ねえちょっと奥さん、聞いてくださる?!

 現在絶賛上演中の宙組公演『ファントム』、アレ、いちばんの見どころは2幕の終わりの方の、ファントムとキャリエールの抱擁でしょう?

 男ふたりのせつないラヴシーンですわよねっ?!

 まあ、世間体がございますから、親子愛とか、てきとーに耳障りのいい単語に置き換えてもいいですけど。

 なのに、みなさんおっしゃいますのよ。

「抱擁? 抱擁なんて、なかったわよ?」

 ががーーーん。
 銀橋での抱擁よ? ファントムとキャリエールの。
 初日では拍手が鳴りやまず、いつまでも次の台詞が言えず、えらく長い間抱き合っていた、あのシーンよ?

 それが、ない?

 カットされたってこと?
 翌日からは見つめ合うだけとかに、演出が変更になったってこと?

 ファントム@たかちゃんがこう、キャリエール@樹里ぴょんにもたれかかるよーにして、それをキャリエールが受け止めるよーに手を回して……。
 それが、なくなったってこと?

 実際にそのシーンを再現してみせたわたしに、周囲のみなさんは言うのです。

「ああ、それならありましたよ」
「あったけどソレべつに、抱擁じゃないし」

 ええっ?!

「緑野さんが抱擁抱擁って言うから、なにかと思ったけど。べつに、抱擁なんかしてなかったじゃないですか」

 抱擁じゃん?!
 どっから見ても!
 なによアンタたち、お互いに腕回してがっつり抱き合わないと、抱擁じゃないっていうの?
 ファントムは自分から抱きしめずに、ただキャリエールに身をあずけるのよ? キャリエールはそれを受け入れるのよ?
 抱擁じゃん。
 てゆーか、なまじ自発的にふつーに腕を回して抱き合うより、せつなくてやんらしい抱擁じゃん!!

「緑野の言うこと真に受けたら、バカみるからねー」
「緑野さんは、わたしたちの見ている『ファントム』とは、なにか別の『ファントム』を見たんですよ」

 なんですとぉーーっ?!
 わたし、嘘つき認定なの?
 そうなの、みなさん?

 なまあたたかい、病んだ人を見る目で一歩下がってわたしを見ないでよーっ。泣。

 
 聞いてくださいよ、奥さん。
 みんながわたしのこと、いじめるんですよ……。

 
 ファントムは特異な育ち方をしたお子様なので、男女の恋愛というものが、わかってないのです。
 彼にとっての「愛の最高峰」は、「父母の愛」なんです。区別ついてないんです。
 だから「母の面影」を追ってクリスティーヌ@お花様に惹かれるわけです。
 母に似ている、は、彼にとって最大の愛の表現なわけです。

 母に似ているから、クリスティーヌを好き。

 それなら、「勝手に父だと信じていた」キャリエールはなんですか?

 ファントムにとって、「母」や「父」は究極の愛を分かち合う相手。
 顔が似ているわけでもない男、キャリエールを「父だと思っていた」ってのはつまり、「愛していた」ってことですがな!!
 彼にとっての「あいらびゅーん」、は、「母(父)に似ている」なんだから!!

 世の常識を知らないまま大人になってしまった彼は、そんなふうにしか愛を表現できないのよ……ああ、せつない……。

 キャリエールもまた、そんな不憫なファントムを愛し、彼と共に滅びることを願っているの。
 一生片想いだと覚悟して。
 ああ、せつない……。

 
 萌えですわよね、奥様。
 『ファントム』はとてつもない萌え作品なんですのよ!

 なのにみなさん、信じてくれないんです!
 わたしを変だと言うんです。
 あまつさえ、ファントムとキャリエールは「抱擁なんてしてない」って言うんです。

 めそめそめそ。

     
 ところで。
 キャリエール@樹里ぴょん、つけモミアゲなくなってるんだって??
 やっぱり変だってわかったんだー。

「えー、モミアゲ見れないのー? 残念ナリ〜〜」
 WHITEちゃんひとり、しきりに繰り返しておりました。

   

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