ひさしぶりに、Be-Puちゃんからメールが来た。

『緑野さん、今日の新公観に行く? 私、本公演観ようと思ってるんだけど、会えるかな』

 それは、月組新公の朝だった。
 おお、行くよ、新公。んじゃ本公と新公の間にお茶でもしよーよー。てゆーか、新公も観て帰ればいいじゃん。そしたら、一緒に晩ごはんも食べられるし。

『本公演観て、おもしろかったら考える』

 ご贔屓卒業後、あまりヅカを観なくなってしまったBe-Puちゃん、もともと贔屓組以外詳しくないこともあり、月組はさっぱりわからないのだと言う。
 誰ひとり知らない状態で新公観ても、たしかにたのしさ半減だよね。少しくらいは顔の判別・名前の予備知識がないと。
 だから、作品がおもしろければ観てもいいってさ。

 予告通り、本公演が終わったくらいの時間に、ムラに到着したわたし。Be-Puちゃんに聞いてみた。

 新公どうする? 観て帰る?

「嫌だ。絶対観ない」

 断言ですよ。

「なにアレ。最低。『白夜伝説』再び? 『白夜伝説』にはガイとかミーミルとか部分的に見どころもあったけど、『ジャジー』にはなにもないじゃない!!」

 大変ご立腹でした。
 本役でもこれだけつまらない話なんだから、新公なんて推して知るべし。観たくない、絶対帰る!!
 と言って、わたしの誘いを振り切って帰っちゃいましたよ……ひさしぶりに会えたのにー。
 わたしへの愛は、『ジャジー』への嫌悪感に負けてしまう程度なのね……とか言ってみる(笑)。

 
 Be-Puちゃんには、散々に言われ切ってましたが。一緒にいたnanakoさんも「弁護できない……(笑)」と言ってましたが。

 わたしはけっこー好きですよ。

 月組公演『JAZZYな妖精たち』。いやその、わたしも弁護できませんけどね。いい作品だなんて、言えません。

 ただ、『ベルばら』より100万倍マシ、『花舞う長安』より60万倍マシ、『青い鳥』より50万倍マシ、『花供養』より101万倍マシですもの。
 月組、うらやましいなあ。こんなマシな話を上演してて。

 物語は、ちょっと前のアメリカ。アイルランド移民の孤児5人組が夢を抱いてこの国にやってきてから、15年が経っていた。
 現在の彼らの生き方は見事にバラバラ。
 パトリック@あさこがいちばんの出世頭、政治家人生を歩むための選挙戦の真っ直中。
 シャノン@かなみは童話作家としてデビュー。
 ミック@さららんも警官としてまっとーに暮らしている。
 が、残りのふたりはちょっと問題。
 ウォルター@きりやんは殺し屋、ティモシー@ゆうひはゴシップ屋だ。
 パトリックとシャノンだけはこの15年間無事に愛を育んでいたよーだが、他の3人はバラバラ連絡ナシ。……だったのに、パトリックの選挙戦絡みで5人の糸が再びつながった。
 ティモシーは友情を金に換え、ミックは犯罪者ウォルターをかばい、ウォルターはパトリックの殺人依頼を受け、シャノンは不治の病ときた。パトリックの選挙も暗礁に乗り上げているし……さあどうなる?
 とゆー話に、何故かのーてんきな妖精が絡んでいる。

 
 この物語に、言いたいことは山ほどある。
 てゆーか。

 わかりやすすぎるだろ、この壊れ方。

 ここまでひどい、どんな人にももれなくわかってしまう壊れ方をしている物語もめずらしい。
 例をあげるなら、『虹のナターシャ』かな、同列の壊れ作品。

 つまり、未完成ってことね。

 この作品の壊れ方にいちばん近いモノは、少年ジャンプの打ち切り作品の最終回だな。
 長期連載のつもりで仕込んできた伏線やエピソード、キャラクタがなにひとつ消化できていないのに、人気がなくて打ち切り決定になったマンガ。
 トーナメントの途中だったとしても、強大な敵の軍団と戦っていたとしても、それまでのストーリー一切無視してそこでEND。
 雑魚敵と戦っていたところへ、ラスボスが突然現れてそのまま戦闘、あっちゅー間に勝利して「やったぁ!」で、『長い間のご声援ありがとうございました。**先生の次回作にご期待ください』とか書いてあるヤツ。
 ええっ、ここで主人公が勝って終わり? ライバルの**はどーしちゃったの? ヒロインの**が**してるとこだったのに、それはどうなったの? てゆーか、主人公だって実は**の生まれ変わりだったとか言ってたのに、その話はどこへ?! 12個の神器を集める話は? まだ3つしか出てないじゃん! 12神将だってまだ3人しか出てないよー?! コミックスのおまけページで全員紹介されてたのに、出てこないなんてありえない!
 てな、なにもかも「打ち切り」された哀れな物語。

 『JAZZYな妖精たち』って、コレだよね?
 打ち切りされたんだよね。未完成なんだよね。

「あ、次の回で打ち切り決まったから。最終回にしてよね」
 って言われたんだよね。
 それで谷せんせ、
「ええっ?! まだ半分もストーリー進んでないのに、最終回?! 無理だよそんな!!」
 ってアタマ抱えながら、無理矢理最終回にしたんだよね。ストーリーを終結させることも、エピソードをまとめることも、伏線を拾うことも全部放棄して。
「とりあえずオールキャラ出して、踊らせました。どさくさにまぎれてENDってことで」

 それくらい、わかりやすい壊れ方。

 あり得ません。商業演劇で。週刊少年マンガ雑誌の比ではない料金取っておいて。
 「打ち切り」は勘弁してよ。

 
 「打ち切り」作品だけあって、ちゃんと最後まで書かせてもらえればいい話になったんじゃないかと思われるところが、じれったいんだよなあ。

 谷先生はたしかに荒い作劇というか、多分に本能的な構成をしちゃう人だけど、今回の作品は単純に「時間が足りなかった」んじゃないだろうか。
 上演時間じゃないよ。
 脚本を書く時間。

 物理的な時間がなくて、やっつけ仕事をしたというか。打ち切りマンガみたいに、とりあえず書けたところまでに、強引なラストシーンを付け加えて終わりにしたというか。

 ちゃんと書く時間さえあれば、あのラストシーンはありえないだろ。

 これから「ストーリーが動く!」という、いちばんオイシイところで幕が下りちゃったんだもん。
 ここまで単純だと、「あー、時間なかったんだー」とわかるよねえ?

 この打ち切り感しかないラストで、なにもかもぶちこわしになっちゃうんだよなー。
 それまでどんなに退屈でもヘボでも、クライマックスさえ盛り上げれば観客なんて誤魔化せるのに。
 クライマックスがないんじゃ、そりゃ観客の後味は最低になるさ。Be-Puちゃんみたいに怒って帰っちゃうわけさ。

 もったいないなあ。
 ちゃんと書ききれば、けっこーいい話だと思うよ、マジで。
 エッセンスはいいんだもん。

 なにしろ『ベルばら』より100万倍マシなんだから! こだわりますな。こだわりますとも!(笑)


コメント

日記内を検索