風の行方。@コム姫とわたし、その2。
2006年5月24日 タカラヅカ 風を感じることがある。
長くヅカファンやっていて、FCにも入らない、入り出待ちもしない、ただ舞台を観に通う日々で。
客席の熱気、ざわめきで、わかることがある。
風が、誰に吹いているか。
朝海ひかる、というほぼ無名だった男の子に風が吹きはじめたのを見た。
花組時代は、新公主演もできなかった。組ファン以外にはきっと無名。
宙組設立の際、棚ボタのよーに4番手扱いになった。宙組人気、ずんこ人気に後押しされ、ダンス力よりなによりキュートな容姿と女装の美しさで注目を集める。
そして、運命の分かれ道。
『エリザベート』での、ルドルフ役。
なにかが変わるのを感じた。
舞台の上でじゃない。
周囲だ。観客たちだ。
観客の気持ちが、朝海ひかるに向かって動く。
あちこちで、コムの名前を聞いた。劇場のあちこち、花の道、喫茶店、電車。
誰も彼もがコムの名を出す。「ルドルフをやった子」がどれだけステキかを。
動き出した波に、人事が後押しをする。
雪組へ、組替え。
安蘭けい、成瀬こうきとともに研9トリオ結成。ジャニーズのよーにユニット売りだ。
バリバリ路線だったトウコと成瀬とユニットを組まされることで、ひとりだけ「おまけ」状態。
組替え直後の大劇場公演でも、芝居ではトウコ、成瀬とはちがい、出番も少ない「いなくてもいい役」。かわりにショーでは女役・娘役・男役とひとりだけ3パターン。トウコと成瀬は2パターンなのにね。コムひとり「イロモノ」扱い。
それでも人事の動きはヅカ全体の注目をあびることになる。
「組替え」「研9トリオ」「役替わり」は、とりあえず話題を集める。
芝居の方は完全にどーでもいい役だから、口の端にものぼらないが。
ショー『ノバ・ボサ・ノバ』の役替わりは大成功だった。いや、正確には娘役ブリーザが。
マジで美しい。完璧なプロポーションとあでやかなダンス。
いろんな人が、コムの名前を口にする。「ブリーザ役の子」「組替えで来た子」「贔屓の相手役になって欲しい」……娘役としての鮮烈なデビュー(笑)。
基本的にわたしは舞台の上でのことしか知らないが、舞台以外のジェンヌのうわさ話等が耳に入ることがある。並びのときとか劇場とかで。知らない人と会話をしたり、また会話が耳に入ったりして。
それは、素のコムちゃんがどれほど小悪魔的にかわいらしいかとゆー話だった。
おねーさん体質のトウコが、どれほどコムの世話を焼き、たのしそーに夢中になっているか。
「トウコちゃんがもー、めろめろで」
と、何人に聞いたかな……。
当時のトウコは路線一直線の雪組御曹司、研6で新公卒業し、研7で本公演単独3番手、研8で単独バウ主演とエリート街道を驀進してきた超強気スター。ええ、雪組時代のトウコは攻男だったんですってば、今からは想像つかないだろうけど!(笑)
あのオトコマエなトウコちゃんが、小悪魔美少年にめろめろって……。
知らない人の家でお茶会ビデオみせてもらったりしたけど(知らない人についていくのはやめましょう)、トウコとコムがほんとに仲良くいちゃついていたよ……。
トウコと仲良しだから、コムちゃんと一緒だとかわいいトウコちゃんが見られるから、とトウコファンも味方につけて、コムちゃんはますます勢いに乗る。
研9トリオでバウワークショップ『The Wonder Three』、そして同年ナルセとW主演で『SAY IT AGAIN』。おいおい、どさくさにまぎれて1年間に主演バウが2本?! 新公主役もしてない脇の子が?
わたしはこの主演バウをナマで観てきているけれど、コム姫の「基本的技術の低さ」にはびっくりしたクチだ(笑)。
うっわー、歌下手〜〜。演技微妙〜〜。
『The Wonder Three』は「歌のショー」だったので、コムちゃんのパートは苦痛だった。ナルセの方がうまいなんて知らなかったよ。
『SAY IT AGAIN』もコムちゃん目当てで観に行ったのに、ナルセにオチて帰ったし(笑)。
それでも。
『SAY IT AGAIN』以来わたしはコムちゃんのことをコム姫と呼ぶことに決めた。
それまでは「娘役」として好きだったコムちゃんのことを、「男役」として好きになったのがこの公演。
なんでそう呼ぶことにしたのかは、2002-11-15の日記に書いてあるから省略。
そうこうしているうちに、まさかのずんちゃん退団発表。
あれほどの人気を誇った宙組初代トップスターが退団。劇場に詰めかけていたずんちゃんはファンはどこへ流れるの?
「ずんちゃんのあとは、コムちゃんを応援するわ」
全部が全部じゃないのはわかっているが、けっこーな割合で耳にした。
ずんことコムでは、タイプがぜんぜんチガウと思うんだが……いいのか?
タイプが、というより、「風の行方」なんだと思う。
風が吹いている人に、流れる層って絶対ある。
今いちばん力を持ち、伸びていこうとしているモノ。追い風に乗る気持ちよさ。いちばん人気の集まっているモノに、さらに人気は集まる。
行列の出来ている店には、並んでみたくなる心理というか。
「動いている」モノに惹かれる本能。ミーハーとか移り気とかいうんじゃなく、本能としてあるんだと思うよ。
風が吹いている。
コムに向かって。
ずんちゃんの退団した年の後半に、ついに堰が崩壊する。
風によって、牙城が崩れる。
「路線と呼ばれるのは、新公主役経験者のみ」というタカラヅカの伝統。
朝海ひかるが、新人公演で主演する。
研10にもなった男役が。
「役替わり公演」という、前代未聞のイベントを劇団に用意させてまで。
絶対に失敗させないよう、ベテラン娘役・貴咲美里を相手役にし、主演経験豊富な同期ふたりトウコとナルセを補佐役に配置。
コム姫のために、なにもかもが動き出す。
新公は研7まで、という牙城を崩してまで、コム姫を「路線」に引っ張り上げた。
コム人気は『月夜歌聲』で絶頂期に突入。男役と絡ませた方が似合う、女装が似合うコム姫に男装の麗人役。相手役が宙組時代からお似合いだったワタル兄貴。
雪の御曹司トウコの放出。
月組時代路線として早くから抜擢を受けていたナルセ放出、彼はそのあとすぐに退団。
研9トリオは1年半で完全解体。
なにもかもが、コムのために。
風が吹く。
コムに向かって風が動く。
たしかに風を感じた。
そしてそれは、異を唱えさせない力なんだ。だって風が吹いているんだから。誰にも止められないんだから。
わたしは長くの雪ファンで、ずっとトウコを見てきたから、この結果に傷ついたしかなしんだ。
雪組三兄弟が好きだったから、こんなカタチで後味悪く終わるのが嫌だった。
それでも、そーゆーマイナスの気持ちを吹きとばすくらい、風はたしかに吹いていたの。
オギーとコム姫の夢のコラボ、『パッサージュ』。
「天使の夢を見たわ 真夜中にひとりきり 白い翼広げ 空に浮かんでいた……」
ではじまる美しいショー。
美しく無垢な天使。ときに黒衣の堕天使となり、白い絶望に悲鳴を上げる嘆きの天使となる。
美しい、という力。
そこにある絶望と毒。
風が吹く。
そして、風からこぼれた人たちの運命が変わる。
トドがトップから退き、次のトップはブンちゃんだと発表された。
だが、まさかの1作トップ。劇団の意向だとブンちゃんは会見で口にする。
ブンちゃんの大劇場千秋楽、サヨナラパレードのときに公式発表が出た。
雪組トップスター・朝海ひかる。
ああ、風はここに向かって吹いていたんだ。
わかっていた。最初の上昇気流からずっと、期待と危惧が一緒にあった。予測していたのではなくて、結果を知ったあとに納得した。
たしかに、風は吹いていたんだ。
わたしはあの風を知っている。
この身で体験している。
だから、なにも言うまい。
すべてはなるべくしてなったんだ。
おめでとう、コムちゃん。
真ん中より脇にいた方が魅力が発揮できる人だと思うけれど、それでも応援するよ。わたしの大好きな雪組をよろしく。
そーやって、4年。
コム姫はトップになってからも進化を続け、外見にそぐわないオトコマエな芸風を開花させた。
真ん中に相応しい人となった。
トップになってからは、風を感じなかった。
頂点には、風は吹かないんだね。
コムを押し上げていったあの風は、ほんとーにすごかった。前代未聞。
いろんなことが、コム姫のために動いていた、歴史が曲げられていくのを見る驚きと快感。
でもね。
風によってたどり着いた頂上で、自分の力で立ち続けたこと。
あの風と同じくらい、すごいことだと思うんだ。
あの風のために道が変わってしまったいろんなことの分まで、コム姫は戦い、結果を出した。
ただのアイドルトップじゃないよ。必然だよ。コム姫は、なるべくしてトップになり、そして実力でトップであり続けたんだ。
だから胸を張って、最後まで見守りたい。
風の行きつくところを。
長くヅカファンやっていて、FCにも入らない、入り出待ちもしない、ただ舞台を観に通う日々で。
客席の熱気、ざわめきで、わかることがある。
風が、誰に吹いているか。
朝海ひかる、というほぼ無名だった男の子に風が吹きはじめたのを見た。
花組時代は、新公主演もできなかった。組ファン以外にはきっと無名。
宙組設立の際、棚ボタのよーに4番手扱いになった。宙組人気、ずんこ人気に後押しされ、ダンス力よりなによりキュートな容姿と女装の美しさで注目を集める。
そして、運命の分かれ道。
『エリザベート』での、ルドルフ役。
なにかが変わるのを感じた。
舞台の上でじゃない。
周囲だ。観客たちだ。
観客の気持ちが、朝海ひかるに向かって動く。
あちこちで、コムの名前を聞いた。劇場のあちこち、花の道、喫茶店、電車。
誰も彼もがコムの名を出す。「ルドルフをやった子」がどれだけステキかを。
動き出した波に、人事が後押しをする。
雪組へ、組替え。
安蘭けい、成瀬こうきとともに研9トリオ結成。ジャニーズのよーにユニット売りだ。
バリバリ路線だったトウコと成瀬とユニットを組まされることで、ひとりだけ「おまけ」状態。
組替え直後の大劇場公演でも、芝居ではトウコ、成瀬とはちがい、出番も少ない「いなくてもいい役」。かわりにショーでは女役・娘役・男役とひとりだけ3パターン。トウコと成瀬は2パターンなのにね。コムひとり「イロモノ」扱い。
それでも人事の動きはヅカ全体の注目をあびることになる。
「組替え」「研9トリオ」「役替わり」は、とりあえず話題を集める。
芝居の方は完全にどーでもいい役だから、口の端にものぼらないが。
ショー『ノバ・ボサ・ノバ』の役替わりは大成功だった。いや、正確には娘役ブリーザが。
マジで美しい。完璧なプロポーションとあでやかなダンス。
いろんな人が、コムの名前を口にする。「ブリーザ役の子」「組替えで来た子」「贔屓の相手役になって欲しい」……娘役としての鮮烈なデビュー(笑)。
基本的にわたしは舞台の上でのことしか知らないが、舞台以外のジェンヌのうわさ話等が耳に入ることがある。並びのときとか劇場とかで。知らない人と会話をしたり、また会話が耳に入ったりして。
それは、素のコムちゃんがどれほど小悪魔的にかわいらしいかとゆー話だった。
おねーさん体質のトウコが、どれほどコムの世話を焼き、たのしそーに夢中になっているか。
「トウコちゃんがもー、めろめろで」
と、何人に聞いたかな……。
当時のトウコは路線一直線の雪組御曹司、研6で新公卒業し、研7で本公演単独3番手、研8で単独バウ主演とエリート街道を驀進してきた超強気スター。ええ、雪組時代のトウコは攻男だったんですってば、今からは想像つかないだろうけど!(笑)
あのオトコマエなトウコちゃんが、小悪魔美少年にめろめろって……。
知らない人の家でお茶会ビデオみせてもらったりしたけど(知らない人についていくのはやめましょう)、トウコとコムがほんとに仲良くいちゃついていたよ……。
トウコと仲良しだから、コムちゃんと一緒だとかわいいトウコちゃんが見られるから、とトウコファンも味方につけて、コムちゃんはますます勢いに乗る。
研9トリオでバウワークショップ『The Wonder Three』、そして同年ナルセとW主演で『SAY IT AGAIN』。おいおい、どさくさにまぎれて1年間に主演バウが2本?! 新公主役もしてない脇の子が?
わたしはこの主演バウをナマで観てきているけれど、コム姫の「基本的技術の低さ」にはびっくりしたクチだ(笑)。
うっわー、歌下手〜〜。演技微妙〜〜。
『The Wonder Three』は「歌のショー」だったので、コムちゃんのパートは苦痛だった。ナルセの方がうまいなんて知らなかったよ。
『SAY IT AGAIN』もコムちゃん目当てで観に行ったのに、ナルセにオチて帰ったし(笑)。
それでも。
『SAY IT AGAIN』以来わたしはコムちゃんのことをコム姫と呼ぶことに決めた。
それまでは「娘役」として好きだったコムちゃんのことを、「男役」として好きになったのがこの公演。
なんでそう呼ぶことにしたのかは、2002-11-15の日記に書いてあるから省略。
そうこうしているうちに、まさかのずんちゃん退団発表。
あれほどの人気を誇った宙組初代トップスターが退団。劇場に詰めかけていたずんちゃんはファンはどこへ流れるの?
「ずんちゃんのあとは、コムちゃんを応援するわ」
全部が全部じゃないのはわかっているが、けっこーな割合で耳にした。
ずんことコムでは、タイプがぜんぜんチガウと思うんだが……いいのか?
タイプが、というより、「風の行方」なんだと思う。
風が吹いている人に、流れる層って絶対ある。
今いちばん力を持ち、伸びていこうとしているモノ。追い風に乗る気持ちよさ。いちばん人気の集まっているモノに、さらに人気は集まる。
行列の出来ている店には、並んでみたくなる心理というか。
「動いている」モノに惹かれる本能。ミーハーとか移り気とかいうんじゃなく、本能としてあるんだと思うよ。
風が吹いている。
コムに向かって。
ずんちゃんの退団した年の後半に、ついに堰が崩壊する。
風によって、牙城が崩れる。
「路線と呼ばれるのは、新公主役経験者のみ」というタカラヅカの伝統。
朝海ひかるが、新人公演で主演する。
研10にもなった男役が。
「役替わり公演」という、前代未聞のイベントを劇団に用意させてまで。
絶対に失敗させないよう、ベテラン娘役・貴咲美里を相手役にし、主演経験豊富な同期ふたりトウコとナルセを補佐役に配置。
コム姫のために、なにもかもが動き出す。
新公は研7まで、という牙城を崩してまで、コム姫を「路線」に引っ張り上げた。
コム人気は『月夜歌聲』で絶頂期に突入。男役と絡ませた方が似合う、女装が似合うコム姫に男装の麗人役。相手役が宙組時代からお似合いだったワタル兄貴。
雪の御曹司トウコの放出。
月組時代路線として早くから抜擢を受けていたナルセ放出、彼はそのあとすぐに退団。
研9トリオは1年半で完全解体。
なにもかもが、コムのために。
風が吹く。
コムに向かって風が動く。
たしかに風を感じた。
そしてそれは、異を唱えさせない力なんだ。だって風が吹いているんだから。誰にも止められないんだから。
わたしは長くの雪ファンで、ずっとトウコを見てきたから、この結果に傷ついたしかなしんだ。
雪組三兄弟が好きだったから、こんなカタチで後味悪く終わるのが嫌だった。
それでも、そーゆーマイナスの気持ちを吹きとばすくらい、風はたしかに吹いていたの。
オギーとコム姫の夢のコラボ、『パッサージュ』。
「天使の夢を見たわ 真夜中にひとりきり 白い翼広げ 空に浮かんでいた……」
ではじまる美しいショー。
美しく無垢な天使。ときに黒衣の堕天使となり、白い絶望に悲鳴を上げる嘆きの天使となる。
美しい、という力。
そこにある絶望と毒。
風が吹く。
そして、風からこぼれた人たちの運命が変わる。
トドがトップから退き、次のトップはブンちゃんだと発表された。
だが、まさかの1作トップ。劇団の意向だとブンちゃんは会見で口にする。
ブンちゃんの大劇場千秋楽、サヨナラパレードのときに公式発表が出た。
雪組トップスター・朝海ひかる。
ああ、風はここに向かって吹いていたんだ。
わかっていた。最初の上昇気流からずっと、期待と危惧が一緒にあった。予測していたのではなくて、結果を知ったあとに納得した。
たしかに、風は吹いていたんだ。
わたしはあの風を知っている。
この身で体験している。
だから、なにも言うまい。
すべてはなるべくしてなったんだ。
おめでとう、コムちゃん。
真ん中より脇にいた方が魅力が発揮できる人だと思うけれど、それでも応援するよ。わたしの大好きな雪組をよろしく。
そーやって、4年。
コム姫はトップになってからも進化を続け、外見にそぐわないオトコマエな芸風を開花させた。
真ん中に相応しい人となった。
トップになってからは、風を感じなかった。
頂点には、風は吹かないんだね。
コムを押し上げていったあの風は、ほんとーにすごかった。前代未聞。
いろんなことが、コム姫のために動いていた、歴史が曲げられていくのを見る驚きと快感。
でもね。
風によってたどり着いた頂上で、自分の力で立ち続けたこと。
あの風と同じくらい、すごいことだと思うんだ。
あの風のために道が変わってしまったいろんなことの分まで、コム姫は戦い、結果を出した。
ただのアイドルトップじゃないよ。必然だよ。コム姫は、なるべくしてトップになり、そして実力でトップであり続けたんだ。
だから胸を張って、最後まで見守りたい。
風の行きつくところを。
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