さて、トウコだからエロ話いきます。

 トウコだから。
 ええ、ティリアンを演じているのがトウコちゃんだから、です。星組公演『エル・アルコン−鷹−』

 そもそも『エル・アルコン』にはベッドシーンが2回ある。
 大劇場で通常の2本立て公演で、たった1時間半に2回のベッドシーン、つーのは前代未聞ぢゃないのかヲイ。

 もちろん原作がそーゆーもんで、原作はもっとベッドシーンあるし、みんな露出度高いしティリアンなんか何回ケツ見せたよ?てなもんであることは、わかっている。(原作は中高生時代に読んだ。手元には何故かない。……どこへやってしまったんだろー。『七海空』はあるのになー)
 サイトー演出のこの公演も、原作の台詞まんまで「必要だから」2回もそーゆーシーンがあることも、わかっている。

 そうじゃなくて。

 ベッドシーンがあるから、そーゆー話だから、エロ、というわけではない。

 トウコだから、エロい。
 とゆーことを話したいんだ。

 
 トウコと他のジェンヌとをもっとも別モノたらしめている要因はなんじゃろ? と考えたときに、浮かぶ答えは「生々しさ」にある。
 トウコには「妖精らしさ」がない。
 女の子が男役を演じるタカラヅカでは、舞台の上全部が作り物というか、「架空」であることをたのしむ、ファンタジーとしての世界観に貫かれている。
 ベッドシーンやきわどいラヴシーンがあっても、そこに「性」はなく、「愛のカタチ」のひとつの表現として受け止める。
 そこで語られるのは美しさやロマンティックさであり、ほんとーにぬめぬめした肉感的な話ではない。

 それが、トウコがそのテのシーンを演じると、そこに「肉」を感じさせてしまう。
 
 男役のときはそれでも「創って」いるからそこまで露骨にはならないが、彼女が女役をするとそのへんが赤裸々になっていた。
 『王家に捧ぐ歌』のアイーダのエロさ。そこまでエロくする必要はないだろうし、本人もエロさに主眼を置いた役作りなんかしてないだろうに、妙にエロい。
 ラダメス@ワタルに抱きしめられたときの吐息とか、男を愛撫する指使いとか、妙にリアルな「女」だった。
 『ベルサイユのばら』のオスカルの生々しさ。大昔の人が演出した謎のエビ反りラブシーンで、形骸化した「型」を眺めるだけのはずが、そこに「性」を感じさせてくれた。
 ふたりの男と女がこれから結ばれる……実際にあれやこれやするんだ、ということをはじめて思い知らせられ、見ていてうろたえた。や、『ベルばら』は何十回と見てきたけど、「今宵一夜」の意味なんか考えなかったもん。

 『王家』のときはあくまでもラヴシーン止まりだったせいかそこまで思わなかったが、『ベルばら』では、何故トウコを嫌う人たちが一定数いるのかを思い知った。
 これほど「生々しい」持ち味のあるスターは、たしかに両刃の剣だな、と。
 タカラヅカは夢の世界。現実を持ち込んではいけないところだ。
 なのにトウコには「ナマ」の部分がある。そこは夢の世界なのに、ひどく現実的な、猥雑なものがあるんだ。
 これは、拒絶反応が出る人たちがいても、おかしくない。
 ただ苦手とかキライ、とかじゃなくて、生理的に受け付けない、という類いの反応。

 だが、トウコの抗いがたい魅力を形成しているのも、その「生々しさ」所以だと思う。

 他の「妖精」たちと一線を画する「生々しさ」。夢の世界に現実を匂わせるイヤラしさ。
 これは、拒絶反応が出るのと同じように、熱狂的に支持される独特の部分だろう。

 『エル・アルコン』は男役だが、ティリアンはもともと「そーゆーキャラ」、もともとベッドシーン多し、ということで、トウコの生々しさが女役のときのように解禁になっている。

 ペネロープ@コトコトに対しては利害意図によってだからそれほどでもないんだが、ギルダ@あすかに対して、エロさが高まっている。

 「いやよいやよ」と言っていた女が、抱かれた翌朝から男にめろめろ、というのは、あまりに安っぽく馬鹿っぽいので、ヅカでは見たくない展開のひとつである。
 それでも、なお。

 トウコだと、ソレもアリだと思える。

 敗北した陣営の女が勝者に陵辱されるのは、現代を除いたほとんどの時代に、ふつーにあったこと。
 女は、殺されるだけでは済まない。死ぬより辛い目に遭うかもしれない。また、男と違って即殺されない分、生き残るチャンスがあるかもしれない。それだけの覚悟があって、ギルダは男と同じように海に出ていただろう。
 男と同じように、たくさんの傷を躯に刻みながら、戦い続けてきた。

 その傷はたしかに勲章である。
 ギルダの、故郷と海への愛情の証であり、彼女の強さを示すものである。
 だとしても。
 彼女が「女」である以上、カラダの醜い傷痕は「女」としての彼女を損なうモノ、彼女の「傷み」であるはずだ。

 男なら誇りとして見せびらかしてもいいモノが、女には恥になる。
 理不尽だと思うけれど、事実として「そう」なんだから仕方ない。

 誇りと、傷みと。海の戦士であり、女であるギルダの持つ矛盾。

 その矛盾を、ティリアンが射抜いたのだと思う。

 つーことで、翌日欄に続く。


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