君とノスタルジー。@花とアリス
2004年4月5日 映画
あれは何年前になるだろう。
WHITEちゃんが「緑野、映画に行こう」と言った。
当時わたしは「映画」というものを、あまり見ない人間だった。映画を見る、わざわざ見に、映画館まで行く、というのは、はてしなく面倒で非日常的で特別なことだった。……梅田で働いてたのにな。映画館、いっぱいあったのにな。
そんなわたしがごくまれに映画を見るのは、大抵、ツレがいるときだった。
ツレが見たがるから、それにつきあう。
生理的にいやなタイトル以外は、なんでもつきあった。
第一、「映画」というもの自体に興味がないため、タイトルを言われてもそれがどんな映画なのかさっぱりわからなかった。
そんなわたしに、映画好きのWHITEちゃんは半ば強引に言う。
「映画に行こう」と。
なにかしら説明はしてくれていたよーな気もするが、悪いがわたしは興味も知識もなにもなかった。だからいつも、まったくわけがわからないまま、WHITEちゃんにくっついて数ヶ月に一度くらい、映画館へ行っていた。
自分がなにを見るのか、実際に映画館に行くまで知らないことなんか、あたりまえだった。
わたしにとって「映画を見る」のは、「WHITEちゃんとデート」という意味しかなかった。WHITEちゃんと出かけるのが好きだから、彼女の好きな映画につきあう。そんな感じ。
そのときも、わたしはわけがわからないまま、彼女にくっついて行っていた。
当時のわたしは、「ミニシアター」というものを知らなかった。映画館ってのは、大きなものだと思い込んでいた。
梅田のはずれ、一見ふつーのビルにしか見えない建物に連れて行かれ、ふつーのお店の中に入った。
雑貨が売っているふつーのお店の中に、列ができていた。
お店の奥にあるミニシアターの、列だった。
こんなところに映画館が。
てゆーかここ、ほんとに映画館??
まったくわかっていないまま、列に並んだ。
ところでわたし、なにを見るの?
並んでいながら、なにを見るのかさえ知らなかった。
WHITEちゃんはいつも前売り券を買ってくれていて、当日映画館でそれを渡してくれるのだ。
「緑野、1300円」
と、代金と引き替えに。
言われるままにお金を払って、はじめてわたしは、
「そうか、今日はこの映画を見るんだ」
と、わかる。
WHITEちゃんは映画好きで年間100本以上軽く見ている人。マニア属性の人なので、わたしなんか足元にも及ばない知識とこだわりがある人。
その映画マニアが、「これは緑野が好きそう」と思うヤツだけをピックアップして、わたしを誘ってくれるのだ。
わたしはなーんにもわかっていないまま、ただ、「WHITEちゃんがわたしと一緒に見たいと思ってくれたタイトルだから」という理由で、それをそのまま受け入れる。
そーやって、いろんな映画と出会った。
その日、生まれてはじめてのミニシアターの列に並びながら受け取った前売り券は、『Love Letter』。主演・中山美穂の横顔が美しい。
それが、岩井俊二監督との出会いだった。
えーと、『Love Letter』公開は1995年だから、10年近く前か。
それからわたしは、WHITEちゃんとふたり、彼の作品を追いかけた。
同じミニシアターで『Undo』と『打ち上げ花火』を見、『PICNIC』や『FRIED DRAGON FISH』を見に行った。
ミニシアターがあたりまえだと思っていたから、『スワロウテイル』がロードショー公開だったことに、心底おどろいた。初日にいそいそ見に行ったら、ものすげー混みようで、これまた心底おどろいた。
WHITEちゃんと一緒、あるいはオレンジと一緒。
岩井俊二は、感性の合う友だちと一緒に。
なんか、昔をつらつらと振り返ってしまったよ。
10年前であっても、わたしは花やアリスの年齢ではないんだけどね。
岩井俊二最新作、『花とアリス』鑑賞。出演・鈴木杏、蒼井優。
ストーリーはあるような、ないような。
いちおー、花@鈴木杏が好きな先輩を「記憶喪失」に仕立て上げてつきあい、彼女の親友のアリス@蒼井優がそれに事後協力、しかし問題の先輩はアリスの方が気になってきて……と、三角関係勃発? という話なんだけど。
でもやっぱり、ストーリーはあるようなないような(笑)。
それよりも、とりとめのない花とアリスのやりとりや日常、美しい画面をぼーっと眺めているだけ、というのが、この映画の醍醐味かと。
いやあ、映画館がガキばっかでおどろいたよ(笑)。
10代の若者しかいないのよ。
おばさん、わたしだけかよ?
そして、あちこちツボに入って吹き出してるのが、これまたわたしひとりなんですが。
若者たち、おもしろくなかったの? たんにお行儀良すぎるだけ?
わたしはもー、花とアリスがかわいくて、ふたりのなんてことのないやりとりとかがかわいくて、おかしくて、しあわせな笑いがいっぱいあったんですが。
爆笑するんじゃなくて、「くすっ」とか、「ぷっ」とかの、クリティカルヒットが連続コンボでやってくる感じ。
視聴対象年齢からはてしなくはずれたおばさんが、ひとりでウケている図、だったのかしらね……。
この映画の制作背景だとか、前身だとか、興味ないんでまったく知りません。
映画は映画として、単体で見ました。
ふつーに1000円分たのしめて、しあわせしあわせ。
そしてなんだかとても、ノスタルジック。
映画のことなんかなにもわかってないまま、WHITEちゃんに連れられて行った、いろんな映画館。
まったく未知、無知のまま、握りしめていた前売り券。
あのころは「レディースデー」なんてなかったからさ。映画は高価な娯楽だったよ。前売りを買うのは必須さ。少しでも安く見るために。
映画がおもしろくなかったときは、「ごめんね」と謝ってくれたけどWHITEちゃん、べつに君が謝る必要まったくないんだよ。たしかに、その映画を選んだのも誘ったのも君だけど、わたしはそんな君を信じてうなずいてたんだからさー。てゆーかわたし、たんにWHITEちゃんとお出かけがしたかっただけだからさ(笑)。映画がおもしろかったら儲けモノ、おもしろくなくてもご愛敬、ぜんぜん平気だったのにね。
わたしが映画好きになったのは、まちがいなくWHITEちゃんの影響。あの人がいろいろ連れ回すもんだから、自分でも見るよーになっちゃったよ(笑)。
ああお互い、トシとったね。
あのころは若かったね。幼かったね。
今も精神年齢は低いままだけどさ。
そんなことを、漠然と思う。
そんな効果のある映画。
『花とアリス』。
……でもわたし、岩井俊二でいちばん好きなのは『スワロウテイル』で、いちばんこわいのは『PICNIC』、いちばんキライなのが『四月物語』なのよ(笑)。
『四月物語』がダメで、『花とアリス』がOKなのはやはり、主演女優に原因アリかしらね(笑)。
WHITEちゃんが「緑野、映画に行こう」と言った。
当時わたしは「映画」というものを、あまり見ない人間だった。映画を見る、わざわざ見に、映画館まで行く、というのは、はてしなく面倒で非日常的で特別なことだった。……梅田で働いてたのにな。映画館、いっぱいあったのにな。
そんなわたしがごくまれに映画を見るのは、大抵、ツレがいるときだった。
ツレが見たがるから、それにつきあう。
生理的にいやなタイトル以外は、なんでもつきあった。
第一、「映画」というもの自体に興味がないため、タイトルを言われてもそれがどんな映画なのかさっぱりわからなかった。
そんなわたしに、映画好きのWHITEちゃんは半ば強引に言う。
「映画に行こう」と。
なにかしら説明はしてくれていたよーな気もするが、悪いがわたしは興味も知識もなにもなかった。だからいつも、まったくわけがわからないまま、WHITEちゃんにくっついて数ヶ月に一度くらい、映画館へ行っていた。
自分がなにを見るのか、実際に映画館に行くまで知らないことなんか、あたりまえだった。
わたしにとって「映画を見る」のは、「WHITEちゃんとデート」という意味しかなかった。WHITEちゃんと出かけるのが好きだから、彼女の好きな映画につきあう。そんな感じ。
そのときも、わたしはわけがわからないまま、彼女にくっついて行っていた。
当時のわたしは、「ミニシアター」というものを知らなかった。映画館ってのは、大きなものだと思い込んでいた。
梅田のはずれ、一見ふつーのビルにしか見えない建物に連れて行かれ、ふつーのお店の中に入った。
雑貨が売っているふつーのお店の中に、列ができていた。
お店の奥にあるミニシアターの、列だった。
こんなところに映画館が。
てゆーかここ、ほんとに映画館??
まったくわかっていないまま、列に並んだ。
ところでわたし、なにを見るの?
並んでいながら、なにを見るのかさえ知らなかった。
WHITEちゃんはいつも前売り券を買ってくれていて、当日映画館でそれを渡してくれるのだ。
「緑野、1300円」
と、代金と引き替えに。
言われるままにお金を払って、はじめてわたしは、
「そうか、今日はこの映画を見るんだ」
と、わかる。
WHITEちゃんは映画好きで年間100本以上軽く見ている人。マニア属性の人なので、わたしなんか足元にも及ばない知識とこだわりがある人。
その映画マニアが、「これは緑野が好きそう」と思うヤツだけをピックアップして、わたしを誘ってくれるのだ。
わたしはなーんにもわかっていないまま、ただ、「WHITEちゃんがわたしと一緒に見たいと思ってくれたタイトルだから」という理由で、それをそのまま受け入れる。
そーやって、いろんな映画と出会った。
その日、生まれてはじめてのミニシアターの列に並びながら受け取った前売り券は、『Love Letter』。主演・中山美穂の横顔が美しい。
それが、岩井俊二監督との出会いだった。
えーと、『Love Letter』公開は1995年だから、10年近く前か。
それからわたしは、WHITEちゃんとふたり、彼の作品を追いかけた。
同じミニシアターで『Undo』と『打ち上げ花火』を見、『PICNIC』や『FRIED DRAGON FISH』を見に行った。
ミニシアターがあたりまえだと思っていたから、『スワロウテイル』がロードショー公開だったことに、心底おどろいた。初日にいそいそ見に行ったら、ものすげー混みようで、これまた心底おどろいた。
WHITEちゃんと一緒、あるいはオレンジと一緒。
岩井俊二は、感性の合う友だちと一緒に。
なんか、昔をつらつらと振り返ってしまったよ。
10年前であっても、わたしは花やアリスの年齢ではないんだけどね。
岩井俊二最新作、『花とアリス』鑑賞。出演・鈴木杏、蒼井優。
ストーリーはあるような、ないような。
いちおー、花@鈴木杏が好きな先輩を「記憶喪失」に仕立て上げてつきあい、彼女の親友のアリス@蒼井優がそれに事後協力、しかし問題の先輩はアリスの方が気になってきて……と、三角関係勃発? という話なんだけど。
でもやっぱり、ストーリーはあるようなないような(笑)。
それよりも、とりとめのない花とアリスのやりとりや日常、美しい画面をぼーっと眺めているだけ、というのが、この映画の醍醐味かと。
いやあ、映画館がガキばっかでおどろいたよ(笑)。
10代の若者しかいないのよ。
おばさん、わたしだけかよ?
そして、あちこちツボに入って吹き出してるのが、これまたわたしひとりなんですが。
若者たち、おもしろくなかったの? たんにお行儀良すぎるだけ?
わたしはもー、花とアリスがかわいくて、ふたりのなんてことのないやりとりとかがかわいくて、おかしくて、しあわせな笑いがいっぱいあったんですが。
爆笑するんじゃなくて、「くすっ」とか、「ぷっ」とかの、クリティカルヒットが連続コンボでやってくる感じ。
視聴対象年齢からはてしなくはずれたおばさんが、ひとりでウケている図、だったのかしらね……。
この映画の制作背景だとか、前身だとか、興味ないんでまったく知りません。
映画は映画として、単体で見ました。
ふつーに1000円分たのしめて、しあわせしあわせ。
そしてなんだかとても、ノスタルジック。
映画のことなんかなにもわかってないまま、WHITEちゃんに連れられて行った、いろんな映画館。
まったく未知、無知のまま、握りしめていた前売り券。
あのころは「レディースデー」なんてなかったからさ。映画は高価な娯楽だったよ。前売りを買うのは必須さ。少しでも安く見るために。
映画がおもしろくなかったときは、「ごめんね」と謝ってくれたけどWHITEちゃん、べつに君が謝る必要まったくないんだよ。たしかに、その映画を選んだのも誘ったのも君だけど、わたしはそんな君を信じてうなずいてたんだからさー。てゆーかわたし、たんにWHITEちゃんとお出かけがしたかっただけだからさ(笑)。映画がおもしろかったら儲けモノ、おもしろくなくてもご愛敬、ぜんぜん平気だったのにね。
わたしが映画好きになったのは、まちがいなくWHITEちゃんの影響。あの人がいろいろ連れ回すもんだから、自分でも見るよーになっちゃったよ(笑)。
ああお互い、トシとったね。
あのころは若かったね。幼かったね。
今も精神年齢は低いままだけどさ。
そんなことを、漠然と思う。
そんな効果のある映画。
『花とアリス』。
……でもわたし、岩井俊二でいちばん好きなのは『スワロウテイル』で、いちばんこわいのは『PICNIC』、いちばんキライなのが『四月物語』なのよ(笑)。
『四月物語』がダメで、『花とアリス』がOKなのはやはり、主演女優に原因アリかしらね(笑)。
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