さえちゃんが、かわいいのだ。

 もう何回目かわからない、月組『飛鳥夕映え』を観ながら、思った。

 さえちゃん鞍作、かわいい……。

 
 最初わたしは、首を傾げていた。
 鞍作というキャラクタが、どーしても理解できなかった。掴めなかった。
 脚本が悪いせいだと思った。演出が悪いせいだと思った。
 そして。
 何度か観ているうちに、気がついた。
 たしかに脚本も演出も悪い。でも、さえちゃんが悪いのも、事実。
 鞍作という役は、「トップスター」あて書きキャラだ。タカラヅカの「トップスター」ならば、似合って当然の役だった。
 周囲の人全員から愛され(もしくは憎まれ)、英雄肌で世界の中心にどんと立つヒーロー像。
 仮にもヅカのトップに上りつめた人ならば、できてあたりまえ、ハマってあたりまえの役。
 なのにさえちゃんは、この役を持てあましていた。ハマることができなかった。
 技術の低さもそうだが、なによりセンターとしての吸引力に欠けていた。
 英雄に見えない。
 トップに見えない。
 それがいちばん、痛かった。

 この事実にはかなりがっくりきたので、さえちゃんに関してはもうあきらめていた。
 さえちゃん以外の人を見てたのしもう。
 そう割り切ってた。

 ああ、なのに。

 なんか、さえちゃんがかわいい……。
 鞍作がかわいい……。

 なんか一段とハスキーになった声がかわいい。
 英雄には見えないけど、たよりないぽやぽやした男の子に見えるけど、それはそれで、いいかもしれない。
 鎌足@かしげには相手にされてないっぽくて、誘って振られて「がーん」て顔してるのがまた、かわいい。振られるとは思ってなかったんだな、おぼっちゃま……。かわいいぞ。

 さえちゃんに期待して、裏切られてヘコんで、あきらめて、それら全部を突き抜けちゃったみたい。

 なんかもー、どーでもいー。かわいいからゆるーす。

 はっ。
 この心境って、後水尾天皇@花供養の心境?!
 色即是空、すべては無。
 悲しみも苦しみも、突き抜けて悟りの境地へ。

 
 さえちゃんは進化してます。亀よりのろいけど、確実に前へ進んでいます。
 ムラよりは東宝の鞍作の方がいいよ。
 少しずつだけど、彼がどういう人なのかが見えてきた。

 
 かっしー鎌足は、笑っちゃうほど悪役。
 鞍作を愛しているよーには見えなかったな。あまりに悪役を極めすぎていて。
 むしろ、誰からも嫌われた経験のない鞍作が、鎌足に拒絶されて、その反動でfall in LOVE しちゃってる感じで愉快でした。
 鎌足に片想いしてる鞍作か……。その方がいいなー。さえちゃん鞍作は、おとなしく受キャラしてた方がいいのよ。もともと受属性なんだから。
 鎌足を振り向かせよう作戦、を、軽様だとか麻呂くんだとかに協力要請したりしてさー。気を引きたくて部下を引きつれて踊ってみたりさー。つっても鎌足は、同期3人で飲んで喋るのに夢中で、鞍作のダンスろくに見てくんないけどさ。
 惚れられるのがあたりまえ、口説かれるのがあたりまえで、自分からはなにもしたことなかったから、アプローチの仕方がわかんないままだったから、ついに気持ちを伝えられないまま、暗殺されちゃうのね。
 かわいそうな鞍作……ほろり。

 鎌足の悪役度・冷酷度が突き抜けていることと、鞍作のキュートさが上昇していたおかげで、そんな腐女子舞台を観ました、今回。

 片想い鞍作。いいじゃん(笑)。

        

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