとそれでおとなしくなる。あるいは中に入ってきて、便器に坐るわたしの膝に乗ったりする。
風呂に入っていても同じ。必ず1度はドアの前で大騒ぎをする。風呂のドアの開け方だけは何故か知っているので、勝手に開けて入ってくる。水が大嫌いだから、すぐに逃げるように出て行くけれど。わたしが長く入っていると、何度も勝手にドアを開けて、顔をのぞかせる。ドアの前でうるさく鳴く。
夜はわたしのベッドの上で眠る。1時間おきくらいにわたしの顔をのぞきに来る。
早朝のいちばん冷え込む時間になると、眠るわたしの頬を前足でつついてくる。肉球がぺちゃっと頬に押しつけられる。「いつもの体勢」というのがあり、わたしにそれを要求する。わたしの腋を枕にして、布団に肩まで入って眠る。いちばん寒い時間は、こうやって暖を取る、らしい。
わたしが出かけるときは、玄関で大騒ぎをする。つっかけを履くだけなら反応しないが、下駄箱から靴を出して履くと必ず大騒ぎする。「どこへ行くんだ!」「おれも連れて行け!」と。後ろ足で立ってドアに前足をかけ(直立猫。けっこう長い。でかい)、ぎゃーぎゃー鳴きわめく。
とまあ、猫とわたしはそれなりに仲良く暮らしている。
猫はわたしにだけなつき、わたしの顔の見えるところにしかいない。わたしがいなくなることを、いつもおそれている。
しかし。
……しかし、だ。
わたしはよく、猫を親の家に連れて行く。
出かけるときなどは、親の家に猫を預けていく。猫にとって、わたしの親の家はもうひとつの家である。
親の家に連れて行くと、猫の態度は豹変する。
人間きらい。
触られるのきらい。
抱っこなんてもってのほか。
エサをよこせ。水をよこせ。でも触るな。
わたしの家で暮らしているときは、わたしの膝が定位置なのに。そうでなくても、わたしの顔の見えるところにしか、いないのに。
他の人にも触らせないが、わたしにも一切触らせない。
しばらく預けていて、数時間ぶりとか何日ぶりとかにわたしの顔を見ても、ぜんぜん知らんぷり。
わたしの顔を見ても、ちっともうれしそうにしない。
呼んでも反応なし。
親の家に行くと、わたしにも他の家族にも、猫の態度は一律同じ。
「知っている人」
という認識。
知っている人だから、危害は加えてこない。知っている人だから、要求すればエサをくれる。
……という認識。
どういうことっ?!
親たちは、信じないのよ。
「家では、猫はわたしの膝から降りないのよ。いつも一緒に寝ているのよ」
「嘘でしょ。だって、アンタが触っても逃げるじゃない。いやだって言うじゃない。ちっともなついてないじゃないの」
家ではなついてるのよーっ。
わたしのそばから離れないのよーっ。
家とよそでは態度がチガウって、どういうこと、猫よ?!
猫は、家にいるときに限り、わたしになついている。
犬は人につき、猫は家につく。
……ねえ、ひょっとして、猫にとってわたしは「家の一部」ですか?
猫の大好きな「自分の家」の、「お気に入りの場所」みたいなもん? 動いて、エサをくれたりする「場所」だと思っている??
だから「家」以外の場所では、わたしのことは「お気に入り」とは認識されない?
今も猫は、膝の上にいる。
重い。
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