駄作と名高い『花舞う長安−玄宗と楊貴妃−』を観てきた感想です。

 耳に入る風評すべてが、完全無欠なまでの駄作認定。誰ひとり褒める人がいない。そんな完璧な作品、この不景気な世の中にそうそうあるもんじゃありませんわよ。
 なんでも売れたバブル時期ではなく、いいものを安くしてはじめて売れる、くらいに景気の冷え込んだ昨今、粗悪なモノは安くても売れないのではじめから市場に出ませんから。
 なのに、この現代に高くて粗悪なものを堂々と打ち出してくる宝塚歌劇万歳! さすが90年続いてきたブランドはやることがちがいますわー。

 と、覚悟を含め、ある意味楽しみにしてました。どれくらい駄作なのかなーと。

 なんせ博多座は物価が高いし。
 大劇場より高いよね。3階での立ち見が3000円って、どこのお大尽様相手の商売ですか。……九州の人ってお金持ちだー。
 
 さばきは、悪い席ならそれなりに出てました。1階のいちばん後ろとか、3階席とか。
 階段上がったとこの、会場入口前ね。
 係員はたしかに何人もいるんだけど、その目の前で堂々とさばいてても、なにも言いません。定価やりとりの素人仕事だってわかるせいかも。
 『凱旋門』のときさばきで4列センターを入手できたので、それを期待してたんだけど、12列目しか買えなかったよ。いや、ありがたく12列目で観ましたともさ。博多座友の会?かなんかの席らしい。さばいてくれた人が言っていた。
 以上、今後の役に立つかもしれないから、さばき状況の覚え書きでした(笑)。

 
 さて、何年かぶりの博多座。
 新しいはずなのに、なーんか古めかしい劇場。わたしは1階席しか坐ったことないんで上の階のことは知りませんが、とりあえずいつも舞台は見やすかった。座席は古い映画館並に狭くてつらいけどな(それはわたしがでかいからか?)。

 『花舞う長安−玄宗と楊貴妃−』は、タイトルまんまな話。タイトル以上のものはなにひとつなかった。演出家は酒井澄夫。

 心から思うのは、この『花舞う長安』という作品が、退団公演でなくてよかったということだ。

 その昔、ずんちゃんの退団公演である『砂漠の黒薔薇』という作品を観たときは、ずんちゃんファン、酒井を憎んでいいよ(嘆息)と、思ったもの。
 長年ずっと愛し、恋してきたスターの最後の作品がアレじゃあ、怒りと憎しみで錯乱する人が出てきてもおかしくない、とまで思ったよ。
 物語を作る能力のない演出家は、ファンのヲトメ心をここまで傷つけるんだな、と。

 過去に『さばきの黒薔薇』……あっ、失礼、ムラのロビーがさばきの人だかりで前にも進めない状態だったからそんな名前で呼ばれていた、なんて今さら言っても仕方ないことですわね、そうそう、『砂漠』よ、『砂漠の黒薔薇』。
 その『砂漠の黒薔薇』という大駄作があるだけに、こちらも耐性がついちゃって、多少の駄作ではうちのめされなくなった。

 『花舞う長安』? だーいじょーぶ! こんなのぜんぜん大したことないよ!!
 ふつーに駄作なだけ!
 『さばきの黒薔薇』に比べれば、まだぜんぜんマシな部類だって!!
 なにしろ、男役トップスター退団公演じゃないし! これが最後じゃないんだから、最悪の状況じゃないよ! ワタルくんにはきっとこれから、もっと素敵な役と作品がめぐってくるよ! だからみんな、涙を拭いて、前を見るんだ!
 人生、悪いことだけじゃないさ。希望を持って生きれば、きっと明るい明日が拓けるよ。
 みんな、泣くんじゃない、泣くんじゃ……っっ。

 
 冗談はさておき、駄作でした。
 てゆーかコレ、物語じゃないよね? 起承転結ナイし。
 環境音楽とか、水槽の熱帯魚と同じレベルだよね。
 ただ、きれいなだけ。

 それにしても酒井って人はほんとーに、物語を作る能力がないんだなー。ちょっとウケてしまった。いや、一本取られたわー。まいったまいった、降参だー。

 唐皇帝・玄宗@ワタルくんは、死んだ妃にそっくり(「いや、それ以上の美しさだ!」玄宗談)の美女・玉環@檀ちゃん(楊貴妃)に出逢い、ラヴラヴライフに突入した。
 来る日も来る日もふたりでいちゃいちゃしていると、恋の逆ギレ男・安禄山@タニちゃんが反乱を起こしてしまった。
 色ボケ玄宗がのーなし政治しかしないのは、楊貴妃のせいだ! という、鋭いツッコミにより、楊貴妃が殺されることに。楊貴妃は愛ゆえに、自らすすんで玄宗の盾となり死んでいくのでした。めでたしめでたし。

 という流れのなかで、描いてあるのは、玄宗と楊貴妃がいちゃいちゃしているシーンだけというものすごさ。
 てゆーかコレ、完璧楊貴妃主役だし。玄宗、なにもしてないし。

 ストーリーがないし、主役のいちゃいちゃ以外なにもエピソードさえないから、他のキャラクタたちは気の毒に「生きた背景」状態。出番があろうと台詞があろうと、生きてないし。『王家に捧ぐ歌』の兵士たちの方がまだ生きてたよなあ。
 ロープレの町の人みたいなのよ。主人公で話しかけると、あらかじめ決まった台詞を返してくれる。何度話しかけても同じ。だって彼らは背景だから。
 でも、ゲームがすすんでなにかしらフラグが立つと、さっきとはチガウ台詞を話したり、なにか行動を起こしたりする。とっても唐突で、前後のつながりはないけど、それがゲームの脇役、モブキャラ。
 安禄山が突然楊貴妃に迫って振られて反乱起こして、と、「うわ、フラグが立った?」としか思えなかったわ……脈絡なさすぎ。
 それですら、ゲームの町の人以上の意味がない……だってそうやって軍を率いても、途中で安禄山は出なくなるんだもの。楊貴妃の最後、めそめそ玄宗で終わり。あれ? 楊貴妃に振られて逆ギレ反乱起こした(政治的意図があるようにはまった見えない)安禄山はなにしてるのー? ネタだけ振っておいてあとは忘却かい。

 安禄山だけじゃなく、他のすべてのキャラクタが意味不明。
 重要人物っぽく出てきてソロまで歌って、それきり存在を抹消された皇甫惟明@すずみんとか。
 李林甫@みっこちゃんにしろ、楊シスターズにしろ、台詞で「あの人は死にました」で完了なのよ、その人の話題は。んじゃなんのために出したんだ……。
 おもしろいなあ。ここまでアタマ悪そうな構成の物語って(笑)。

 どこをどうしたらよくなるとか、そんなレベルじゃない。
 まちがっている、というだけだ。

 
 でもさー、それでもコレ、『さばきの黒薔薇』よりはずーっとマシだよー。
 だって、美しいもん。
 『さばきの黒薔薇』は物語が破綻以前のまちがいだらけでどーしよーもなかったうえに、美しくなかったからね。なぜ髪の毛ナシのターバンもの……。

 『花舞う長安』は、美しい。それに尽きる。
 そしてタカラヅカは美しくてナンボだ。ゆえに、この作品に価値はあるのだ。

 文字数ないんで、つづくー。

     

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