とりあえず、爆笑して帰ってきました、月組全国ツアー『ジャワの踊り子』

 捨てる神あれば拾う神あり、残り物には福がある。チケ取りに出遅れて、スルー決定していた月全ツ、3列目センター席が転がり込んできました。ええっ、3列目? 行くよ行くよ、そんな良席で観られるなら!
 目指すは彦根、名前は聞いたことあっても、行ったことない土地。よくわかんないままに、電車を乗り継いで旅立ちました。……遠かった(笑)。

 いつものよーに、なんの予備知識もナシ。どこの国のいつの時代の話かも知らなかったよ。再演だとは聞いていたけど、何年前の作品かも知らないし。
 先入観を持つのがキライなので、いつも意識的にシャットアウトしてるの。
 自分の目で観て帰ってきてはじめて、公式HPのあらすじを読んだわ。……半世紀も前の作品なの……? 道理で……。

 
 とりあえず、笑えます。
 シリアスなラブロマンスで悲劇らしいですが、21世紀の現代人が観れば、確実に笑えると思います。わたしはあちこちツボに入って、笑いをこらえるのに必死でした。

 舞台は少し前のインドネシア。ちょいとおつむがライト風味だけど、美しく善良な青年アディナン@さえちゃんは、王宮お抱えの踊り子さん。でもその正体は、自称独立運動組織のリーダー。
 「自称」でもなんでも、とりあえずは独立運動家ってことになっているので、彼は警察に目をつけられている。インドネシア人なのにオランダの手先となって働いているタムロン@ゆうひが、アディナンを逮捕しようと必死になってるしねえ。集会に出たアディナンはタムロンに追いかけられて、もう王宮に帰れなくなっちゃった。ので、恋人のアルヴィア@くらりんとふたりで逃避行。誰もいないふたりきりの島でラヴラヴ三昧。……えーと、独立運動はどうしたの? ま、「自称」だからいいのか。
 ふたりの愛の巣、は、タムロンに襲撃されて崩壊。仕方なくもとの国に戻ったアディナンとアルヴィア。行くアテがなかったのか、ふたりはどうやらおめおめとアルヴィアの実家を頼った模様。しかしアルヴィアの母親はアディナンみたいなごくつぶしを娘の夫とは認めずアディナンだけを放り出し、あわれふたりは離ればなれ。
 「自称」独立運動家のアディナンがなにをしているのかはさっぱりわからないが、アルヴィア恋しさに彼女の家の周りをうろうろしていたのだけは事実。アディナンを逮捕しようと警察側がいろいろ画策していたし、また、うかつもののアルヴィアがアディナンの居場所を刑事にぺらぺら喋っちゃったりなんだりしたんだけど、どーやらそれもどーってことなかったらしくきれいにスルーされていた。「自称」独立運動はどうしたんだろうねえ?
 結局アディナンが女の尻を追いかけているうちに、他の人たちが独立を勝ち取ってしまった。やったー、インドネシア万歳!な最中、周囲を見る余裕のないアディナンは、愛する妻アルヴィアを悪徳オランダ人警視総監@越リュウから取り返すために大活躍。って、たんに力尽くで奪って逃げただけなんだけど。正面切って女を奪って逃げても、そりゃ負けるよね、ということで、あわれアディナンとアルヴィアは射殺されてしまいました。
 とことん、「愛だけ」に生きた男、アディナン……。独立運動はただのいいわけっていうか、「自称」でしかないよね……なにひとつしてないし、役にも立ってないもんね……。

 
 主役がここまでバカでいいの?(笑)

 やることなすことバカすぎて、ものすげーツボでした。
 いい。中途半端に小賢しいより、これくらい澄み渡ってバカだと、かえって愛しい。

 主役のアディナンは、終始一貫、おつむの上にお花が咲いていました。考えることは苦手みたいだけど、そのぶん善良で、天使のように微笑みます。恋人を見つめる目は、幸福にあふれています。癒し系です。
 たぶん、この時代の若者たちの「ファッション」なんでしょう、「独立運動」っていうのは。
 ちょっとかっこつけたい年頃の若者は、とりあえず「独立を!」と言ってみるのです。
 本気でなにかしようとはしてないし、できるわけもないけどとりあえず、「政府に反発するオレってイケてる」ってなもんでしょうか。
 思春期の中学生が、わざと悪ぶってみせる感じ? 「オレはそのへんの平凡な奴らとはとチガウんだ」みたいな?
 つーことで、アディナンや彼の仲間たちは、ファッションとして独立運動をしているようです。なんちゃって活動家、「自称」止まりっすね。
 彼らは「集会」をして自己満足に浸っています。具体的に国のためになにかした、ということもないみたいです。あ、女の子を助けて感謝され、その女の子とつきあうよーになったりはしたみたい。役得ね。
 大それたコトはなにもしてなくても、不良少年は補導されますから、警察には追われます。そーやってアディナンとタムロン刑事が追いかけっこしているうちに、時代は変わり、なんとインドネシアは独立しちゃいました。アディナンはもちろん、歴史にはなんの関与もしていません、ただのファッションで独立がどーの言ってただけだから。彼にそんなアタマも甲斐性もありませんから。彼がうっかり殺されちゃったのは、三角関係のもつれでだから。

 アディナンの恋人、アルヴィアって女の子も、彼に似合いののーみその少ない女の子でした。
 なにしろ彼女のアタマの中は、「わたし。それから、わたしのダーリン(はぁと)」だけでできあがっています。
 自称独立運動家のアディナンがなにを語ろうと、アルヴィアのアタマの中には「わたし。それから、わたしのダーリン(はぁと)」しかないので、終始一貫ぴんくなことしか考えられなかったよーです。政治犯の疑いで弟がリストラされたことさえ、彼女には笑い事、「だってわたしのダーリンには関係ないもーん」だそうです。いやはや、あっぱれ。

 アディナンとアルヴィアは、最強のカップルでした……。
 ふたりそろってお花畑。
「つかまえてごらんなさ〜い」
「あはは」
「うふふ」
「こいつぅ」
「いやあん」
 エンドレス。

 いい。すっげーいいよ、お前ら。めちゃくちゃ愉快だ。
 こいつらを見て、割れ鍋に綴じ蓋という言葉が浮かんだ。

 じつに愉快な物語だった。
 独立運動がどーのと言いながら、主人公がかっこよくなにかをするシーンは皆無。「リーダー」だと台詞にあるだけ。
 彼はただ美しい衣装で踊り、仲間を盾にして逃げ、恋人といちゃいちゃする。
 そしてなにもしないまま、個人的なことで殺されて終わる。
 時代背景もなにも解説はなく、インドネシアを支配しているオランダ人がどれだけ圧政をしているかとかも、描写はない。個人的にいばりちらしている警視総監がひとり出てくるだけ。そのくせ台詞でだけ「独立を」と連呼する。
 ここまで、主人公をかっこわるくお膳立てした物語ってのは、狙ってやっているとしか思えない。
 脚本がめちゃくちゃだという以前の問題なので、かえって愉快、笑えて仕方なかった。
 てか、マジでおもしろいって。
 一見の価値アリ。

 主人公役の人が狡猾なイメージのある人だとか、賢そうな人だとかえってきついかも。
 でも、天然系の人がやる分にはいい。観ていてとてもおおらかな気分になれる。
 素直に、「かわいい」と思った。

 文字数足りないので、つづく(笑)。

       

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