すみません。
 今さらでなんですが。
 叫ばせてください。

 相沢@まっつ、好きだ〜〜っ!!

 花バウ『舞姫』にて。
 腐女子的にオイシイとか、役割がオイシイとか、歌があるとか、そーゆーことではなくて。
 や、そーゆーのもいちいちうれしいけれど。

 そうじゃなくて。
 そーゆー次元のことじゃなくて。

 「相沢」というキャラクタが好き。そして、相沢を相沢たらしめている、まっつが好き。

 観劇3回目、今度こそ「まっつONLY視界」完遂。
 初見で全体、2回目で豊太郎@みわっちを中心に作品を脳髄に叩き込み、3回目ではじめて、他を捨ててまっつだけを堪能した。
 まっつを「視る」ためだけに、1幕と2幕で席を替わったぐらいだ。
 1幕目は上手側、2幕目は下手側。……nanaタン協力ありがとー!

 「相沢」という男がどんな表情でなにを言っているか、なにを考え、なにを感じているか、それだけを追った。
 オペラのいる席ではなかったのに、オペラ握りしめてた。てゆーかわたし、この公演のために、オペラグラス買い直しましたから。おニューですよ、ははは。

 あいかわらず、まっつの演技は地味だ。
 しかし、嘘がない。
 そのときどきの感情を、大切に、丁寧に表している。

 情があふれ出ているところ、哀切なところ、強い意志で前へ出ているところ、そして、切り捨てたかのように、冷酷になる一瞬。それらが、細かく細かく変化する。
 同じ感情、一本調子でなにか言っていることなんかない。

 常に、揺れ動いている。
 ひとの「こころ」がそうであるように。

 それがね。
 その姿がね。

 泣けるほど、好きだ。

 対豊太郎、そして対エリス@すみ花、それぞれなんと誠実な演技をしているか。

 わたしは黒い人、毒のある人が好みなので、相沢は残酷なまでに正しい人、鬼畜な人の方がうれしかったと思うの。
 実際、まっつが相沢役だとわかったときはクールビューティ&鬼畜を期待したくらいだし。

 でも、まっつはそうではないのね。
 『MIND TRAVELLER』のときも、そうだった。いっそわかりやすいマッド・サイエンティストとして突き抜けてしまった方がキャッチーなのに、地味に「まとも」な研究者を演じていた。
 相沢もまた、クールで強引な男にしてしまった方がよりキャッチーだと思うのに(愛のために暴走する男って、女子の好きなタイプだってば)、なんかまたしても地味にリアルなキャラクタを創っている。

 相沢は、誠実な男だ。

 悪人ではまったくない。
 誠実さ、やさしさがベースになって、なにもかも動いている。

 そして、彼がかなしいのは、自分を「正しい」と思っていても、その「正しい」ことをするために、「斬り捨てられるモノの痛み」を理解していること。

 正しい人というのは、多くの場合とても無神経だ。
 『炎に口づけを』の狂信者たちほど極端でなくても、「正義」の名の下にはナニをしてもいい!と思い込んでいることが多い。
 本人が「正しい」と思い込むことで、すべての悪・身勝手・自己愛が正当化される。
 そーゆーキャラクタの方が、動かしやすいんだろう。や、たんに作者が無神経だっちゅーだけの場合も多いだろうけど。

 相沢も、「正義」を振りかざすだけなら簡単なんだ。だって、彼はほんとうに「正しい」んだもの。
 自信を持って、正しさを貫けばいい。
 卑しい踊り子との愛欲に溺れた親友の目を覚まさせ、相手の踊り子には分不相応だということを教えてやればいい。
 たとえ、心弱き親友に一時恨まれたとしても、いずれ目が覚めたときに感謝されることはたしかなのだから。

 この「正しさ」を、強く冷たく、表現する。
 そーゆー「相沢」を見たかったんだ。
 「正しい」ゆえの残酷さを、わたしは「鬼畜」だと受け取るし、萌えたと思う。

 だけど、この作品の相沢は、そうではない。

 「正しい」のに、傷ついている。
 これしか方法がないし、いちばんみんながしあわせになる決断だとわかっている。

 このまま豊太郎がエリスとドイツに残っても、ふたりはいずれ破局する。
 エリスが病気だからとかではなく。
 鳥と魚は一緒には生きられないんだよ。どちらかが、窒息してしまう。

 豊太郎と、豊太郎の愛した女性を守るためにも、ふたりを別れさせなければならない。

 正しいことをしているのに、それは愛情や誠実さから来ている行動なのに、それでも彼は、苦しんでいる。
 今現在、相手を傷つけることに。
 相手の痛みを理解して。

 傷つけることで傷ついている。

 オペラグラスで、まっつだけを見ていた。

 今、まっつが一瞬、迷った。弱い表情をした。次の瞬間、なにかを振り切るように、すみ花ちゃんに辛い言葉を投げた。
 すみ花ちゃんが傷ついた。たぶん、彼女の胸から血が流れた。すぱっと、肉が裂け、鮮血があふれた。
 同じように、まっつの胸からも血が流れた。
 彼は言葉を発するたび彼女を血まみれにし、自分もまた血を流す。

 でも彼は、自分の血などかまわず、強い目をする。
 冷酷な眼で、とどめを刺す。

 一気に刺し貫く方が、痛みが少ないから。
 彼女のために。

 自分も、血まみれになりながら。

 エリスが発狂したとわかったとき、相沢は子どものように顔をゆがめる。
 暗転の間際。

 幼い子どもの顔になる。

 血まみれになりながらも冷徹に剣を振り下ろした、誠実な大人の男が、子どもの顔になって叫ぶ。

 その、痛々しさ。

 そして。

 舞扇を手にするエリスと、彼女を抱く豊太郎。
 ふたりを見守る相沢は、自分の罪を、受け入れている。

 正しいことを、愛ゆえに、思いやりゆえにしただけでも。
 正しさを言い訳にはせず、「罪」であることを認めている。

 最後に豊太郎に問うのは、ただの確認だと思う。
 なにかを決したかのように「私を恨んでいるか」と問う相沢に、豊太郎は否定を返す。
 そう、相沢は知っていたはずだ。
 豊太郎が、相沢を恨むはずがないと。己こそを責める男だと。
 わかっていた答えを得て、噛みしめるのは、相沢自身の罪だろう。

 「恨んでいない」と言われて、ほっとしているようには見えない。
 むしろ、それゆえに決意が深まったように思える。

 この罪を、一生背負うことを。

 豊太郎が、相沢を逆恨みするよーな男なら、「私のせいじゃない、お前の自業自得じゃないか」とも思えたかもしれないけれど。

 ひとりの少女の心を破壊してまで、進もうとした道だ。親友を傷つけてまで、貫こうとした想いだ。
 まっすぐに前進することで、彼の償いは続くのだろう。

 相沢が、あまりに善良で。愛を基盤にした人で。そしてある意味、とてつもなく、まともな人で。
 クールビューティ&鬼畜を期待していたわたしは、アテがはずれたことにおどろきつつ、感動するの。

 ああまたこんな、地味でリアルな役作りをして。
「私は正しい」って善意ゆえの強引さで、取り返しのつかないことをする人、でよかったじゃん。わかりやすくて。派手で。

 あああもお、まっつ好きだ〜〜……。

 傷ついて、傷ついて、それでもスパッと冷酷な顔になるときが、すごい好き。
 意志の力による、冷酷さ。
 それがもお、痛々しくて。

 地味でいいよ、小さくていいよ、「バウホールサイズの演技」って言われてもいい。

 この人の、演技が好き。


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