梅芸会員先行オサコン、取れませんでした……。
 しょぼん。
 せっかく朝から起きたことだし、と(いつも遅くまで寝てるのがばれる発言)お買い物に行くことにした。

 ええ、コミケカタログを買いに!!

 前回買い忘れたので、今回は肝に命じてますよ。
 で、せっかく梅田に来たんだし、そーだ『Ernest in Love』観よう、と思って駅の書店で開演時間を確かめると。
 千秋楽じゃないですか、今日。
 時間もぎりぎり、駅から走ったよ。

 いつもチケット事情のいい公演なんで、行けば観られるとわかっていた。……が、ものすごかったよ、需要と供給のギャップ。

 サバキが禁止になった昨今、あれほどものすげーさばきの嵐を見たのは、ひさしぶりだ……。
 そして客引きの情熱もすごかったなー……みんな必死だー。

 ふらりと劇場に行って、チケットを選んで買って、気軽に観られる、てのは、いいもんですよ。
 そのうえ、とても上質な作品だし。

 あんなにチケット余ってるなら、そのへんにたむろしている若者たちとかにも観て欲しかったなー。価格破壊が進んでたんで、映画くらいの値段でB席なら観られただろうし。
 だまされたと思って、一度観てみてよ。ヅカだから、ミュージカルだからって、毛嫌いしないでさ。
 マジ、おもしろいから!

 と。わたしに勇気と根性があったら、客引きでもしたいくらいだったわ。
 空席のまま終わらせるのは、心から惜しいもの。

 
 大好きだ、『Ernest in Love』

 
 わたしはほんと、キムシン作品好きだなー。
 エンタメ性とヲタク性の、正しき融合。
 基本的にセンスいいんだよね、彼は。イタタな面も多分に持ち合わせているが、才能あるクリエイターが性格悪くてもどっかまちがっていても、そんなの別に構わないし。つか、そのカンチガイ・テイストをなまあたたく眺めるのも、醍醐味のウチだと思ってるし。

 やはり、センスの問題は大きいな。
 キムシンのうるさすぎる自己主張も、バリバリの演歌(本人はお洒落で新しいつもり)で演芸場以下のダサいセットと演出(本人はお洒落で新しいつもり)でやられたら、きっとスルーできなかったと思う。
 お洒落な美人が性格悪いのは許せても、向上心も見えないぶさいくが性格悪いのは許せないもんなー(笑)。

 センスが良くて、エンタメとしておもしろいものを、ヲタクのハートもゲットしながら巨大劇場向けに作る。
 これは、得難い才能だと思う。

 キムシン、いい仕事してるよなー。
 てなことをわたしが言ったとき、誰だっけかが言った。

「海外の作品をまんまこちらの舞台に持ってきただけだから、あんまり演出家が誰とか関係ないんじゃない?」

 わたしは元の作品を知りません。
 だから、どこまでが元のままで、どこからがキムシンのオリジナルなのかはわからない。

 けど。
 これだけは、言える。

 海外ミュージカルを翻案した作品であったとしても、演出家の手腕によって出来映えは左右する。

 わかりやすい例を出してみた。

「じゃあ、『ファントム』は?」

「……そうか、キムシン、センスいいよね」

 友人、前言撤回。素直かつ明晰な返事。

 同じよーに海外の出来のいい作品を翻案したとしても、演出家にセンスがないと、ダメダメ作品にしかならないから(笑)。

 つか、ただ移すだけじゃないだろ。タカラヅカという特殊な劇団で上演する以上、演出家の力量は大きく関わっているはずだ。
 でないと、『エリザベート』の小池修一郎があそこまで名声を得ているはずがない。
 原作付き作品を書く演出家のことを軽く見る風潮がヅカファンにはあると思うけど、オリジナルを書く才能と原作をアレンジする才能は別物で、どちらがより価値があるとかゆーもんじゃないから。
 作詞作曲して自分で歌っちゃう人がいて、作詞や作曲のプロがいる、それと同じことだから。歌うところまで自分でやらないただの作曲家は、シンガーソングライターより価値が低い、というのと同じくらい、意味のない話だ。

 まあわたしはそれでも、オリジナルでおもしろいもの書く人の方が好きだけど(と言ったら論旨が破綻するか・笑)。

 とりあえず、原作ものである『Ernest in Love』は、おもしろい。
 センスが良くて、たのしく幸福になれる物語だ。

 他愛ないストーリーと少ない登場人物、そこに笑いと愛と感動を詰め込んである。
 物語は正しく進み、伏線は小気味よく作用し、期待通りの大団円へと辿り着く。

 とくにわたし、伏線がいちいち正しく機能しているのが好き。気持ちいい。
 1幕で蒔かれた種はちゃんと2幕で回収される。
 それこそ、アーネストのついていた嘘が、すべて真実だったように。

 千秋楽ではアーネスト@あさこ、よーやくキュウリ・サンドを食べることに成功していた。
 アルジ@きりやんが油断しているうちに、ささっと口へ。
 あー、もー、かわいー。

 それからさらに、マフィンも食べていたぞ、アーネスト。
 食べていたというか……食べさせられたというか。
 マフィンと人生を語るへっぽこコンビ、アーネストとアルジャノン。下手にハケるその寸前に、アルジがアーネストの口にマフィンを押し込んだ。
 アーネスト、フガフググ。
 まん丸に開いた口と目がおかしいやら、かわいいやら。

 そんな乱暴に突っ込んじゃだめだよ、アルジ。やさしくしなきゃ。

 残念ながらわたしは、「家族が欲しかった」と歌うアーネストにはあまり心が動きません。
 なんでだろ。
 なにやっても彼がかわいくて、それどころじゃないせいかしら。
 それよりも、グウェンドレン@かなみちゃんとのラヴラヴ・デュエットとかの方が目頭が熱くなる。
 愛を愛ゆえに愛のただ中で溺れているバカップルぶりに、なんか幸福感と切なさを刺激される模様。

 観ることが出来てよかったよ。

 あの鳥かごのよーな温室のオーケストラ、かわいくてお洒落なセット、馬鹿でかいハンドバッグ(笑)、牛とヒツジ、ぱたぱた自動で絨毯がセットされる階段、なにもかも、この目で実際に見られてよかった。

 繰り返されるカーテンコール、あたたかい、たのしい時。
 これで最後なんだね、もう会えないんだね。
 このキャストに。
 アーネストに、アルジャノンに、グウェンドレンに、セシリイに。

 ……コミケカタログを買いに行かなかったら、見逃しているところだったよ……。


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