「ひとりで行くには遠すぎる。だって寂しいんだもん!」な名古屋行き、今回の同行者はkineさんでした。

 そのkineさんと、行きのアーバンライナーでいろいろ話していて、何故か映画の『タイタニック』の話になった。

 そこでkineさんの名言。

「『タイタニック』のヒロインの婚約者って、嶺恵斗が演じそうな役ですよね」

 爆笑。
 大ウケにウケました!

 『タイタニック』のヒロインの婚約者。
 悪役の中の悪役。
 傲慢で卑劣で小物。
 いいとこひとつもナシ! 同情の余地ナシ! ええい、この卑怯者めっ。ボーフラ並の小物めっ。

 日本人が好きな「美形悪役」なら、もっと筋が通っていて、どんなに「悪」でもどこかいいところや共感できるところがあって、暗い過去だとか傷があって、「あの男も、ほんとうは被害者なんだわ」とか「ほんとうはいい人だったのよ。どこかで道を違えてしまっただけで」とかゆーもんなんだが。

 さすがアメリカ映画、見事な悪役ぶり(笑)。
 「悪」というより「卑劣」さが際立っていて、ヘタレ感5割り増し!!

 そうだよなあ、嶺恵斗に演じて欲しい役だよなあ。
 ハンサムでセレブな、卑劣で下劣な、ケツの穴の小さい男!!

 
 えー、今さら言うのもなんですが、わたしもkineさんも、嶺恵斗くんが大好きです(笑)。

 
 好きだけど、中日公演『王家に捧ぐ歌』のケペル役は、見事に自爆していると思うの。

 失敗の理由はひとつ、元キャラまんまを演じようとしているから。

 元のケペル……親友ラダメスにラヴラヴな、まっすぐで迷いのない熱血漢。
 なにしろ感情表現がストレートだから、なんでもそのまま顔に出る。
 怒りや悲しみに素直に翻弄されるが、それでも自分の役割や立ち位置を見失わない男。
 人一倍傷つくけれど、それでもちゃんと自分で立っていることのできる男。

 それをそのまんま演じようとして。
 恵斗くんがやっているのは、「ヘタレて泣いている男の子」だ。

 
 最初のウチはいいんだよね。「軍人」として迷いのないケペルは、ふつーに二枚目でいられるから。恵斗氏は恵まれた容姿ゆえに、立っているだけで見栄えがする。

 問題は、1幕の終わりから。
 親友ラダメスの変心にショックを受けるところから。

 恵斗ケペルは、べそをかいてる子どものよーになってしまう。

 ぶっちゃけ、表情が汚いんだわ。

 顔、くしゃくしゃ。
 たしかに「ショック」の表情であり、「慟哭」の表情であるんだろうけど。
 「最強国エジプトの武将ケペル」の表情じゃない。

 幼すぎる。

 クールな顔、ニヒルな顔は得意なのにね。
 泣きの顔は、ここまでダメダメなのか……。

 元々の持ち味と、「がんばって元キャラと同じ表情をしよう」としているところが、ものすごくちぐはぐだ。
 心の動きもキャラ立ても、元キャラまんまであることを求められているせいなんだろう。
 元キャラのコピーをするはずが、技術が足りていないゆえに、盛大に自爆している。

 ケペルはヘタレててもいい役っちゃーいい役だけど、「大人の男」であるうえでよ?
 ママに叱られた坊や、になっちゃダメなのよ?
 「ラダメス、なに言ってんの? そんなのボク、聞いてないよ、うわーん!!」じゃこまるよー。

 初日明けに観たときよりさらに、ヘタレ度が増していたんだよね。
 役に入れ込んでいるせいだと思う。
 ケペルとしての心の動きが深くなっているから、余計に大きく泣いてしまうんだと思う。
 そしてその泣き顔は、かなしいかな美しくない……。「役者」の顔じゃない……。

 月影千草先生の言い方を借りれば、「ケペルの仮面をかぶりきれていない」のだわ。
 そこで泣いてるの、ケペルじゃなくて「嶺恵斗」自身でしょ?

 圧倒的にキャリアが不足しているんだから、仕方ないけどね。
 「自分の仕事をちゃんとこなしている」恵斗くんしか見たことなかったから、自爆している姿を見ておどろきました。

 
 と、ここまで言いたい放題言っておきながら、だ。

 ガキんちょケペルも、ソレはソレでたのしくていいぞ、っと(笑)。

 表情と感情の流れ、キャラ立てがめちゃくちゃで、一貫性がないところが、味になっている。
 時折とても「黒い」のに、つつくと「わーん、ママぁ」てな顔で泣き出す男。
 このヘタレ男、ちょっとここへいらっしゃい、一発張り倒していいかしら(笑)、て感じが、よいではないですか。

 それこそ、『タイタニック』の悪役氏のよーに。

 
 エチオピア・トリオも同じよーに失敗してるのに、エジプト・コンビがOKなのは、何故か。

 もちろん、わたしが恵斗氏を好きだから、多少の失敗も微笑ましいわ、てな意味合いもあるが。
 それだけじゃなく、エジプト・コンビの方は、片割れのメレルカ@みらんくんがきちんと成功しているために、ケペルの自爆ぶりが「味」になることが可能なんだと思う。
 ふたりそろって自爆されたら、きつかったろうけどねー。ひとりだけなら、いいコントラストになるよ。

 メレルカはひたすら男ぶりを上げ、ケペルはヘタレていく、と(笑)。

 キャラが立っていいじゃないですか(笑)。

 
 ほんとにもー、役者の個性に合わせて、演出変えてくれりゃーいいのになー。
 かっこいー嶺恵斗のケペルも見てみたかったよ……。

 

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