すんません。
 最初に謝っておく。
 『オクラホマ!』において。

 怪しい商人アリ・ハキム@ルイスを、ただの通行人だと思いこんでいた。

 アド・アニー@ねねちゃんとからんではいるけど今だけ、ソレだけ、カーテン前でちょっと喋っていなくなる、ただの脇役だと思っていた。

 何度も出てくるから、おどろいた。

 そして、混乱した。
 彼の「設定」がわからなくて。
 商人といっても、見るからにまともでもないし、大したこともない。
 自分で荷車引いてヒーヒー言っているし、持ってくる商品も高級品ではなく子どもだまし。
 びんぼーな村を回って行商するのだから高級品は必要ないっちゃその通りなんだが、どうもあか抜けない。格好つける必要ないから格好悪いというより、ほんとうにどんくさい詐欺まがいの小悪党か。
 じゃあどうして、女にモテるのだろう? アニーだけなら「彼女はおバカキャラだから」ってことで説明がつくが、それ以外にもふつーにモテていそう、不自由していなさそうだ。
 よそ者、都会を知っている、つーだけでモテるのか? それもいまいち説得力がない。

 目に映っているものと、台詞やストーリーで語られる設定のギャップにとまどい、終盤まで整理がつかなかった。

 ラスト近くになってようやく、理解した。

 そうか、アリって色男設定なんだ!!

 だからいかにもうさんくさくても、格好悪くても、どんくさそうでも、口先三寸でいい加減そうでも、女にモテるんだ!

 たとえばタニちゃんとか壮くんとか。
 他のなにが欠けていたってぶっちゃけなにもできなくたって、どんなにダサい格好でサムい会話をしていたって、彼らのような美貌の男なら、納得できる。そりゃモテるだろう、って。

 あるいは。

 そうか、アリって強引でぬけめない、でも人間としてのかわいさを持つ男設定なんだ!

 だからべつに美形でなくても、そのキャラクタの強さに巻き込まれた人間は、彼にハマっちゃうんだ。

 たとえば嘉月さんとかハマコとか。
 いわゆる美形キャラではないけれど、彼らがその存在感で華々しくうさんくさく、強引に調子よく快走すれば、そりゃみんなついて行くだろうさ。

 えーと。
 アリってたぶん、おいしい役だよね?
 バリバリ美形の路線スターだとか、あるいは芸達者な別格スターがやるような役だよね? 今思ったけど、この役マヤさんがやったらどれだけ盛り上がっただろう。

 登場があまりに地味で、かつ、任をこなしていなかったので、わたしはするっとただの脇役、通行人認定していた。

 出てくるだけで笑えて、一挙手一投足に観客が反応し、場の空気を動かす役ではないのだろうか。
 最後まで見てから、構成的に想像したんだけど。

 いやあ、ルイスはがんばってました。

 がんばっていた。
 それはわかる。
 わかるけど。

 ほんとに、ダメダメだった。

 嘉月さんがふたりいればなぁ。
 アリを演じる嘉月さんが見たかったよ……。どれだけ愉快で、そして魅力的なちょい悪親父だったことだろう。
 もしくは越リュウ、女役なんかやってる場合じゃないよ、アリをやってくれよ……。どれだけ女泣かせの色男だったことだろう。
 嘉月さんの鎌足はすばらしかったし、越リュウのエラー叔母さんがすばらしかったことはわかっていて、わがまま言ってるだけなんだけど。
 もしくは専科のおじさま方に、出て欲しかったなぁ。
 路線系でいくなら、さららんとかがやっても、おもしろいはじけっぷりをしただろうなあ。みっちゃんでも愉快だったろーなあ。

 ルイスは真ん中スキルがまったくない人だから。
 空気を動かすことが出来ない。演技に華がない。
 それがイタイ。

 と。
 ひどいことをさんざん書いてますが。

 ルイスがこの役であったことは、うれしい。

 や、わたしが見た段階ではダメダメだったけどな。
 スキルがないなら、身につければいいことだから。

 研ルイスはふつーに男役としての基礎のある人だ。歌唱力という武器もある。
 ただ今まで、未来の嘉月絵里や未沙のえるを目指せるよーな、ピンで真ん中に立つ別格の役をまったく与えてもらっていなかった。
 基本が出来ていることと、真ん中に立つ力は別物だ。

 だから、現時点でアリ役ができなくても仕方ない。
 要は、これからだ。
 舞台はナマモノで、そして、経験値が大きく物をいう世界。
 この経験を生かして、大きく成長してくれりゃーそれでいい。
 どーせタカラヅカはファンとリピーターで保っているんだ、ルイスがどれだけダメダメでも、きっとあたたかく見守ってくれるさ。
 全ツのあひくんがダメダメっぷりをさらしながらも、大きな拍手をもらっているように。
 弱点をさらけ出していいんだ。そこから努力し、進歩している姿を愛でるのも、ヅカの醍醐味だから。

 
 にしても、まあ、巧い人とそーでない人たちの差の激しい公演でした(笑)。仕方ないことなんだけどな、組を半分に割っての公演だから。こーやって場数を踏んで、みんな伸びていくんだから。

 怪しい商人アリと、ヒゲ親父@一色瑠加がもっと巧ければ、コメディ部分ももう少し滑りよく機能していたと思うんだが……。一色氏はルイスの比ではなく、その、アレで……ゲフンゲフン。が、がんばれ。

 あと、アド・アニーとガーティ@みっぽーのキャラは疑問。
 かぶってるよ、思い切り。
 どっちも突拍子ない系の「かわいい」女の子。
 とくに出番のろくにないガーティ。変な高笑いをするくらいしかないのかよ? やってるのがみっぽーだから、ふつーにかわいいので、「かわいくてのーみそライト感覚」のアニーちゃんと、かぶるかぶる。
 別ジャンルの舞台なら、デブでブスなおばさんとかがやるんぢゃないか、この役。出てきた瞬間「うわ、この女とだけはありえねえ」と思わせるよーな。
 ジャッドと通じるものがあるな。タカラヅカでは、外見を醜くできないから、役の正しい表現が不可能という共通点。

 作品の根本にある、現代との感性のズレは置いておいても、つまんない話と、ひどい演出なんだが、まあソレはソレ。
 アタマ空っぽに、キャストにだけ心を動かして眺めましょう。

 トド&きりやんは実力安定していてふたりで別世界だし、あいちゃんはキュートにヒロイン、こちらも真ん中として問題ナシ。
 越リュウいい女で色男だし(笑)、みっぽーちゃんうまいし。
 『Ernest in Love』以来気になる姿樹えり緒くん、持ち味のくどさがいいよなあ。
 もりえは善良キャラをやると小さくまとまってしまう危惧を感じる。無理目な役を与えて鍛えた方がよかったんじゃないか?
 女の子たちがかわいい。月娘はビジュアルよくてたのしーなー。
 男の子たち、声がんばれー。まだ男役声ができていない子が多いなー。仕方ないことだけども。

 モブで気になる子がいても、誰が誰だかわからん。プログラム買ってないからなぁ。
 次に出会うとき、一回りも二回りも大きくなって、改めてわたしの目を奪ってくれないかしら。や、この作品はさすがのわたしももう二度と観ないけれど、大劇場は本公演も新公も観るからさ。
 好きな子が増えるとうれしい。知っている子が増えるのもたのしい。

 
 ルイスは次の公演で、どれくらいステキになってるかなぁ。
 きっと成長している。
 きっと色男度が上がっている。

 たのしみだ。


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