組替え発表の動揺おさまらないまま、夜行バスに乗って東京へ。
 目指すは花組新人公演『落陽のパレルモ』、目当ては扇めぐむ。

 はい。
 やっぱわたし、すでに星担ではなかったのでしょう。
 はじめて、星組新公あきらめました。

 ずっと観てたのにな。星組下級生にだって、愛着ありまくるんだけど。てゆーかぶっちゃけあかしの役付が良かったら、星新公を取っていた。
 ウメがオスカルとか。紅ゆずるがどーんと役ついてるとか。最近気になって仕方ない一輝慎くんとあかしが、アンドレとかフェルゼンとか、ベルナールでもジェローデルでもいいや、とにかく専科系以外の役がついているとか。
 もしくは、れおん以外が主役なら、星新公を取っていた。

 代わり映えのしない配役で、しかも演目が『ベルばら』の星新公と、ニコラ@扇めぐむを天秤に掛けて、めぐむを取ってしまいましたよ……うおー、花新公でなくめぐむ個人なのか。

 
 そもそもは、花組ムラ公演の千秋楽。
 『落陽のパレルモ』のオープニングで、かっこよく軍服で踊るらんとむ氏を見ながら「めぐむぢゃない!」ことにショックを受けた。
 や、わかってる。
 わかってるんだ。
 これは本公演で、ニコラはとむの役だ。
 そして、らんとむ氏は文句なしでかっこいい。アツくてハートフルで昭和的でいなせでめっちゃ男前だ。

 それを理解していて、なお。

 わたしは無意識に、めぐむを求めていた。

 めぐむのニコラが好きなの……。
 ニコラに会いたいのー。

 もちろん、わたしの隣で「東宝行こうよー、行こうよー、めぐむめぐむめぐむ〜〜」と呪いのように繰り替えし続け、洗脳したnanakoさんの影響もあったと思うが(笑)。

 
 めぐむのニコラが何故好きか。

 そりゃあもともと、ニコラはかっこいー役だ。
 軍服もあるし、派手な戦闘シーンはあるし、主人公の旧友だし、かわいい妹といちゃつくシーンはあるし、お姫様とヒューマンなふれあいのあるシーンはあるし、最期はドラマティックに悲劇だし。
 こんなかっこいい役なんだから、誰がやったってある程度はかっこよくなるだろう。らんとむという偉大なお手本があるわけだし。

 めぐむはその恵まれた体格で、なんとも豪快な男ぶりを示している。あたしゃ『La Esperanza』新公も観てるんだけどな、あのときのぴっちぴちの18歳役@めぐむはそりゃーひどい出来だった、あれから格段の進歩だよなあ。
 めぐむの持っているアツくるしいキャラクタと、ニコラの熱血漢ぶりがうまく噛み合っているの。
 あーもー、かっこいー。

 いやその。
 外見の男臭さによるかっこよさだけじゃなくてね。

 わたしがめぐむニコラを好きないちばんの理由は、その「余裕のなさ」にあると思う。

 たとえば、らんとむニコラは、「人質を絶対に殺せない」と思うの。
 無力に泣きじゃくるマチルダ@彩音を前にして、らんとむニコラはなんとも悲しい顔をする。か弱い少女を誘拐して、怖がらせて傷つけているのだという現実に苦しんでいる。こんなことは、彼の本意じゃない。それでも、こうすることしかできない自分を責めている。
 ……いいヤツだ、ニコラ。大好きだぞ。マチルダとニコラの間に恋愛めいた感情が芽生えるのもわかる。だってめちゃくちゃいい男なんだもの、ニコラ。
 兵士に取り囲まれ、ニコラたちはマチルダを盾にするけれど。
 ニコラは絶対、マチルダを殺すことは出来ないと思う。たとえ妹のルチア@一花を目の前で殺されたとしても、その報復にマチルダを傷つけることはない。
 ニコラはそんな男じゃない。
 していいことと悪いこと、「人として、絶対に越えてはならないライン」があることを知っている。そして、意志の力でソレを守れる男だ。

 そーゆー男だから、らんとむニコラは大好き。
 でも、それとはちがって、めぐむニコラは。

 殺すよね? マチルダのこと。

 もちろん、卑怯なことはしない、非道なことはしない。誇りを持ち、「人として、絶対に越えてはならないライン」を守ろうとしている。
 そうする心づもりは十分にある。

 しかし、人としての、男としての器がそれほど大きくないから。
 余裕がないから。
 追いつめられたら、最終手段を執るだろう。

 目の前でルチアを殺されでもしたら。
 めぐむニコラは、マチルダを殺すだろう。反射的に。それ以上なにも考えず、ただ報復として。

 らんとむはいい男だよ。
 彼の「男」としての度量の広さ、「人間」のとしてのやさしさや正しさが、ものすげー魅力的。
 それに比べ、めぐむは「人間」が小さい。
 過激な行動に走る学生革命家のようだ。若く、浅慮で短絡的。のーみそまで筋肉。善良でないわけじゃない、まちがっているわけでもない、ただ器が小さいの。
 だからマチルダとの関係も、らんとむのときほどどきどきしないし(相手役の問題もあるが)、誘拐事件自体の作品中でのドラマ度が本公よりも低いの。

 そこがいいの。

 めぐむの、器の小ささ。
 追いつめられたらなにをするかわからない、キレる可能性。
 どんなに善良であっても、ちりちりとした危機感を持たせるあやうさ。暗さ。

 それが、めーーっちゃ好み!!

 めぐむがいい。かっこいいよう。
 あのギリギリ感がたまらない。余裕のなさ、破滅が見えている薄っぺらさ、自爆上等!な自暴感……わーん、かっこいー。

 欠けた人が好みですから。
 めぐむニコラの欠け方が好きなの。らんとむニコラはいい男過ぎて、好きだけどもう一歩踏み込めない。

 
 ニコラが小物だから、主役のヴィットリオの男ぶりが上がっているしね。
 カラダはでかいが小物なニコラと、カラダはちっこいが男前なヴィットリオが激しく言い争うとことか、いいよなあ。
 ニコラが背中丸めてるのがまた、萌えなのよね(笑)。小さなヴィットリオのために、心持ち目線を下げて会話しているのよ、ニコラってば。

 ムラに引き続いて東宝でも新公を観るのは月組の『飛鳥夕映え』以来。
 みんな2回目だから、ムラほど切羽詰まってない。
 観ているわたしも、「主役カップルに愛があると、こんな話になるんだ」という感動はムラで味わってしまったあとだから、それほど大きな感動はなかった。
 むしろ、至らなさの方が目に付くなー(笑)。

 いいんだ。
 わたしはニコラを見に来たんだから。
 かっこいーめぐむが見られれば、それでいいの。


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