「舞台でがっつり絡む、ゆみことキムが見たい」

 と、ゆみこファンの友人が、常々言っておりました。
 せっかくゆみこが雪組にやってきたのに、ゆみキムって芝居でまったく絡まない。ふたりともいい芝居する人たちだから、それでいて持ち味正反対だから、この人たちが本気で向き合ったところを見てみたい。

 『風の錦絵』『ZORRO 仮面のメサイア』千秋楽、となみちゃんのサヨナラショー。

「nanaタン、nanaタンの希望が叶ってるよ?!」

 思わず、友人に会うなり言っちゃいましたよ、まさかのゆみキム!

 相変わらずのチケット難民、当日券に並んで無事観劇できました、雪楽。その、雪楽1回限りのとなみちゃんサヨナラショー。
 はじまりは、『ベルサイユのばら』のアントワネット。

 わたしは『ベルばら』キライだし、いつだってもう二度と見たくないと思っているけれど、『ベルばら』曲のイントロが流れると、血が沸き立つのは何故だ。
 何故だ、って、答えはわかってる、ヅカファンだからだ。もうDNAに刻み込まれている感じ。どの曲であろうと『ベルばら』曲を聞くと「うおおお、タカラヅカだ~~っ」と思ってしまう。
 派手なんだよな、『ベルばら』。問答無用の求心力。
 良くも悪くも、「タカラヅカ」。功と罪を詰め込んだ大作。

 その「タカラヅカ」な曲が似合うとなみ姫は、まちがいなくタカラヅカ娘役トップスターだ。

 イントロののち幕が上がるとそこには、アタマに船を飾った、アントワネット@となみちゃんが!

 船。
 アタマに、船。
 史実であろうとなかろうと、ただ純粋にだから。アタマにお船載せてるなんて、人として。
 その「変」であるはずの飾りを付けて、それでなお、変だと思わせない、となみ姫の美貌に感服。

 タカラヅカは、夢の世界である。非日常である。
 わたしたちを問答無用で夢の世界へ、非日常へ連れて行ってくれる人こそが、「タカラヅカ・スター」である。

 となみちゃんはまちがいなく「タカラヅカ・スター」だ。

 サヨナラショーがはじまる前のナガさんのお話だったか、先にとなみちゃんが船をアタマに載せてサヨナラショーに出ることを報されてしまったので、インパクトは幾分そがれたが、それでも実際目にすると、すごい。
 星組『ベルばら』当時も見ていたけど、あれは公演の中で、オープニングのコテコテ祭りの中だったからなあ。
 誰もいないあの広い舞台にひとり立ち、銀橋渡ってOKの大輪の薔薇っぷりは、すげえのひとこと。

 となみちゃんが銀橋渡っているときに、本舞台では3組のデュエット。
 退団者+組替え者+退団同期+2番手。
 ゆり香さんが泣いてるのがよくわかる……てゆーか彼女はフィナーレでも大泣きしてたけど。感無量だなあ。

 ゆみこ、テルと出て、次は水しぇんひとりで銀橋……あああ、『カラマーゾフの兄弟』好きだー。やっぱ音楽は大事だよなあ。
 水となデュエットで、次がたしかとなみちゃんひとりで「私だけに」。

 アントワネットに、エリザベート。このふたつを演じられる姫役者。
 非日常っぷりが半端ナイ。

 その余韻にひたっているときに……さらに、とんでもない非日常が。
 
 銀橋に、アルガン様@ゆみこ登場だ~~!!

 アルガン様だ、アルガン様だ!! ミーチャ@水しぇんよりも、テンション上がった。アルガン様好き~~! まさかもう一度会えるなんて。
 アルガン様、ノリノリです。『君を愛してる』最後の結婚の歌。
 そうしているうちに、下手に……レイチェル@キム登場。

 キム~~!!(笑)
 ゆみこ、テル、水しぇんと出てまたゆみこで、キムなにしてんの? と思ってたら……。

 女装するために、スタンバッてたのか!!

 ワタさんサヨナラショーのとき、トウコちゃんがアイーダを演じるためにその他の場面に一切出なかったように……キム……。

 キムはかわいこちゃんですが、何故か女装が似合いません。演出家のおじさんたちがどう思おうと、わたしには「女装はやめとけ」な人に見えます。
 そのキムくんが、その女装の似合わなさ全開に、どすこいどすこいアルガン様に迫るからさあ大変。
 アルガン様逃げて~~!(笑)

 ああまさかの、ゆみキム。まさかのカップル。

 キム、ソプラノがんばれ。声量ナイけど、笑顔は満点で歌ってます。

 そーやって大笑いさせておいて。
 本舞台のカーテンが開くとそこに、『君を愛してる』のときの面々が。

 アルセスト@かなめ、セリメーヌ@さゆ、その他サーカス団のみんなが、あの衣装、あの姿で歌っている。笑っている。

 とんでもない色彩の、だけどとびきりかわいい衣装。愛と夢を真っ向からウザいくらい歌い上げた、あのかわいいしあわせな作品。
 レオン牧師@ハマコも満面の笑顔。ああ、クレアント@ヲヅキも、わざわざ髪型センターパーツにして若ぶってるよ~~……って、アレ?

 クレアントの嫁が、かおりちゃんぢゃない。

 ヲヅキがエスコートしてラヴラヴしてるのは、ゆめみ姐さん。な、何故?
 かおりちゃんを探すと、下手のもっと端の方にまざっていた。

 ……路線以外は学年順ですか……。
 ゆめみちゃんはとなみちゃん同期だし、真ん中で見送らせてあげたいのもたしかだが、しかし、舞台の再現している場面なんだから、ふつーに役の再現して欲しかったかも……。ゆめみちゃんは単体で舞台中央にいれば済むだけのことだし。なんでかおりちゃんをわざわざあんなところへ……。

 ちょっと鼻白んだが、みんなの満面の笑顔にそれどころじゃなくなる。

 この場面ってコトは、つまり。

 そう。

 ジョルジュ@水とマルキーズ@となみの、ハッピーウェディングだ!!

 みんなに祝福され、登場したふたりの銀橋キス。最後のブーケ投げ、ブーケはサーカスの女の子@みなこの腕に。うわお。

 光。
 なんかもお、めちゃくちゃに、光。
 きらきらしている、輝いている。

 なんてところだろう、ここは。

 愛がなければ死んじゃうよ、と本気で歌っていいところ。直接的に、シンプルに。
 たのしいたのしいたのしい。

 舞台の上の美しい人たちは、みんなきらきらたのしそうに笑っている。カップルたちは肩を寄せ合い、微笑み合っている。
 合同結婚式ではないので、今回はアルセストとセリメーヌはふつーに私服でまざってる。肩を抱いて揺れている。
 愛がある。愛してる。そんなあったりまえでこっぱずかしいことをあったりまえに表現している。

 この日を最後に星組へ組替えになるかなめくんは、幕が下りる寸前、ヲヅキと微笑みをかわしていた。
 同期を見送るために女装して、お笑いに徹したキムはひたすら笑っている。

 水しぇんはとなみちゃんを姫抱っこして、みんなが祝福して。

 なにもかもが美しくてたのしくてしあわせで……泣けて仕方がない。

 ほんと、ダイスキだった、『君を愛してる』。最後にまた、この幸福感を味わえるなんて。
 ……『君愛』でいちばん好きなキャラはフィラント@キムだっのたで、フィラントがいないことは、けっこー残念なんですが……。

 まあ、あのレイチェルは、フィラントが余興で演じただけだと思ってますが。
 ジョルジュとマルキーズの結婚を祝うために、フィラントが悪ノリしてるんだよね? 巻き込まれたアルガン様大変(笑)。

 しんみりしっとり端正に、ではなく、しあわせなお祭りとして幕が下りる。
 全開の笑顔で、幕が下りる。

 しあわせだ。

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