ようやく行ってきました、星組バウホール公演『花のいそぎ』。作・演出・大野拓史、主演・真飛聖。

 めずらしく友会でそこそこ良席が手に入っていたので、一般チケ取りには一切参加せず、初日や楽にも興味なく、マイペースにたのしみにしておりました。

 物語はあの小野篁を主人公とする、学園ラブコメ、超能力ネタ入り。
 時代設定を平安時代にしてあるだけで、内容的にはラノベまんま。てゆーかコレ、ラノベだよね?(笑) コバルト文庫とかで出てそうな感じなんですが(笑)。

 影に生きる超能力一族に生まれた篁@まとぶんの夢は、遣唐使。「危険物注意」のレッテルを貼られている超能力一族だからね、しがらみのないところへ行きたいと思うのは当然さ。
 留学へのステップとして大学寮文章院の学生になった篁くんは、藤原常嗣@れおん他の学友たちと親交を深め、また時の権力者・藤原冬嗣@ヒロさんの腹心・清原夏野@萬ケイ様の娘、三の君@コトコトとも出会うわけだ。
 三の君と恋に落ちた篁くんだが、時代がソレを許さない。三の君は藤原家へ嫁ぐことが決まっている。若いふたりは仲間たちの声援を背に、手に手を取ってかけおちするが……。

 
 おもしろかった。

 マジ佳作です。
 時代背景を上手に使い、せつない恋愛物語を盛り上げ、かつ現代感覚で学園モノにしてある。
 異世界を舞台に日常ドラマやるのって、実はけっこー難しいんだよね。舞台説明が大変だし、異世界が舞台だと日常ドラマをニーズとして認めない人たちが多いし。
 いいじゃん、異世界ファンタジーで日常ドラマやっても。ふつーの学園モノやってもいいじゃん。
 
 昔、どっかのタレントのエッセイ本で、「SFなんてなくていい」という趣旨の本を読んだことがある。
 「『E.T.』は『子鹿物語』と同じ。わざわざ宇宙人にする必要ナシ。だからSFなんかいらない」とか、そういう論理で構成された本。
 現代を舞台として表現できることを、わざわざ異世界を舞台にして表現するのは無意味だ、ってことだな。

 何故、現代でもいい話を、わざわざ苦労して異世界にするか。

 その方が、テーマを明確に表現できるからだ。

 たとえば「障害を乗り越えて、貫く愛」を表現するのに、現代が舞台だとものすごーく大変なことになる。
 自由恋愛が認められており、物質的にも豊かな現代日本で、「障害」を作るのは困難だからだ。
 それこそ不倫だとか国籍がチガウとか親友・肉親の恋人だったとか、なにかしら理由をつけて、「障害」をでっちあげるわけだが、なにしろ自由な現代だから、そんな障害、本人たちの意志ひとつでどうにでもなることなんだよね。
 ソレをどうにもならないことなんだと、視聴者に納得させるために、いろいろ事件を起こしたり、仕掛けをしなければならない。

 だけど異世界モノなら、そんなややこしいことに時間を費やさず、ただテーマをストレートに表現できる。
 「身分制度」があり、「自由恋愛」が禁止されている世界だった、ということにしてしまえばいいわけだから。「障害」を簡単に作れるから、それを「乗り越え、貫く愛」を描くことに力を入れやすい。

 異世界を描くのは難しい。なにしろ現代とチガウから、チガウことをしっかりと設定し、わかりやすく解説しなければならない。
 と、解説部分では難しいが、テーマ表現という部分では、オイシイわけだ。
 テーマを表現するにふさわしい異世界を舞台にすれば、明確に表現できるからね。

 子鹿でも済むところを、わざわざエイリアンにしなければならなかったのは、テーマをわかりやすく差し出すためなんだよ。
 

 つーことで、わざわざ小野篁でこのふつーの学園超能力ラブストーリーをやった、作者を評価する。
 小野篁である必要はない気が多分にするが(笑)、まあそれはいいだろう。

 おもしろいから、無問題。

 ……にしてもわたしの辞書ソフト、「おののたかむら」だと変換してくんないのだわ。「中臣鎌足」や「蘇我入鹿」では一発変換してくれるのに。「あべのせいめい」もダメだから、陰陽師関係はフォローしてないってことかしらね。

 
 学園モノ云々もよかったけど、せつないラブストーリーで最後をまとめたことがポイント高いなー。

 展開がいちいちスノッブで、ありがち+お約束の嵐、先が読めまくるんだけど、それがまたいい。「お約束」であるということは、「ニーズが高い」ということだから。
 予想通りのキャラの言動と、予想通りのストーリー展開、予想通りのラスト。
 この、期待を裏切らないところがいい。
 それこそコバルト文庫を読んでいるよーな感じで。

 
 いい話だったよ。たのしかったよ。わくわくしたよ。泣けたよ。

 でもさ。
 ……でも。

 萌えない……。

 かねすきさん、わたしまったく萌えなかったわ。
 かわいいお話も、ありがち話も大好きなんだけど。

 かねすきさんが言うように、あまりにも、色気がなくて。

 なんでここまで、色気がないんだろう、この作品……。
 ラブストーリーなのに……泣かせるのに……。

 やはり、出演者の問題かな。

 作品の色気を削いでいるいちばんの原因は、藤原常嗣@れおんくんだと思うんですけど。

 常嗣を色気のある役者が演じていたら、大分雰囲気変わったと思うんだけど。
 とりあえず篁@まとぶんは色気のある男役だと思う。相方に色気があれば、いくらでも艶っぽい男になるだろう。
 しかし、れおんじゃなー。
 どーしてこいつはこー、健康的にがさつなんだろう……(笑)。そこが魅力ではあるけど(笑)。

 れおんを筆頭に、学友たちがもー、色気皆無。
 学園モノであることと、色気がないことは、イコールではないはずなんだが。
 若さと拙さが全面に出ていて、それ以上のものはまだ表現できていない感じ。

 そんななか、ひとりで色気放出していたのが、藤原良房@嶺恵斗

 気の毒に、ひとりお色気状態で、誰も受け止めてくれていない(笑)。
 いやあ、いい男だ、嶺恵斗。
 なんか本公演以外の星組公演では彼ばかりを誉めている気がするが。

 好みの男なんだもん(笑)。

 美形とは言い難いが(眼鏡をはずした人みたいな目つきだよなあ)、その立ち役的スタイルの良さが素敵。

 もともと恵斗くん好きなんですが、それ以上に、この作品の中で、わたしのいちばん好きになるキャラっていったら、そりゃまちがいなく良房でしょう(笑)。
 ヘタレ男好きの緑野が、注目するなら絶対良房。
 好きなキャラを、好きな役者が、好きなタイプで演じてくれていて、カモネギな美味しさでした。うまうま。

 ただ惜しむらくは、作品に色気がない。
 良房と、オヤジふたりが色気振りまいてても、このあっけらかーんと健康的な雰囲気はいかんともしがたい。

 萌えない……。

 
 萌えはないけど、作品はいいです。
 まとぶんきれー。
 れおんくんは、いつものれおんくん(笑)。
 女性陣のお化粧がわたし的に相当イケてないんだけど、それ以外は彼女たちも素敵です。
 フィナーレの男たちの群舞は眼福。タカラヅカファンでよかったと思う絢爛さ。
 観て損はないんで、是非観てくださいな。チケットは掲示板にいっぱい落ちてます〜〜。「完売」の札にあきらめないで。

   

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