わたしは、博多へ行っていない。

 そーなんだ。そーなんだよ。
 もう何年も、博多へは行ってないんだ。かしちゃんの『コパカバーナ』が最後だよ。

 つまり、わたしの中では、ワタさんサヨナラ公演なんだ、『ネオ・ダンディズム!』って。

 博多座公演の『ネオ・ダンディズム!II』はスカステで見たけれど。いや、見たのではなく、部屋で「流して」いたけれど。
 そんなことぐらいじゃアタマに入らない。つか、「心」に入らない。
 放送されるから、と、半ば義務のように録画し、とりあえず再生した。メディアに焼いてラベルを付けて、安心した。

 博多座で『ネオ・ダンディズム!II』があり、トウコとあすかで演じられたのだとわかっていたのに……それでも今さら、感慨深かった。

 星組全国ツアー『ネオ・ダンディズム!III』

 聴き慣れたイントロは、部屋の小さなテレビで見た博多座版ではなく、大劇場へと記憶を引き戻す。
 あの夏、あの場所で、一心に見つめた。

 長身のチャイナスーツの美丈夫、華やかな美貌のチャイナドール、深い歌声の小柄な色男。
 ……て。

 いやその、テレビではほら、あんましぴんと来ないじゃん?

 実際に、生の舞台で見ると……最初に出てくるチャイナスーツの男が……正確には男のカラダのサイズが……。

 ワタさんの残像に、トウコちゃんがかぶってくると、なかなかインパクトありますな(笑)。

 しかも、トウコちゃんのパートには、ガタイ良しのしいちゃんが入るわけで。

 わはは、なんか逆だー。

 いやいや、ステキですとも。
 トウコちゃんはちっちゃくっても色男。オーラの大きさで劇場を包み込むから無問題。
 しいちゃんも安定感ある2番手ぶり。タイトにまとめた髪とか、かっこよいわ。

 ふと、雪組時代を思い出す。
 このふたり、雪組で一緒に舞台に立っていたんだよね。共に若手スターとして、注目を浴び、真ん中の道を歩んでいた。
 ……紆余曲折を経て、ここにいる。ふたりとも、すげーいい男になった。

 退団を発表したトウコちゃんが、わたしの中の「退団公演」である『ネオ・ダンディズム!』の真ん中で歌い踊ることが、なんだかちりちりと胸を焦がす。

 トウコちゃんは昔から「スター」だったし、トップになるのがあたりまえと思っていたので、ココへたどり着くまでこんなに時間が掛かるとは思ってなかった。
 時間が掛かった分いろんな役をして、さらに素晴らしい舞台人になった。
 トップに相応しい人だと思い、その能力になんの疑問もなかったし、ある意味若い頃から変わらない人ではあった。

 若い頃から想像つかない方向へ変わったのは、しいちゃんだ。
 あのキラキラのロケット・ボーイ@『ラヴィール』が、こんなに大人のいい男になるなんて、予想の範囲を超えている。

 ワタさんの『ネオ・ダンディズム!』でアタマが止まっているわたしは、公演がはじまってようやく、「あ、しいちゃんが2番手なんだ」と実感した。
 トウコちゃんのポジションを務めるしいちゃんを見て、はじめてわかったんだ。

 しいちゃんが2番手……それはあらかじめ考えていなかったことであり、そのくせしいちゃん2番手なら2番手で、「そうでなくちゃ!」と得心することだった。

 雪組にいたころ、いつか見た未来だったかもしれない。
 トウコが真ん中で大きな羽根を背負って、その横にしいちゃんがいること。
 ……もちろん当時の雪組には他にスターがたくさんいたけれど、それはさておき、パラレルワールドのひとつに存在したかもしれない光景だな、と。

 ワタさん時代の星組を、彼の時代にいた人たちを彷彿としながら、さらに雪組時代のトウコとその周辺に想いを馳せたりする、わたし的にややこしい公演でした、『ネオ・ダンディズム!III』(笑)。

 あすかちゃんも、となみちゃんとは明らかに輝きの種類が違うしなー(笑)。

 
 本公演当時、「ダンディズムとは!」と語りすぎるところがダサくて嫌でしょうがなかったんだが、さすがにもう耐性がついているので気にならず。
 むしろ、誰がどこに出るのか、点呼を取るので必死。

 それにしても、しいすず大活躍。

 しいちゃんてばさ、本公演時に3番手?3番目?ポジションをすずみんとふたりで任されていた、その出番はそのままに、2番手としての仕事もしているから、昔よりさらに出番増えている、つまり本公演時のトウコよりオイシイ役割、って、すごいなヲイ(笑)。

 「ダンディとは」の解説長台詞、トウコちゃんは濃さで押し通していたけど、しいちゃんは姿も合わせた力業で押していく感じ。なんか強そうだな、耽美カツラに耽美衣装なのに。

 そのあとの娘役ちゃんたちの群舞は、盆が回らないとさらに振付のつまんなさが増大されていたような……ゲフンゲフン。
 耽美場面なので、すずみさんのビジュアルへのこだわりっぶりに注目。王子様っつったらこの人だよなー。

 ヒゲのダンディ男の場面で、はじめて英真くみちょがいないことに気がついた。そーいや出てなかったっけ。だからにしきさんなんだ!と、思い至る。
 や、にしきさん、活躍してました。

 芝居もだけど、ショーでもしーらんの位置が上がっている気がする。おいしいなあ。かわいいなあ。

 幕間にkineさんがプログラムチェックして、「パンパミーアにあすかが出てる!」と言っていた。彼女の着目点は「リフトどうするんだろう?」……たしかに。
 女の子とラヴラヴ・カップルのストーリー色の濃い場面だから、トウコの相手役があすかなのはうれしい。しかし、リフトが必要な場合のトウコの相手役はコトコトと決まっていた……わけだから。
 や、ちゃんとリフトありました。「1回だけでしたね」と言われようと、トウアスでリフトあったんだから、大したもんだ!(笑)

 役替わりはあるかなあ、とぼんやり考えていたけれど、「恋する男はドン・キホーテ」が相変わらずしいすずで、ウケる。や、「恋ドン」はふたりの持ち歌、持ち場面だよね?!(笑) 他の誰もできないよねっ!
 それなりのセンター通路際だったんで期待してたんだけど、思いの外前方だけで客席降り終わっちゃったよ、残念。

 「明日へのエナジー」は、大好きな場面。博多へは、コレを観に行きたかったんだよなあ。行けなかったけど。
 ワタさんのポラリスを思い出しつつも、ついでに『シトラスの風』のずんこ、たかこ、ワタルを思い出しつつも、すずみんのボタンの開き具合、中の黄色が見えちゃってるよ、を気にしてみたり。

 「明日へのエナジー」のパワーを感じながら、浴びながら、トウコの星組で、ちゃんとしたショーを観たことがないだよな、と、改めて思う。
 『レビュー・オルキス―蘭の星―』は、ふつーじゃなかったからな。(草野め)
 次の公演が、集大成的な「タカラヅカのショー」であることを、心から祈る。

 そういや博多座は「all by myself」がなかったそうで。
 本公演の記憶しかない身としては、再びトウコの美声で人生ソングを聴くことができ、しみじみしましたさ……。てゆーかやっぱコレ、「退団」に直結していて、泣く。
 客席からの登場だったけど、わたしのそばは通ってくれなかったよ……うわあぁん。がんばって通路際取ったのにぃ。泣く(笑)。

 
 『ベルばら』が思いの外たのしくて、ショーは言うまでもなく楽しくて、「もっぺん観る~~」と言い、ひとりサバキ待ちしたんだけどさ(他のみんなはチケット持ってた)、あえなく玉砕……手に入らなかった。
 『アラン編』の後遺症で、「『ベルばら』なんかもう観ない、トウコだから1回は観るけど、出演者の顔を見るだけだからがんばって良席1枚だけ買って、二度ともう観ないもん!」と言ってたんですけどね……こんなことなら、安い席を何枚も買って複数回観る方を選ぶべきだったわ。

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