いてもたってもいられなくなり、急遽博多を目指した。
 『マラケシュ・紅の墓標』千秋楽を前にして。

 こんなに切羽詰まってからじゃ、良席なんか期待できない。
 席なんかどこでもいい、劇場にさえ入れればいい。3階の立ち見だってかまわない!

 と、思っていたけど。

 いざ、博多座前に着いてしまえば、手が届く範囲での欲望が鮮明になった。

 すなわち。

 そのか席をねらえ。

 今まで観劇した際は、ありがたいことに前方席ばかりだったので、そのかの客席降りが捕獲できなかった。
 『エンター・ザ・レビュー』では3カ所客席降りがあり、最初がコメディアン@ゆみこ、次が旅の若者@みわ・まつ・みつる(たぶん。ひとりしか見てないから記憶が不確か・笑)、そして3つめが出演者ほとんど雪崩降りする。
 その出演者ほとんどがどどーっと客席降りし、通路いっぱいひろがって歌い踊るときの、そのかを捕獲できる席が欲しかったの。
 なにしろそのか、客席降りの先頭なのよ。いちばん後ろまでどわーっと走って行っちゃうんで、前方席だとまったく見えないの。

 どーせ前方は手に入らない。
 後方なら、そのか席をねらう! そのかに触るんだっ!(鼻息)

 わたしが鼻息荒く博多座にたどりついたとき、わたしよりはるかに鼻息と脳内麻薬分泌の激しいnanakoさんが、すでに当日券の列に並んでいた。
 自分の席に荷物を置いたわたしは(博多座は当日券の列に椅子を出してくれるのだ。すばらしい劇場だ)、ずーっとnanakoさんの席の前にしゃがみこんでお喋りしていたんだけど。

 キャンセル席は特に出ず、どうやら通常の当日販売席のみらしい、と先に知り。

 わたしたちは、どの席を狙うかを話し合った。
 ええ、わたしとnanakoさんだけでなく、他の並んでいる人まで一緒になって。

 上手後方席なら、みわ・まつ・みつるが横を通る。そして、大勢客席降りのときも、誰か来るから、二度オイシイよね。
 それに比べ、下手後方席はそのかがやってくるだけで、あとは誰も通らない。

 それでも。

「下手よね!」
「そのか席だよね!!」


 みんなそのか狙い(笑)。今回はまっつよりそのか……。

 いちばんに並んだ方は、今回華やかにそのかオチなさったそーで。徹夜してまでそのか席を狙う!!

 その人と一緒になって「そのか! そのか! そのか!」と叫び続けるわたしに、nanakoさんはひとこと。

「みんな、そのかオチして……」

 えっ?!
 みんな? みんなって誰よ?

「ああ、緑野さんはもともとそのか好きだっけ」

 そうよ。もともとよ。べつに、今さらオチてないわよ。オチてないもん。

 
 たとえ、

「そのか見て泣くくらい、そのかファンなんでしょ」

 と、ドリーさんに断言されてしまったとしてもだっ。

「ケロファンからそのかファンって、わかりやすすぎ」

 とか言われてしまってもっ!!

 当日券いちばんの人に「ケロファンなんです」と言ったら、「ああ、だから今はそのかちゃんなんですねっ。似てますもんねっ」とふたつ返事で言われちゃったり、数年ぶりにヅカを観た友人が劇場前のスカステテレビを見て「ケロに似てる人ってわかった。花組の人でしょ。ニュースとかいうので流れてた」とにこにこ言ってくれたりしたとしてもっ。

 べ、べつにわたし、ことさらオチてないもん。

 そのかのことは、昔から好きだもん。このブログ、さかのぼって見てよ。昔からそのかそのか言ってるから。
 『ミケランジェロ』新公から、そのかだったもん。特別ケロに似てないときから、そのかだったもん。

 ……オチてないもん。
 い、今さら……どきどきどきどき。

 
 わたしの執念が通じたのか。

 前楽、大楽とも、無事にそのか席Get。

 1階席だ、客席降りだ、そのかだそのかだ!!
 そのかに触るんだーー!!

 
 つーことで。

 緑野こあら、はじめて桐生園加に触りました。

 前楽は、つつましくタッチするのみ。
 大楽は、ここぞとばかりに握らせていただきました。

 あ、どっちも手ね(笑)。他のとこには触ってませんよぅ。

 前楽はnanakoさんが隣だったので、ふたりで盛り上がりまくっていたし、大楽はそのかファンのいちばん並びの人が隣だったので、これまたふたりで「そのかー、そのかー」と大騒ぎしてました。名前呼んだら、ちゃんと来てくれるのよー、そのかちゃん。

 わーいわーいわーい。

 そのかのあの舞台メイクが目の前だよぅ。
 ちゃんと目が合うんだよぅ。

 舞台メイク、つーのがポイント高いんだよな、そのかの場合。(何気に失礼な言い方?)
 とろけてましたよ、ほんと。
 そのか仲間のお隣さんとふたり、そのか捕獲後にガッツポーズ。

 
 前楽もテンション高かったけれど、大楽の盛り上がり方はふつーじゃなくて。

 カーテンコールは終わらないし、寿美礼サマはぶっこわれててキャラがチガウし(笑)。「好きダー!!」とか叫んじゃう寿美礼サマってなに? すげー。
 客席も声出すし。温度チガウし。

 ノリのいいお隣さんとふたりして、わたしもきゃーきゃーやってました。

 終わらなければいいのに。

 今が永遠ならいいのに。

 ほんとうに、そう思うの。
 だから、拍手するの。手を振るの。声を出すの。

 何度も開く幕が、うれしくて。
 はかない「今」がつづくことが、うれしくて。

 目当ては『マラケシュ』だったんだけどね。『エンレビ』も大好きだったよ。
 むしろ、あのテンションの解放は、『マラケシュ』があり『エンレビ』にたどりつくゆえのものかもしれない。
 だから、なにもかもが愛しくて。

 
 ありがとう、博多座。
 あのとき、あの空間、あの時間のすべて。
 キャストもスタッフも、観客も。
 nanakoさんも、お隣さんも。
 幕間と後に半べそで「よかったね」を繰り返した、ココナッツさんも。

 いてもたってもいられない、そんな気持ちで走った自分のこころも。


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