さて。
 観てからもう1週間経っているので記憶の風化が著しい、ムラ公演の感想いっときます。

 往復夜行バス使用の車中2泊日帰りでケロトークショーを見て、その翌朝はムラで大劇とバウのダブルヘッダーっすよ。正気とは思えないスケジュール。
 さすがにテンションの落ちているわたしは、友人と約束でもなけりゃ、ムラまで出向く気力がないのだわ。
 kineさんと一緒だー! というおたのしみのみで、老体に鞭打ってムラまで遠征しました。
 うっかり阪急電車で熟睡してて、宝塚駅に着いてることに気づかなかったよ……気がついたときは車両に誰もいないの。焦ったわ。

 えーっと、どっちを先に観たんだっけか。本気でもう記憶が薄れている……。

 たしか、花組バウホール公演『くらわんか』を観たんだっけな。主演・蘭寿とむ、演出・谷正純。

 上方落語原作の、人情喜劇。
 出演者は若手のみ、主役を含めた役替わりありまくりの、落ち着きのない企画。
 わたしが観たのはパターン2です。

 主人公の八五郎@らんとむは、老若男女、人間妖怪神様問わずなんでも来い!なタラシ男。2時間の舞台の間に、いったい何人の男女をタラシていただろう。
 初っぱなから、梅川@城火呂絵、甚兵衛@汝鳥伶というばーさんとオジサマをタラシていたので、目眩がした。
 じじばばから行きますか!! すげえや八五郎!
 てゆーか、汝鳥伶様にプロポーズするらんとむ! そしてそれにときめく汝鳥伶様!! うわー、いいもん観た……ってゆーかディープ……。
 最初にばーさまとラヴシーンで、次がじじい相手にプロポーズだから、もうなにもこわくないよね。
 八五郎の次のお相手は、貧乏神@朝夏まなとだった。
 えーと、性別は「オス」です、念のため。貧乏神は男性。びんぼくさい気弱なイケメンにーちゃん。
 この気弱なイケメンにーちゃんを、八五郎さんてば手込めに……じゃねえ、口手八丁で虜にしちゃうんですわ。
 敵の刺客だったマライヒを、自白させたあと恋人にしちゃったバンコランを彷彿とさせますわ。
 「ろんりー・ぷあ・ごっど」と哀しげに歌うビンちゃん@貧乏神に、色男ビーム炸裂で「ろんりー・ぴゅあ・ごっど」と歌い返す八五郎の凶悪なこと!! うっわー、ビンちゃん堕ちちゃったよー、「あなたの妻になります、どうなとしてください」って崩れ落ちちゃったよ。動揺。

 てなふーに、ストーリーはただひたすら鬼畜色男八五郎の総攻ハーレム物語。
 出てくるキャラクタほぼ全員、八五郎のラヴァーです。
 どれだけ八五郎が凶悪にハーレムの王様をしているか、ってだけで、話が進んでいく。
 なにしろ八五郎には親衛隊がいるしな。
 「八五郎LOVE」って書いたハチマキとはっぴをおそろいであつらえた男たちがいるのよ。彼らは八五郎のためだけに生き、彼の言動に奔走するの。どれだけ八五郎が最悪でも、人の道を外れていようとも、その愛のかけらも恵んでもらえなくても、親衛隊の男たちは八五郎のために生きる! 罪を犯す! ドロボウ上等! 愛する八五郎のためだイェイイェイ!!

 えーと、八五郎の凶悪色男ぶりを眺めているだけで、気がついたら幕が下りてました。

 で結局この物語のヒロインは、ビンちゃんだよねえ?

 八五郎の妻になった、気弱なイケメンにーちゃん。
 なし崩しにカラダを奪われ、気がついたらココロまで奪われてました、なんかオレの人生まちがってるよーな気もするけど……彼の笑顔を見たらそれだけでとろけちゃうから、ま、いっか。
 てゆー話だよねえ?

 抱腹絶倒でした、そーゆー意味で。

 
 喜劇としては、わたしはあまり笑えなかったんだけどな。
 ギャグの先が読めるし、バカで笑わせるのは好きじゃないんだ。低脳な人間には、笑う前に怒りがわく方だから。
 でも年配の方たちにとてもウケていたので、それはそれでアリかな。
 笑うところまでいかなくても、おもしろい芝居ではあったし。

 それにしても、ものすげー大阪弁を聞いたって感じ。
 本気でコテコテだぁ。
 関東人のkineさんにはわからない言葉が多かったそうだ。そりゃそーだろー。
 わたしは大阪土着民なので、ヒアリングもできるし翻訳もできるけど、使ったこともなければ、日常ではすでに死滅している言語を立て板に水であびせられて、感心したわ。
 てゆーか、なつかしかった。
 うちのおばーちゃん、あんな単語使ってたわ……そうかアレ、大阪弁だったんだ……おばーちゃん以外口にする人いなかったから、てっきりおばーちゃんの造語だと思ってた。
 大阪土着民ですらひるむ、死滅した言語による芝居。もちろん、それはそれで意味のあることだ。
 DVD出すときは、標準語字幕入れてもいいんじゃないかな。バイリンガル芝居DVD。

 
 八五郎@らんとむは、熱演でした。
 彼が実力派だということは、知っている。これまでの実績からいって手堅い芝居を見せてくれるだろーことは、予想がついていたさ。
 期待に違わぬ主役ぶりでした。
 てゆーかよくやったな……2時間出ずっぱりの台詞の洪水。
 らんとむならさもありなん、とは思いつつも、やっぱよくやった。
 鬼畜男ぶりも板に付いてたよ。そーだよな、攻キャラをやってなんぼだよな、いよっ、オトコマエ!

 予備知識ナシで観に行くのが通常なので、今回もそうだったんだが、たじろぐほど、出演者がわからなかった。
 知ってる人がいない……見分けがつかない……誰なのアナタ……。
 唯一わかったのは、幽霊小糸@きほちゃんだけでした。
 らんとむときほちゃんだけ? それ以外まったく知らない、わからないなんて……。

 小糸@きほちゃんは、納得のうまさ。
 ほっとする堅実なヒロイン芸。声からしてチガウよ。
 スタイルいいから、幽霊姿がコワいぞ(笑)。

 休憩時間にkineさんとふたりで出演者表の前で、ぼーぜんとしましたさ。
 名前を見ても、ぜんぜんわかんないんだもんよ。
 顔の見分け云々以前に、ほんとに知らないんだわ。

 2番手位置の役である貧乏神@朝夏まなとだって、名前ひとつ知りませんでした。2002年初舞台って……そりゃ知らんわ……。中卒だから本気で若いってばよ。

 花組といえば、新人公演の低レベルさに目眩がした組ですが、この公演ではそれほど下手だと思わなかった。
 たぶん、時代劇だからだと思う。「別世界フィルター」かかってるんだな。男役の声や立ち居振る舞いができてない女子校の文化祭だったとしても、大阪弁だし時代劇だし、勢いでなんとかなるんだと思う。
 『La Esperanza』みたいなナチュラル系現代スーツ芝居だと、同じレベルだと目も当てられないものになっちゃうんだなあ。

  
 おもしろかったので、別キャスティングでまた観てみたいわ。
 しかし。

 コレって、ワークショップだよね? 料金もワークショップ料金にした方が、よかったんじゃないのか?

           

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