雪組バウ公演『送られなかった手紙』鑑賞。

 …………先に観ていたWHITEちゃんから、メールが来ていた。

「まちかめぐるに、おなかいっぱい」

 まちかめぐるか……。

 最初にこの公演のポスターを見たのは、いつだっけか。けっこう早くに、ムラにいたときに張りだしてあるのを見た。
「かっこいいじゃん」
「壮くんきれー」
 てな会話をし、
「あ、またチャルさん出てんだ。太田芝居にはチャルさん必須かな」
「てか、アモナスロも出てるから、『王家』コンビじゃん」
 てな会話をし、さらに、
「他の出演者は……あ、まちかめぐる」
「まちかめぐるだー」
 てな会話をし、その場を後にした。

 後にしたあとで。

「で、ヒロイン誰?」
「さあ?」
「2番手は?」
「さあ?」

 なにやってんですか、わたしたち!
 専科さんとまちかめぐるだけしか確認しないなんて!
 てかわたしたち、じつはまちかめぐるファンだろう?!

 てなやりとりがあっただけにな。
 WHITEちゃんは、

「緑野があんまり『まちかめぐる』『まちかめぐる』って言うから、アタシまでまちかめぐるしか目に入らなくなってきたよ……どうしてくれるのよ」

 と、嘆いてます。いいじゃん、死なばもろともだよ。まちかめぐる、うまい人なんだから、ファンしても罰は当たらないよ? ……たぶん。

「まちかめぐる……ああ、まちかめぐる……」

 WHITEちゃんはうわごとのよーに、つぶやく。
 えーと。
 主演は、いっぽくんだよねえ?

 まちか氏以外に、感想はないんかい(笑)。

 いい噂は耳に入ってこない、この公演。
 わたしとしてはなんの期待もせず、「きれーな人たちを間近で見られればそれでいいや」な気分で出かけました、最前列ドセンター席。

 えー、感想をひとことで言うと。

 つまらなかったです……。

 舞台は19世紀後半の帝政ロシア。名門貴族の子弟ドミトリー@いっぽくんの魂の安息を求めた遍歴っちゅーか、半生を描いた物語。

 物語は、破綻していません。
 ちゃーんとふつーに書かれている。
 しかも、お貴族様で、天才で、恋があって横恋慕やら不倫があって、サロンやらパーティがあって、謀略があって反乱があって戦闘シーンがあって、友情があって家族関係云々があって、と、盛りだくさん。
 よくこれだけのネタを詰め込んだよな、と思うくらいサービスたっぷり。

 なのに、物語はめちゃくちゃ平板。

 盛り上がるとこって、どこですか?

 これだけいろんなことか起こって、いろんなシーンがあるというのに、この退屈さはなんだろう。
 壊れているってわけでもないのに、大して複雑なプロットでもないのに、このすっきりしなささはなんなんだろう。

 よくできているのに、ただ、退屈。
 とりたてて大きな欠陥があるわけじゃないのに、つまらない。

 最後まで観て、思ったよ。

 で、なにがやりたかったの?

 外側だけをなぞった物語、なんだと思った。
 ドミトリーという「天才」の一生の物語の、あらすじだけ書いたらこうなったんだろう。

 なにしろあらすじだから、内面までは触れていない。
 こんなことがありました、次はこうなりました、そしてこんなことになりました。
 出来事の箇条書きですね。

 そりゃつまんねーわ、そんなもん。

 いくらダンスや歌でつないでいっても、派手になりようがない。盛り上がるはずがない。
 あらすじじゃあ。

 あらすじではなく、「物語」にするためには、もっと練らなきゃだめだよ。
 ドミトリーという人物を、ちゃんと書き込んでくれよ。
 彼の年表を観たいわけじゃないんだ。彼の心の動きを知りたいんだ。

 まず、彼が「天才詩人」であることを大きく打ち上げる。
 具体的に世間様にどう影響を与えているのか、解説台詞じゃなくて「出来事」で示してくれ。
 それゆえに「危険人物」として政府からマークされるんだっていう流れを打ち出してくれ。

 主人公の外側の設定を、はじめに教えてくれないと、納得できないよ。

 なるほど、これだけ影響力を持った人物なら、そりゃ権力者には嫌われるし、また彼に嫉妬し憎むモノも出てくるわな、と。

 外側を描いたら次は内面だ。
 ドミトリーがなにを悩み、なにに飢えているのかを象徴的に挿入。
 そりの話は最初からやってヨシ。なにかにつけて持ち出してヨシ。テーマ部分の伏線ってのはそれくらいするもんだ。

 そこまでやった上で、残った部分で「年表」をやればいいんだ。

 なんか、本末転倒している気がする。
 「年表」を描くのが目的で、その言い訳に主人公の内面に簡単に触れただけ、みたいな。
 ストーリーが先に決まっていて、心の辻褄が合わなくてもとにかくその決まったストーリー通りに展開させなくてはならないテレビドラマみたい。

 「心」の動きが書き込まれていないまま、「年表」を正しく消化し、ENDマーク出ました、みたいな退屈さ。

 あー、長かった……。
 どこへ向かっているのか、なにがしたいのかわからない、盛り上がりもないまま1幕が終わり「えっ、これで幕?」、2幕もそのままのテンションでまただらだら進み、そのくせラストのドミトリーの伯父@ヒロさんは「ええっ、そんな伏線どこにっ?!」の唐突な告白をしてEND。
 長かったよ……。

 その間、やたら目につくまちかめぐる氏。
 ああ、センターで踊るまちか氏を目にする日が来ようとは。長生きはするもんですな。

 とりあえず、いっぽくんはきれいでした。

 とってもきれいでした。
 リヤカー……じゃなくて、そのよーなものを使ってのダンスシーンはいちばん好き。
 かっこいー。

 ……でも、この芝居は彼には荷が重すぎたと思います。
 あらすじでしかない脚本をふくらますことができるほど、彼に芝居力はありません。

 あてがきしてやれよ、演出家。

 すばらしかったのは、またしてもチャルさんです。
 いやー……すごかった……。

 やンらすぃ……。

 なにしろ前補助センターに坐ってましたから、わたし。
 チャルさんが軍服姿で、わたしのすぐ鼻の先で女をタラシてみせてくれたときには、ずきゅんとキました(笑)。
 ぐわあ、すごすぎ。シャレになんねー。
 この男になら、そりゃ女は惚れるわ……。しみじみ。

 マーリヤ@晴華みどりちゃんが素敵でした。堂々たるヒロインぶり。
 なんでもっとちゃんと恋愛モノにしてくれないんだろうね、演出家。一代記なんぞより、どっぷり本気の恋愛モノの方が客のニーズは高いのに。
 結局まともなラヴシーンひとつナシかい。
 美男美女が主演してるってのにさ。

 ナターリヤ@涼花リサちゃんは、とっても好みでした。
 あのマンガにできそうな顔はいいなあ。わたしにでも似顔絵が描けそう。

 いづるんは……あまりに地味でかなしい。
 埋没してる……。
 色物の方が得意だよね、いづるん。
 ふつーの役をやると、埋没して見えなくなるんだよ……しょぼん。

 そして、なかなかツボだった皇太子@茜ちゃんと、腐女子話をしたいので、次の欄へ続く。

 

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