どんな駄作でも、重ねて観劇しているうちに、いろいろ考えてしまうものです。
 いいとこ探しなんかしてしまうもんです。

 星組公演『花舞う長安』
 言わずとしれた大駄作で、語るべき言葉もない作品ではありますが。

 そーだな、目に美しいってことの他にも、美点はあるわ。

 ケロの演じている役が、攻キャラだ。

 わたしはもともと攻キャラ好きなので、好きな人が攻をやっていると、それだけでどきどきするのですわ。
 昔はケロちゃん、ふつーに攻男だったのに、『ゼンダ城』あたりから受もOKになっちゃって、『血と砂』では総受してるし、以来おやぢをやろーとテロリストをやろーとどーにも受くさい人になっていたんですが。

 そうよ、陳玄礼は攻キャラじゃん!!

 しかも相手、玄宗@ワタルだし!
 ワタさん相手に受けてばっかだったのに、最後に攻キャラかよ! すげえや! 退団御祝儀か?!(チガウ)

 
 さて、この陳玄礼という男。

 もともとどーしよーもない芝居のどーしよーもない役のうちのひとつでしかないわけなんだが。
 最初に首を傾げたのは、ケロ本人の役の解釈についてだった。

「楊貴妃の次に、玄宗皇帝のことを思っている役」
 だそうだ。

 …………はにゃ?(首傾げ)

 えーと。
 悪いけど、そんなふうに、ぜんぜん見えなかったんですけど。

 陳玄礼という男の印象は、なんといってもだ。
 冷酷な無表情、酷薄な笑い。傲慢で腹黒い言動、二枚舌。

 玄宗を愛しているというより、玄宗を利用して、おいしい汁を吸っている感じ。
 色ボケ皇帝を冷笑しつつも手のひらで転がし、自分の身の安泰をはかっているよーな。
 ジュード@LUNAをさらに能動的な悪役にした感じというか。
 博多座を観たあと、ざーっとWEBで感想を探して読んでみたけど、陳玄礼を善人だと思っているものは見あたらなかったぞ?? なにか企てていそうだ、でもなにもなかったなあ拍子抜け、てのが大方の意見じゃないのか?

 玄宗のことを本気で愛している役だったのか。誠実に仕えている役だったのか。

 そんなの、ぜんぜんわかんねーよ。

 
 だって、完璧に悪人顔じゃん!!
 むやみやたらと三白眼光りまくりじゃん!
 浮かぶ表情が、冷酷感際立ってんじゃん!
 他人踏みつけにするの平気っちゅーか、ソレ仕事にしてそうじゃん! それも大義のためではなく、私欲のために!

 悪人じゃなかったのか……。
 玄宗みたいなアホ皇帝を、本気で愛している役だったのか……。
 ギャフンな気持ちっす。

 
 まあねえ。
 たしかに、クライマックスの楊貴妃差し出しシーンが、前後のつながりが悪いくらいひとりでアツいけどね、陳玄礼。
 見れば見るほどアツくなっていって、今でこれだけアツいなら、千秋楽になるころにはどれだけアツくるしくなっているのかと不安になるくらいに、アツいけどね。

 
 あー、つまりだ。
 陳玄礼っちゅーのは、顔で誤解されがちな人ってことだな。
 悪人顔で、本人はにこやかにしているつもりなのに腹に一物あるように見えてしまうのね。本人はやさしく微笑んでいるつもりが、企み笑いにしか見えないのね。
 すばらしい。
 なかなか個性的なキャラクタではありませんか。

 相棒の楊国忠@しいちゃんが、どっから見ても100%善人なのと対照的。

 楊貴妃の身内ってことでいい思いしまくった楊国忠がなにをやっても善人に見えて、身ひとつでがんばって仕えている陳玄礼がなにをやっても悪人に見えるってのは、人生皮肉ね、って感じですてきですよね。

 
 そう思って見れば、なんともかわいらしい人物です、陳玄礼。
 ああ、こんなに冷酷な目つきなのに、ほんとうは誠実。
 ああ、こんなにいやらしい薄ら笑いをするのに、実は真面目。
 二枚舌も陰謀も、みんなみんな愛する玄宗のため。
 無私の境地で我が君にお仕えしているのですよ!

 
 だからこそ、クライマックスではやたらアツいんですよお客さん!
 ある意味玄宗以上にテンパってるのは、そのせいなんですよ。
 このまま暴走して、さらにさらにアツくなることでしょう。ウバルドの暴走が止められなかったように(笑)。

 
 最後の役が、大好きなワタさんを愛している男の役でよかったね、ケロちゃん。
 てゆーか、ケロが演じているからそーゆー解釈になったんじゃないかと思ってみたりなんだり……ゲフンゲフン。

 
 そうよ、駄作だからこそ、なにかしらたのしみを見つけなければならないわ。そうやってポリアンナはしあわせになるの。

 陳玄礼×玄宗。
 ケロ攻のワタ受。
 最後の最期に、ついにワタさんをも転がせる役ですよ。そう思えば、さらにたのしくこの芝居を観られます。ヲタクでよかった。よかったさがし。

 具体的なシチュエーションとエピソードは、これから通って考えます。
 腐女子人生に、敵などナシ。

         

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