千秋楽から数えてみっつめ。
 前日の夜公演から観た。
 13日の夜は、阪急交通社貸切公演。わたしはサバキで潜り込んだ。なにしろ『長崎しぐれ坂』なので期待していない。観られればいいや。ひとに頼めばS席が手に入るとわかっていたけど、最初からB席狙い。他ならいざ知らず、『長崎』に8000円も出せないわ。立ち見でもいいくらいなのに。
 そー思って手に入れた、B席最前列。なんてすばらしいチケ運!と、我ながら惚れ惚れした(笑)。
 ……結果、その『長崎』で泣いてしまい、盛大にうろたえたんだけど。

 この貸切公演が、なんかすげーよかったのだわ。
 えらく吸引力のある舞台で。
 すごい回数通っているサトリちゃんも、「今回すごかった」とベソかき顔で言っていたから、楽を前にしての相当なハイテンション公演だったのだろー。

 司会は元雪組のリンゴさん。
 ええっ、なんかすげーなつかしい人だぞ? 突然辞めちゃった超個性派女役。このリンゴさんの司会が、ものすげーことになっていた。
 なにしろ、英真組長を「ジュンコちゃん」呼ばわりだもの。ええっ、ジュンコ、ちゃん? 我らがくみちょが、ちゃん付けですかい?!
 組長より上級生なんだもの。トドがやんちゃながきんちょのころから知っている人だもの。誰も逆らえない。

 幕間の抽選会のプレゼンテーターはとなみちゃん。そっか、となみちゃんは阪急交通社のイメージガールだ。となみちゃんが登場すると歓声が上がった。やっぱすごいよ、ただの下級生が出るのと反応がチガウ。なんか得したー、って気になるなー、ゴージャスな美少女がこうやって特別に出てきてくれると。
 ……喋りは下手だったけどな……となみちゃん……。

 はじまる前もこの幕間抽選も、リンゴさんは野放しって感じで自在に喋りまくっていた。主要出演者の「健康法」を聞いて回ったそうで、それをまくしたてていた。

 このリンゴさんのマイペースぶりは、終演後の「ご挨拶」のときにすばらしい結果となる。

 最初から、終演後にはふたりの主役、トドロキとワタルくんの挨拶が特別にある、と言っていた。たのしみにしていてくださいね、と。まあいつもの貸切公演だわな。

 わたしは貸切公演ってあまり観ないんだけど(カード持ってないから。無職ダメ人間にカードは作れない)、貸切公演のラストの「お客様からの花束贈呈」は夢だわー。一生のうちに一度当たってみたい……。舞台メイク済みのスター様と間近で向かい合ってみたいよ(笑)。
 その貸切公演ならではの、抽選で当たったお客からプレゼントを受け取るために、上から3人が舞台に現れた。すなわち、トド、ワタさん、檀ちゃんだ。
 そのうち、挨拶をするのはトドとワタさんのみ。檀ちゃんはなんの声を発することもなく、ただお辞儀するのみの役割。

 しかし。
 司会のリンゴさんは華々しく暴走中。
「檀ちゃんも最後だから、挨拶しとこー! 時間、いいよねっ?!」
 てな感じに、勝手に仕切ってしまった……。

 おかげで、檀ちゃんの挨拶が聞けてしまった……。

 明日で退団。
 今日はジェンヌである最後の夜。
 そんな我らが美神、わたしのドルチェ・ヴィータの声。

 予定外だったろうに、檀ちゃんは端的に瑞々しく現在の心境を語り、明日への意欲を口にして終わった。いつも思うことだけど、檀ちゃんのお辞儀の仕方、すごく好き。

 ここで「檀ちゃんの退団を見送る会」になってしまった舞台上。
 ワタさんはともかくとして、あの轟悠が、檀ちゃんへの言葉を述べた。
 檀ちゃん退団公演のムラ千秋楽で「でんでんむし」を歌って顰蹙を買った男が、生の声で「この公演に出られたことで、檀ちゃんを見送ることができてうれしい」とごくふつーに挨拶しましたよ。
 なんだよトドロキ、ふつーの挨拶もできんじゃん! 変なポエムや童謡を歌わなくても、自分の言葉で喋られるんじゃん。愛を口に出来るんじゃん。……涙。

 なんだか、プチ千秋楽みたいでした。
 拍手の大きくあたたかいこと。

「みなさんも、こんなに長くスターさんの挨拶を聞けてよかったですねーっ!」
 と、リンゴさんは半ばヤケのよーに叫んでいました。彼女のスタンドプレイで時間が大幅にオーバーしちゃったんだろーなー。司会者としては失格だよな。
 でも。
 ありがとう、リンゴさん。
 「ただの貸切公演」を「千秋楽イヴ」にまで持っていってくれて。
 すごくすごく、うれしかった。

 そして、否が応でも盛り上がる、お別れの気配。
 明日が千秋楽。


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