星組全国ツアー『ベルサイユのばら』の話、その2。

 語りたいことはいろいろあるが、まずはストーリー解説から。

 「悪いのは全部他人。可哀想なのはいつも自分」と思って生きているフェルゼンとアントワネット。最強の似たもの同士不倫カップルにも、ついに別れのときが。ええ、メルシー伯に叱られたフェルゼンは「ボクは悪くないけど、叱られたから言う通りにするよ」被害者意識満々でアントワネットに会いに行く。

 別れを告げるとき、フェルゼンはわざわざ軍服を着ていく。アントワネットが好きなんだって。
 コスプレですか。
 アントワネット、コスプレフェチやったんや……ふたりでそーゆープレイしてたんやな。

 だってフェルゼン、30過ぎてなお、留学生なんですよ。
 18のときからずっと、フランス留学中。ありえねえ(笑)。
 だから、軍服を着ていたとしても、本物の軍人ではありません。原作では、ちゃんと軍隊に配属されているんだがなー。植爺脚本では、ずーっと留学中。いつまでたっても留学生。

 いくらお貴族様でも、30過ぎて留学生ってのは尊敬されることなのか? 実質大したことはしてなくても、なにかしら地位や責任を得ている年齢なんじゃないのか?
 なのに、18のときから30過ぎてまで「社交界で磨きをかけるために」フランスで留学中……。18歳なら「留学生」でもいいけどさ……植爺、いくらなんでも酷すぎるよ……主人公をわざわざかっこわるくするのやめようよ……。

 別れを告げられたアントワネットは嘆きます。
 今までどんなにハッピーなときでも、いつも、このいつか来る別れに怯えていたと。
 ああ、そりゃ可哀想だなあ。つらかったろうなあ。と、思えるくらいには、ふたりはちゃんと別れてくれる。
 が。
 フェルゼンが去ったあとのアントワネットは、護衛のオスカルに逆恨みを爆発。突然の電波受信?!

「あたしはこんなに可哀想なのよ?! どーして慰めてくれないの?!!」
「でもねマリーちゃん、今、赤信号だから。ここ、横断歩道の上だから! 歩道まで歩いてよ、そしたらいくらでも慰めてあげるから!!」
「ひどい! オスカルちゃん、あなたには人間の血は流れてないのよ! だからそんなひどいことが言えるんだわ!! 同じ女ならわかるはずの痛みもわからないのね!」
「だから、赤信号なんだってば。お願い、歩道まで歩いてよーっ」

 アントワネットってさあ、「自分がなにより大事」なのね。自分が傷つくことは爪の先でも許せなくて大騒ぎするけど、他人を傷つけるのは平気。てゆーか、当然の権利? 「あたしがこんなに傷ついてるんだから」ってことで、関係ない人を傷つけることを正当化するの。

 どうしてここで、アントワネットをこんな電波女にしちゃうの? 彼女がこの別れを黙って耐え、それを見ていたオスカルに「おいたわしい」と言わせればいいじゃないの。
 そして、同じ女としてアントワネットをいたわってあげられない、軍人という立場のオスカルが、自分で自分を責める。自発的にね。そうすれば、植爺のやりたかった流れをちゃんと表現できる。
 なのにわざわざ、最悪の言動を取らせる。

 植爺脚本は、メルシー伯のこともそうだけど、「説教される」→「嘆く」→「動く」なんだよね。そうしないと、キャラを動かせないらしい。
 叱られなくても、人間は自分で考えて自分で感じて、自分で動けるんだが、植爺には理解できないらしい。
 愛する人を思いやるとか、他人を攻撃せずに耐えるとかはありえない。人に言われてから大騒ぎして従う。

 さて、最悪女アントワネットが、「世界でいちばん可哀想なのはこのわたし〜〜♪」と、さんざんひとを傷つけてまくってから退場したあと。

 オスカルとフェルゼンのツーショット。
 オスカルとゆー人は、軍服を着て男たちと同じように生きているらしいけど、かなりヲトメでコドモ。
 彼女の言動は「今の学校体制は横暴だわ!」と意気を上げる学級委員長(学年首席)みたいだ。そして教師たち(プロヴァンス伯とかそのへん)に「コドモは黙ってろ(冷笑)」と言われてる。
 青い理想を持ってはいるが、なんの効力もナシ。
 そして、フェルゼンくんにずっと片想い。いやその、もう30過ぎてるんですけどね。うっかり手を触ってしまって、真っ赤になって背を向けちゃう、みたいな。
 原作では、オスカルはフェルゼンにタメ口です。地位も身分も、そして人間としての格も、なんの遜色もない関係ですから。親友ですから。しかし男尊女卑の植爺にかかると、オスカルはフェルゼンの前でナヨナヨ女言葉に近い喋り方をします。ですます調です。格下の言動です。

 ついでに言うと、ジェローデルも、オスカルに対してタメ口をききます。原作では、ジェローデルはオスカルを敬愛し、絶対服従の敬語なんだが。プロポーズしてなお、敬語なんだが。そこが萌えなんだが。男尊女卑の植爺は、地位も身分も関係なく、ただ「女相手だから、へりくだる必要なし」と呼び捨てにしたり同等以上の口をきいたり、あまつさえ暴力をふるったりする。
 このダイジェスト版では、ジェローデルがオスカルに手をあげるシーンはないが、最悪のキャラ破壊だぞ、ジェローデル。紳士たる彼は、愛する女性に手をあげることなんかありえないのに。敬愛する姫君に膝をつくことをよろこびとするタイプの男なのに。「バカな女は殴って言うことをきかせろ」「女は黙って男に従うべき」なんて意識とはかけはなれたキャラなのに。植爺のせいで、ひどい男に成り下がっている。
 
 なんにせよ、ヲトメなオスカルのヲトメすぎる姿に、フェルゼンは大変気をよくして「やっぱ俺ってモテるじゃ〜ん」と好き放題言って旅立ちます。
 「モテる男の余裕」で、アンドレに「説教」してみたりな。ええ、ここでも説教です。メルシー伯がフェルゼンにしたみたいに。これでまた「説教される」→「嘆く」→「動く」が成立して、アンドレとオスカルの「今宵一夜」に続くわけ。

 ただし。

 「今宵一夜」、ありません。

 オスカルとアンドレが一緒に出るのはたった1シーン。数分。
 青い理想を語る学級委員に「肩の力を抜けよ」と言う幼なじみ。というポジ。
 つまずくオスカルに手を差しのべ、からかって退場するアンドレ、そしてそれを追いかけるオスカル。
 どこのバカップルですか?

「つかまえてごらんなさ〜い♪」
「こいつぅ」
「うふふ♪」
「あはは♪」

 とお花畑で鬼ごっこしているバカップルのノリです。……かわいいぞ(笑)。

 植爺脚本では、オスカルはもれなく女っぽいです。男装している意味があるのか疑問なほど、ナヨナヨしています。なにしろ、自分で考えることはできず、「説教される」→「嘆く」→「動く」の人ですから。

 オスカルに関しては、こんなバカップル状態を見せた上で、台詞ひとつで片付けられる。

「オスカルは、死にました」


 ……ギャグですか?

 続く〜〜。


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