踊る首相と。@ラブ・アクチュアリー
2004年2月18日 映画
世界は愛に満ちている。
そう信じさせてくれる物語。
『ラブ・アクチュアリー』。
この映画を好きなことは、わかっていた。『ノッティングヒルの恋人』も好きだし、『ブリジット・ジョーンズの日記』も大好きだ。リチャード・カーティスの描くラヴストーリーはツボにはまる。
特別なんかじゃない、ふつーの人が、ふつーの人生の中で、恋に走り出す瞬間。その輝き。それをせつないくらい「特別に」描いてくれる。
そして、複数の主人公の物語が同時進行し、最後にひとつに重なる物語、ってのも、大好きなんだよね。プロットの緻密さを必要とするから。
監督・脚本リチャード・カーティス、出演ヒュー・グラント、リーアム・ニーソン、エマ・トンプソン、アラン・リックマン。
就任早々、ちよっと太めな秘書(つっても雑用係)の女の子に恋してしまう独身のハンサム首相@ヒュー・グラント。
最愛の妻を亡くした男ダニエル@リーアム・ニーソン。妻の死もショックだが、義理の息子とのつきあい方でも困惑の日々。
高嶺の花への片恋に悩むダニエルの妻の連れ子のサム@トーマス・サングスター、多感な11歳。
弟に恋人を取られ、南仏へ傷心旅行に出かける作家ジェイミー@コリン・ファース。
南仏のコテージでジェイミーのメイドをするオーレリア@ルシア・モニス。英語はまったく理解不能。
会社社長のハリー@アラン・リックマンは部下の美女にモーションをかけられどきどき。
しっかり者の主婦カレン@エマ・トンプソンは、夫ハリーの浮気心に気づき、ひとり号泣する。
入社以来2年7ヶ月同僚カール@ロドリゴ・サントロに片想いしているOLサラ@ローラ・リニー。
親友の新妻ジュリエット@キーラ・ナイトレイに片想いしているマーク@アンドリュー・リンカーン。
てな具合に、複数の人々の「愛」を取り巻く問題が動き出す。全部で19人だよ、メインキャラ。……多い(笑)。
……残念ながら、プロットが緻密だとはあまり思えなかった(笑)。かなり力技な感じ。
それぞれのストーリーも、浅いというか、全体をきちんと描ききっていない印象を受けた。
だけどわたし、オープニングからエンディングまで、ほぼ泣きっぱなしだったんですが(笑)。
かなり、ツボに合う作品なんだよねえ。
19人の主人公たちの抱える「愛の問題」はどれも、アイディア一発勝負に思える。制作者側のね。
ふつーなら、このネタひとつでは映画にはならないから、もっとたくさんネタを出して、味付けして仕掛けをして、エピソード作って、いろいろやったうえではじめてまともな「ストーリー」になりえるよーな、いちばん最初の「ささやかなネタ」でしかない。
その最初の「ささやかなネタ」ひとつだけをたくさん集めて、力技で1本の映画にしてしまった。
あるじゃん、主人公と相手役だけ考えて、「このシーンのこの台詞だけ」思いつくっての。
でも、1シーンと1台詞だけじゃあ、「物語」にならない。同人誌ならそれだけで4ページだけの雰囲気マンガになったりするけど、商業出版物ではそれは通らない。
キャラクタの背景を作って書き込んで、主役以外の人たちにも全員人生を考えて、起承転結のある物語を作って、そのなかにはじめて、「このシーンのこの台詞だけ」を盛り込むことができる。1行の台詞を言わせるためだけに、5000行の「物語」を書かなきゃいけない。
この映画に感じたのは、「このシーンのこの台詞だけ」を山ほど集めたんだなってこと。
主人公たちひとりひとりの話は、それだけでは「1本の映画」にはなりえない。ネタ一発勝負だからだ。
だけど、そのネタ一発、「このシーンのこの台詞だけ」をよくこれだけ魅力的にひとつの映画にまとめたな、と感心する。……力技だけど。
てゆーか、そのネタ一発に、とても破壊力があるものが多いんだ。そのネタだけで、「勝った」って感じの。
親友の妻を愛した男。
親友のために「最高の結婚式」をプロデュースし、周囲がお祭り気分のときもずっと裏方の顔でビデオカメラを回し続ける。心から、ふたりの幸福を祈る。
そうしながらも。
彼がファインダー越しに追い続けるのは、花嫁ただひとり。
愛した女が最も美しい瞬間の笑顔を撮り続ける。最も幸福な日の笑顔を撮り続ける。
愛した女が最も美しく、最も幸福なときは、彼女が永久に彼を愛さなくなる日。
彼が彼女を失うその日、彼女はまぶしいほどに美しい。
身内と恋人に裏切られた男。
男は小説家。「言葉」を使うプロ。だけど愛に傷ついた彼はあえて、「言葉の通じない」外国の別荘でひとり執筆に没頭する。
そして彼は、言葉の通じない異国の女性を愛する。「言葉」を持たない男と女は、それぞれの母国語で愛を口にする。相手に通じないことを知りながら。
帰国した男は、女の国の言葉を学びはじめる。……馬鹿げてる。だって彼女とは、愛の言葉ひとつ、かわさなかった。確かなものなんて、なにもない。
自嘲しながらも男は探すんだ。彼女と自分をつなぐ「言葉」を。
ネタ一発勝負。
でも、このネタひとつで、十分泣けるんですけど。
きちんと1本の物語に作ってみたくなるくらい。
登場人物すべての物語は、クリスマスの夜にひとつの昇華を遂げる。
クリスマスは、愛するひとと過ごしたい。
素直になりたい。
伝えたい。
マライア・キャリーの「恋人たちのクリスマス」が流れるなか、愛することのよろこびも、しあわせも、いたみもかなしみもくるしみも、わたしかもしれないあなたの姿になって、両手を広げている。
抱きしめるために。
すべてを。
もう少し作り込んであったら、もっと好きなんだけど。力技感があるし。
だけど今のままでも、わたしは十分大好き。
ヒュー様の話がいちばん、どーでもよかったよーな。いちばん、薄っぺらいというか。
でも、一目惚れしちゃった女の子が「ちょっと太め」だと、わかっていない男、っての、いいなあ。
彼の中では、彼女は絶世の美女なんだよね(笑)。だから、他の人に「太めの女の子」だと言われると「……そうだったかな?」てことになる。
日本ではあり得ない「首相」。若くてハンサムで独身だよ。恋しちゃうんだよ。官邸で腰振って踊っちゃうんだよ。
あの演説も好きです(笑)。
父と息子ネタに弱いわたしは、ダニエルとサムの物語も好きだー。
父と子というより、祖父と孫に近い年齢差で、真剣に親子を……ある意味対等な男同士の友人として、先輩と後輩として、向かい合うふたりが愛しい。
愛を語る、不器用な男たち。じじいに近いおっさんと、11歳の少年。
ハリーにしろカレンにしろサラにしろ、みんなみんな、不器用で、それでも精一杯にその手をのばしていて、愛しい。
決してひとつなんかではない、愛のかたち。愛のすがた。
大丈夫。
世界は愛であふれている。
そう信じさせてくれる物語。
『ラブ・アクチュアリー』。
この映画を好きなことは、わかっていた。『ノッティングヒルの恋人』も好きだし、『ブリジット・ジョーンズの日記』も大好きだ。リチャード・カーティスの描くラヴストーリーはツボにはまる。
特別なんかじゃない、ふつーの人が、ふつーの人生の中で、恋に走り出す瞬間。その輝き。それをせつないくらい「特別に」描いてくれる。
そして、複数の主人公の物語が同時進行し、最後にひとつに重なる物語、ってのも、大好きなんだよね。プロットの緻密さを必要とするから。
監督・脚本リチャード・カーティス、出演ヒュー・グラント、リーアム・ニーソン、エマ・トンプソン、アラン・リックマン。
就任早々、ちよっと太めな秘書(つっても雑用係)の女の子に恋してしまう独身のハンサム首相@ヒュー・グラント。
最愛の妻を亡くした男ダニエル@リーアム・ニーソン。妻の死もショックだが、義理の息子とのつきあい方でも困惑の日々。
高嶺の花への片恋に悩むダニエルの妻の連れ子のサム@トーマス・サングスター、多感な11歳。
弟に恋人を取られ、南仏へ傷心旅行に出かける作家ジェイミー@コリン・ファース。
南仏のコテージでジェイミーのメイドをするオーレリア@ルシア・モニス。英語はまったく理解不能。
会社社長のハリー@アラン・リックマンは部下の美女にモーションをかけられどきどき。
しっかり者の主婦カレン@エマ・トンプソンは、夫ハリーの浮気心に気づき、ひとり号泣する。
入社以来2年7ヶ月同僚カール@ロドリゴ・サントロに片想いしているOLサラ@ローラ・リニー。
親友の新妻ジュリエット@キーラ・ナイトレイに片想いしているマーク@アンドリュー・リンカーン。
てな具合に、複数の人々の「愛」を取り巻く問題が動き出す。全部で19人だよ、メインキャラ。……多い(笑)。
……残念ながら、プロットが緻密だとはあまり思えなかった(笑)。かなり力技な感じ。
それぞれのストーリーも、浅いというか、全体をきちんと描ききっていない印象を受けた。
だけどわたし、オープニングからエンディングまで、ほぼ泣きっぱなしだったんですが(笑)。
かなり、ツボに合う作品なんだよねえ。
19人の主人公たちの抱える「愛の問題」はどれも、アイディア一発勝負に思える。制作者側のね。
ふつーなら、このネタひとつでは映画にはならないから、もっとたくさんネタを出して、味付けして仕掛けをして、エピソード作って、いろいろやったうえではじめてまともな「ストーリー」になりえるよーな、いちばん最初の「ささやかなネタ」でしかない。
その最初の「ささやかなネタ」ひとつだけをたくさん集めて、力技で1本の映画にしてしまった。
あるじゃん、主人公と相手役だけ考えて、「このシーンのこの台詞だけ」思いつくっての。
でも、1シーンと1台詞だけじゃあ、「物語」にならない。同人誌ならそれだけで4ページだけの雰囲気マンガになったりするけど、商業出版物ではそれは通らない。
キャラクタの背景を作って書き込んで、主役以外の人たちにも全員人生を考えて、起承転結のある物語を作って、そのなかにはじめて、「このシーンのこの台詞だけ」を盛り込むことができる。1行の台詞を言わせるためだけに、5000行の「物語」を書かなきゃいけない。
この映画に感じたのは、「このシーンのこの台詞だけ」を山ほど集めたんだなってこと。
主人公たちひとりひとりの話は、それだけでは「1本の映画」にはなりえない。ネタ一発勝負だからだ。
だけど、そのネタ一発、「このシーンのこの台詞だけ」をよくこれだけ魅力的にひとつの映画にまとめたな、と感心する。……力技だけど。
てゆーか、そのネタ一発に、とても破壊力があるものが多いんだ。そのネタだけで、「勝った」って感じの。
親友の妻を愛した男。
親友のために「最高の結婚式」をプロデュースし、周囲がお祭り気分のときもずっと裏方の顔でビデオカメラを回し続ける。心から、ふたりの幸福を祈る。
そうしながらも。
彼がファインダー越しに追い続けるのは、花嫁ただひとり。
愛した女が最も美しい瞬間の笑顔を撮り続ける。最も幸福な日の笑顔を撮り続ける。
愛した女が最も美しく、最も幸福なときは、彼女が永久に彼を愛さなくなる日。
彼が彼女を失うその日、彼女はまぶしいほどに美しい。
身内と恋人に裏切られた男。
男は小説家。「言葉」を使うプロ。だけど愛に傷ついた彼はあえて、「言葉の通じない」外国の別荘でひとり執筆に没頭する。
そして彼は、言葉の通じない異国の女性を愛する。「言葉」を持たない男と女は、それぞれの母国語で愛を口にする。相手に通じないことを知りながら。
帰国した男は、女の国の言葉を学びはじめる。……馬鹿げてる。だって彼女とは、愛の言葉ひとつ、かわさなかった。確かなものなんて、なにもない。
自嘲しながらも男は探すんだ。彼女と自分をつなぐ「言葉」を。
ネタ一発勝負。
でも、このネタひとつで、十分泣けるんですけど。
きちんと1本の物語に作ってみたくなるくらい。
登場人物すべての物語は、クリスマスの夜にひとつの昇華を遂げる。
クリスマスは、愛するひとと過ごしたい。
素直になりたい。
伝えたい。
マライア・キャリーの「恋人たちのクリスマス」が流れるなか、愛することのよろこびも、しあわせも、いたみもかなしみもくるしみも、わたしかもしれないあなたの姿になって、両手を広げている。
抱きしめるために。
すべてを。
もう少し作り込んであったら、もっと好きなんだけど。力技感があるし。
だけど今のままでも、わたしは十分大好き。
ヒュー様の話がいちばん、どーでもよかったよーな。いちばん、薄っぺらいというか。
でも、一目惚れしちゃった女の子が「ちょっと太め」だと、わかっていない男、っての、いいなあ。
彼の中では、彼女は絶世の美女なんだよね(笑)。だから、他の人に「太めの女の子」だと言われると「……そうだったかな?」てことになる。
日本ではあり得ない「首相」。若くてハンサムで独身だよ。恋しちゃうんだよ。官邸で腰振って踊っちゃうんだよ。
あの演説も好きです(笑)。
父と息子ネタに弱いわたしは、ダニエルとサムの物語も好きだー。
父と子というより、祖父と孫に近い年齢差で、真剣に親子を……ある意味対等な男同士の友人として、先輩と後輩として、向かい合うふたりが愛しい。
愛を語る、不器用な男たち。じじいに近いおっさんと、11歳の少年。
ハリーにしろカレンにしろサラにしろ、みんなみんな、不器用で、それでも精一杯にその手をのばしていて、愛しい。
決してひとつなんかではない、愛のかたち。愛のすがた。
大丈夫。
世界は愛であふれている。
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