ティータイムとショッピング。プラス、女は拳で語り合う。
2004年5月5日 その他 ミヤビンスキーさん(女性・妙齢)に、はたかれた。
テレビに出られるんじゃねーか? てくらい、見事な張り手だった。
「この口か? そんな失礼なことをいうのは、この口かっっ?!!」
きゃ〜〜っ、きゃ〜〜っ、ごめんなさ〜〜いっ。
そう、わたしたちは女ばかりで午後のお茶をたのしんでいた。主婦がいるから、あくまでも「昼下がり」限定だ。お昼ごはんと晩ごはんの支度までの間にティータイム。
話題はさまざま。
そのなかには、
「親戚づきあいって、ほんとに大変よねえ」
というのもあった。
「よくわかんないんたけど、親戚のひとりが、アタシのことをえんえん文句言うのよ」
と、ミヤビンスキー。
「最初はぜんぜん他のことで怒って、ウチの父に愚痴を言っていたはずなのに、愚痴っているうちに、『そういえばお宅のミヤビンスキーちゃん、前にアタシにひどいこと言ったわ』って、突然矛先がアタシに向いたの」
あー、思い出し怒りか。よくあるね、それは。
「でも、アタシがなにを言ったのかは、教えてくれないの。理由は教えず、ただ罵る。あんまりすごいんで、その人との電話を切った途端父が、『ミヤビンスキーおまえ、いったいなにをやったんだ?!』と詰め寄ってきたよ」
しかしどう考えても、そこまで罵られなきゃいかんほどの失言をしたおぼえはない。もししたとしたら、それはきっとものの道理もわかっていないくらい、子どものころだろう。
あー、大変だね、それは〜〜。
ミヤビンスキーは常識的な人なんで、たしかに大人になってからなら、それほど罵られなきゃいかんほどの失言を目上の人にはしないだろう。社交辞令とか礼儀とか、きちんとしてる人だもん。
いつ、どんなことを言ったのか、一切教えずに、ただの罵るってのが、また……。
求めているのは誠意とか謝罪でなく、ただのストレス発散用のサンドバッグなんじゃあ? って感じだねえ。
「まあ、ひとの感じ方はそれぞれだからね。アタシにとってなんでもないことでも、その人には耐えられないようなことがあって、それを知らずにアタシが言ってしまったのかもしれない」
大人なミヤビンスキーはそう言う。
それを聞いて、わたしたちもうんうんと頷く。そーだね、地雷は人によってチガウからねー。うっかり踏んでしまったら、お互いに不幸だよね。
てな話を、したとこだったんだ。
「ええいっ、アンタはなにを聞いてたんだっ。さっきその話をしただろう。あんたにとってなんでもないひとことでも、アタシには地雷なんだよーっ」
ぽかぽかぽか。あうあうあう。
梅田の雑踏での、どつき漫才。
そう、主婦と解散した後、独身女ふたりだけになったわたしとミヤビンスキーは、ふたりで買い物をしようということになっていた。
にわかソーイング趣味に眼覚めたわたしは、阪急百貨店のクラフト・コーナーへ、ミヤビンスキーは、その下のフロアでやっている靴のバーゲンへ。それぞれ相手につきあって一緒に行きましょう、という運びだった。
わたしが口にした、「地雷なひとこと」とは。
「靴のバーゲンに行きたいの。いろんなサイズがあるらしいって聞いたから」
てなことを言ったミヤビンちゃんに、めーっちゃ素で、
「そうね。足が大きいから、大変よね」
と、言ってしまったのだ。
いや、そーでした、地雷中の地雷でした。
「ぬわんだとぉーっ?!」
という、雄叫びと同時に、張り手が側頭部に炸裂してました。そう、彼女は手と口が同時に出る人なのです(笑)。
そして、あとはマンガのよーな連続ポカポカ攻撃へ。
「アンタにとって『背が高い』が言っちゃいけないことなのと同じで、アタシにとって『足がでかい』は言っちゃいけないことなのよーっ」
きゃ〜〜っ。きゃ〜〜っ、ごめんなさ〜〜いっ。
しばらく大騒ぎしたあとで、
「コントはこのへんでやめよう」
「そーね、やめよう」
と、ふつーに肩並べて買い物に出発しましたが。
他の誰より、激しくボケとツッコミのアクション・リアクションを要求されるのが、ミヤビンスキーだ……ぜいぜい。
何故、大阪の地下街でコントまがいのどつきあいを……いいトシをして……(笑)。
ミヤビンスキーはねえ、身長が165cmしかないのに、足が25cm以上あるのよーっ。
わたしがカラダがでかいせいで、服を買うのに苦労するよーに、ミヤビンちゃんは靴を買うのに苦労しているのよ。
女性用の靴はふつう、24.5cmまでなんだよね。それ以上のサイズは、別カテゴリ。通常の棚ではなく、ラージサイズ(美しくも「モデルサイズ」とかいう名前がつけられている)コーナーにちょこんとまとめられているんだ。小さな靴屋では、そんなコーナーがはじめからなかったりするんだ。
わたしは、カラダはでかいが、幸いなことに足は人並みな大きさなので、大して苦労はしない。ミヤビンスキー、がんばれ。
そうやって、ふたりで行ったバーゲン会場。
派手に広告出しているわりに規模は小さく、お目当てのモデルサイズの靴も、ほんの少ししかなかった。
「緑野は好きに見て回ってて」
と、ミヤビンスキーが言うので、わたしはひとりで他のコーナーを見て回っていた。靴だけでなく、他のファッション雑貨のバーゲンもやっていたから。
一通り見て、ミヤビンスキーがいるモデルサイズ・コーナーへ行くと。
「もういいわ。買いたいの、ないし」
というミヤビンスキーは、そこはかとなく不機嫌。
「ものすごく不愉快だったわ。広告のわりにしょぼくてがっかりしながら、それでもなにかないかと思って真面目に探してみてたら。
後ろを通る女たちが、口をそろえて言うのよ。
『なにコレ、おっき〜〜い』
『こんなの、誰が履くのー?』
『きっと男の人用だよ』
…………むっくぅわ〜〜っ、アタシが男に見えるのかっ? ああ?! 悪かったわね、足がでかくて!」
どうどう。落ち着け落ち着け(笑)。
あたしだって、ブティックで男性用すすめられたことあるよー。女性用がことごとく袖が短くてな……わたしゃ、さりげなく手が長いんじゃ……胴も長いけどな……。
「あー、若い娘さんたちは、きれーでいいのう」
「まったくのう。若い娘さんたちが着る服は、みんなきれーでいいのう」
「しかしばばあにはちと、ついていけん服も多いのう」
「あー、アレとかアレとか、誰が着るんじゃろうのう」
「舞踏会とかかの」
「それって某港で開催される……?」
「げふんげふん」
いいかげんわたしらも、トシ相応の格好しなきゃダメだよなあ、と言いつつ、年齢不詳ファッションの独身女ふたりでウインドウショッピングに明け暮れました。
もちろんなにをしていても、どつき漫才、コントは必須。ミヤビンスキーくんは、そういう人。
テレビに出られるんじゃねーか? てくらい、見事な張り手だった。
「この口か? そんな失礼なことをいうのは、この口かっっ?!!」
きゃ〜〜っ、きゃ〜〜っ、ごめんなさ〜〜いっ。
そう、わたしたちは女ばかりで午後のお茶をたのしんでいた。主婦がいるから、あくまでも「昼下がり」限定だ。お昼ごはんと晩ごはんの支度までの間にティータイム。
話題はさまざま。
そのなかには、
「親戚づきあいって、ほんとに大変よねえ」
というのもあった。
「よくわかんないんたけど、親戚のひとりが、アタシのことをえんえん文句言うのよ」
と、ミヤビンスキー。
「最初はぜんぜん他のことで怒って、ウチの父に愚痴を言っていたはずなのに、愚痴っているうちに、『そういえばお宅のミヤビンスキーちゃん、前にアタシにひどいこと言ったわ』って、突然矛先がアタシに向いたの」
あー、思い出し怒りか。よくあるね、それは。
「でも、アタシがなにを言ったのかは、教えてくれないの。理由は教えず、ただ罵る。あんまりすごいんで、その人との電話を切った途端父が、『ミヤビンスキーおまえ、いったいなにをやったんだ?!』と詰め寄ってきたよ」
しかしどう考えても、そこまで罵られなきゃいかんほどの失言をしたおぼえはない。もししたとしたら、それはきっとものの道理もわかっていないくらい、子どものころだろう。
あー、大変だね、それは〜〜。
ミヤビンスキーは常識的な人なんで、たしかに大人になってからなら、それほど罵られなきゃいかんほどの失言を目上の人にはしないだろう。社交辞令とか礼儀とか、きちんとしてる人だもん。
いつ、どんなことを言ったのか、一切教えずに、ただの罵るってのが、また……。
求めているのは誠意とか謝罪でなく、ただのストレス発散用のサンドバッグなんじゃあ? って感じだねえ。
「まあ、ひとの感じ方はそれぞれだからね。アタシにとってなんでもないことでも、その人には耐えられないようなことがあって、それを知らずにアタシが言ってしまったのかもしれない」
大人なミヤビンスキーはそう言う。
それを聞いて、わたしたちもうんうんと頷く。そーだね、地雷は人によってチガウからねー。うっかり踏んでしまったら、お互いに不幸だよね。
てな話を、したとこだったんだ。
「ええいっ、アンタはなにを聞いてたんだっ。さっきその話をしただろう。あんたにとってなんでもないひとことでも、アタシには地雷なんだよーっ」
ぽかぽかぽか。あうあうあう。
梅田の雑踏での、どつき漫才。
そう、主婦と解散した後、独身女ふたりだけになったわたしとミヤビンスキーは、ふたりで買い物をしようということになっていた。
にわかソーイング趣味に眼覚めたわたしは、阪急百貨店のクラフト・コーナーへ、ミヤビンスキーは、その下のフロアでやっている靴のバーゲンへ。それぞれ相手につきあって一緒に行きましょう、という運びだった。
わたしが口にした、「地雷なひとこと」とは。
「靴のバーゲンに行きたいの。いろんなサイズがあるらしいって聞いたから」
てなことを言ったミヤビンちゃんに、めーっちゃ素で、
「そうね。足が大きいから、大変よね」
と、言ってしまったのだ。
いや、そーでした、地雷中の地雷でした。
「ぬわんだとぉーっ?!」
という、雄叫びと同時に、張り手が側頭部に炸裂してました。そう、彼女は手と口が同時に出る人なのです(笑)。
そして、あとはマンガのよーな連続ポカポカ攻撃へ。
「アンタにとって『背が高い』が言っちゃいけないことなのと同じで、アタシにとって『足がでかい』は言っちゃいけないことなのよーっ」
きゃ〜〜っ。きゃ〜〜っ、ごめんなさ〜〜いっ。
しばらく大騒ぎしたあとで、
「コントはこのへんでやめよう」
「そーね、やめよう」
と、ふつーに肩並べて買い物に出発しましたが。
他の誰より、激しくボケとツッコミのアクション・リアクションを要求されるのが、ミヤビンスキーだ……ぜいぜい。
何故、大阪の地下街でコントまがいのどつきあいを……いいトシをして……(笑)。
ミヤビンスキーはねえ、身長が165cmしかないのに、足が25cm以上あるのよーっ。
わたしがカラダがでかいせいで、服を買うのに苦労するよーに、ミヤビンちゃんは靴を買うのに苦労しているのよ。
女性用の靴はふつう、24.5cmまでなんだよね。それ以上のサイズは、別カテゴリ。通常の棚ではなく、ラージサイズ(美しくも「モデルサイズ」とかいう名前がつけられている)コーナーにちょこんとまとめられているんだ。小さな靴屋では、そんなコーナーがはじめからなかったりするんだ。
わたしは、カラダはでかいが、幸いなことに足は人並みな大きさなので、大して苦労はしない。ミヤビンスキー、がんばれ。
そうやって、ふたりで行ったバーゲン会場。
派手に広告出しているわりに規模は小さく、お目当てのモデルサイズの靴も、ほんの少ししかなかった。
「緑野は好きに見て回ってて」
と、ミヤビンスキーが言うので、わたしはひとりで他のコーナーを見て回っていた。靴だけでなく、他のファッション雑貨のバーゲンもやっていたから。
一通り見て、ミヤビンスキーがいるモデルサイズ・コーナーへ行くと。
「もういいわ。買いたいの、ないし」
というミヤビンスキーは、そこはかとなく不機嫌。
「ものすごく不愉快だったわ。広告のわりにしょぼくてがっかりしながら、それでもなにかないかと思って真面目に探してみてたら。
後ろを通る女たちが、口をそろえて言うのよ。
『なにコレ、おっき〜〜い』
『こんなの、誰が履くのー?』
『きっと男の人用だよ』
…………むっくぅわ〜〜っ、アタシが男に見えるのかっ? ああ?! 悪かったわね、足がでかくて!」
どうどう。落ち着け落ち着け(笑)。
あたしだって、ブティックで男性用すすめられたことあるよー。女性用がことごとく袖が短くてな……わたしゃ、さりげなく手が長いんじゃ……胴も長いけどな……。
「あー、若い娘さんたちは、きれーでいいのう」
「まったくのう。若い娘さんたちが着る服は、みんなきれーでいいのう」
「しかしばばあにはちと、ついていけん服も多いのう」
「あー、アレとかアレとか、誰が着るんじゃろうのう」
「舞踏会とかかの」
「それって某港で開催される……?」
「げふんげふん」
いいかげんわたしらも、トシ相応の格好しなきゃダメだよなあ、と言いつつ、年齢不詳ファッションの独身女ふたりでウインドウショッピングに明け暮れました。
もちろんなにをしていても、どつき漫才、コントは必須。ミヤビンスキーくんは、そういう人。
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