「樹里ちゃん、もう退団しちゃいましたよ」

 と、いろんな人に言われつつ。
 ええ、感想書くの遅くなっちゃったけど、とりあえず書く。

 日生『Ernest in Love』、オサコンの狭間に1回だけ観ました。
 席は最前列上手端。
 作品は梅芸で複数回観てるから、こちらは端でもなんでもいい、全体なんか見えなくてもいい、樹里ちゃんだけを観に行った。

 男役の樹里ちゃんを記憶に刻むために。
 オペラグラスなしで見られる席にこだわったんだ。

 鳥かごが降りてこず、最初からオケが籠の中だったことにおどろきつつ、開幕。

 最前列の醍醐味っつったらもー、人間が目の前であること。
 モブの若者たちが、ずーっと目の前でごちゃごちゃやっている。月組梅芸でも最前列に坐ったんで、既視感に囚われる。姿樹えり緒くんの顔を思わず探してしまうほど(月アーネストでよっぽど脳裏に焼き付いたらしい)。

 若者たちは至極真面目に市民だの農民だのを演じていたが……えー、わたしにLockOnしてくれたの、大門くん? やたら目が合うわ、微笑んでくれるわで、おばさんすげーたのしかったんですが。

 モブの子たちは近いんだが、主要人物は遠い(笑)。
 アーネストの登場シーンなんか、ものすごい仰角で顔が見えない……やーん樹里ちゃん、早く降りてきてーっ。

 全編「樹里ちゃん!!」と意気込んでいたせいか、作品自体はさらりと流れました。わたし的に。

 わたしは最初、月組バージョンを見たときに「この作品も役も、樹里ちゃんに合ってるよね。よかった」と思った。
 ずっとそう思っていたし、安心していたんだ。
 樹里ちゃんならきっと、たのしいものを見せてくれるって。

 でも、実際に見てみると、どうもチガウ気がした。

 そうか……わたしはべつに、樹里ちゃんにこーゆー作品も役も求めてなかったんだな。
 主演なのはうれしいし、これからも続く彼の男役人生のなかのひとつなら、ほんとに心からよろこんだけど……これが最後かと思うと、ちょっとチガウんだ。

 とゆーことに、今さら気づいたんだ。

 そーなのよ……わたしが樹里に求めているモノって。

 悪いヤツなのよっ!!

 セシリィ気分で歌って踊りたいわ。わたしが求めているのはワルな樹里ちゃんだったのよー。
 レオン@マラケシュまでハードにならない、粋な小悪党。
 えくぼを見せてにやけてて、顔立ちよりもそのスタイルと性格で「色男」に見せてしまう女の敵。

 アルジャノンか……そうか、アルジの方が見たかったのか、わたし。

 実際に見るまで気づかないあたり、鈍いですよ。

 それでかしら。作品自体はさらりと。
 活き活きとした樹里ちゃんに、アーネストくんは「小さい」気がした。
 役者としての樹里ちゃんには「小さい」役で、スターとしての樹里ちゃんには少し荷の重い役だと思った。
 アーネストってのは、「スター」がやるべき役なんだなあ、と。職人系でも2番手系でもなく、まぎれもなく「真ん中」の人がやってこそいちばん輝く役。

 わたしは樹里ちゃん好きだからそれゆえに目がくらんでいたけど、そっか、アーネストよりアルジャノンがハマる人だったよね。
 素の樹里ちゃんは笑いのセンスのある人で、エンターティナーだと思うけれど、役者としてのもっとも高いスキルは「深刻芝居」だった。悲劇系というか。死ぬ演技うまいんだよね。ドラマティックに殺したくなる役者なんだよね。

 最後の最後に、「樹里咲穂」を再確認したよ。
 

 さらりとわたしの前を流れていった物語だったのに。

 クライマックスで、わたしは一気に流れの中に引き込まれた。

 ええ、孤児アーネストの独唱ですよ。ブラックネル夫人にどーしても結婚を許してもらえず、「家族が欲しかった」と歌うアーネストの最大の見せ場。

 上手ですから、目の前です、アーネスト@樹里。

 それまでわたし、「物語」の外にいたのに。傍観者だったのに。
 一気に、彼らと同じ場所にいた。舞台の上、うなだれるアーネストの傍ら。

 それまで、あんなに地味(失礼)だったアーネストに、全部持っていかれた。

 ハートがぐわんぐわんと揺れて回って、可聴音域を超えたところでずっと共鳴しているような感じ。

 そうだ、これが樹里咲穂だ。
 深刻芝居になると、全部持っていくんだから。小粋なコメディの白い二枚目だと他に負け気味だったのに。

 
 アーネストはわたしが求めた「悪いヤツ」ではなかったけれど、結局のところ、これでよかったのかもしれない。
 樹里ちゃんをいろんな意味で堪能した。

 ミニ・フィナーレの陽気さ、たのしさに心の中で一緒に歌いつつ手拍子して、カテコではご機嫌でスタオベしてきました。

 
 グウェンドレン@あすかは、手堅い感じ。
 手強い感じ、も、する(笑)。
 和を保っている印象だ。やりすぎず、暴走せず。樹里ちゃんにすべてを預けている感じ。
 相手役に従い、立てる。いい娘役になったんだなあ。

 セシリィ@一花ちゃんは、ものすげーかわいいっ。
 ちっちゃくてパワフルで、ゴムマリみたい。家に持って帰りたい(笑)。
 アルジャノン@らんとむとのバランスもいい。

 らんとむさんは、どんどんオトコマエに。
 どんどん華やかに。
 いかにも「ヅカのスタァ」って感じがすばらしい。

 ……ただわたしは、アルジャノン役はどーしても、きりやんが忘れられないっす……。

 なんでか考えたんだよね。
 こんなにこんなにすてきならんとむアルジが、どーしてわたしに響いて来ないのか。

 明解でした。

 毒のなさ。

 そっか。
 きりやんのアルジャノンには、「毒」があったんだ。
 ほんとに性格悪そうっていうか、それこそあさこアーネストを押し倒してヤッちゃってもぜんぜん悪びれないで「君だって楽しんだじゃないか」とか言っちゃいそうな、本質的な歪さ。
 それが、ツボだったんだわ。ときめきだったんだわ。

 らんとむさん、いい人なんだもん……健康そうなんだもん……。陽性のおぼっちゃまには、ときめかない……。

 や、その、あくまでもわたしの好みの話。
 世間の評価とはなんの関係もありません。

 あとは、越リュウの不在に胸を焦がしつつ。(まりん氏に含むところはございません)

 
 さて。
 来年のガラコン。樹里ルキーニを聴きに行けるかしら……。最近チケ運も尽きた感じやしなー。


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