とりあえず、途中で消えたまっつ語りを終わらせる。
 こあらった目線の『EXCITER!!』

 フィナーレ階段前の男たちのオラオラダンス。
 ここは細かいテクニックより力押し。あの細かくキメてくるまっつですら、力任せに踊ってる。そーゆー振付で、そーゆーものを演出家が求めているにしても、らしくない粗さ。
 体力的にいちばんピークに来るところなのかなー。
 ショーを通して一本調子じゃつまんないわけだから、踊り方にもいろいろあっていいわけだが、この力任せで大雑把……技術や繊細さより気合いと勢いのここのダンスは、じつはあまり好きじゃない。
 かっこいいよ。かっこいいんだけどねー。ガン見しているんだけどねー(笑)。

 だからダンスよりも、掛け声を楽しみにしている。

 まっつが、あの低音で、本気で、漢っぽく吠えている。

 台詞声や歌よりも、このダンスの声出しっていうのはある意味「本気」っぽいよね。
 一声だけで雰囲気を出さなければならない。間違ってオンナノコの声を出してはならない。
 とびきり野郎っぽく、セクスィに(笑)、わずかなタイミングで確実に、キメなくてはならない。

 まっつはなんかよく吠えていて、まっつらしくもなくアグレッシヴでたのしい。
 いい声だなほんと。

 
 で、最後のおたのしみのエトワール。

 まっつがエトワールだと最初に耳にしたときは、否定的だった。
 わたしが「エトワール」を娘役の晴れ舞台だと思っていることと、男役がやる場合でも華やかな歌ウマさんがやるべきだと思っていることからだ。
 ショーの最後は、ドレス姿の娘役さんのハイソプラノが聴きたい。非日常的な、夢の世界のプリンセスな歌声でパレードに導いて欲しい。
 そうでなければ、将来のトップスターである若手男役スターが、そのキラキラ度を全開にタカラヅカならではの美しさでパレードをはじめて欲しい。

 残念ながらまっつは、チガウと思うんだ。
 「エトワール」には向いていない。
 彼の歌声も姿もキャラクタもダイスキだけど、容赦ない言い方をすれば「こんな不幸くさい地味な男役で、パレードをはじめるのは勘弁してくれ」と思う。

 ついでに、こんだけキャラの合わない仕事が回ってくるってことは、ひょっとしてまっつ**するのかと、びびった。や、**ご祝儀っていうか餞別っていうか。言霊を恐れるため、伏せ字で書きますが(笑)。

 次に、エトワールといっても単独ではなく、いちかちゃんとふたりでだと知った。
 それならアリか、とかえって安心した。
 華やかな女性歌手と一緒なら渋い男が歌ってもわたしのイメージの「エトワール」を損なわない。
 いちかちゃんとのコンビは「いつもの」安定感、相性の良さ、ありがちなことなので、これなら**ご祝儀ではないなと、そんなことでも胸を撫で下ろした(笑)。

 そんなつまらないいろーんなことを、ささやかにうだうだとさらっと考えてはいたんですよ。

 で、実際目にしてみたら。

 まっつにエトワールが合わないって、誰が言ったのよ? んなこと言ったヤツ出てこい。(前言ころっと撤回)

 否定的な思いが全部ひっくり返りました。
 おーっほほほ、なんのことかしら、やーねぇ。

 エトワールをやるご贔屓ってのは、こんなにたのしいものなのか!!(目からウロコ)

 いろんなショーを見てきているから、エトワールっつーのが名前ばかりだったり、ワンフレーズしかソロがなかったり立ち止まって歌うのが一瞬ですぐにパレードに突入したり、いろいろあることはわかっている。
 単独エトでない以上、まっつの声を聴くことはあまりないかもしれない、とも思っていた。

 それが、ほんとにちゃんとしたエトワールで。
 あの大階段の真ん中で、ふつーに1曲歌いきる系のエトワールで。せわしなく歌い継ぐパレードで、ショートバージョンとはいえ1曲持ち歌を歌いきるのは、エトワールとトップスターだけ、という、ほんとにふつーにエトワールの役割で。

 つか、まとぶんとまっつだけなのか。パレードで1曲歌いきりって。

 改めて、じーん……。

 そう。
 わたしのなかでは「エトワールは女子」という思い込みがあって、一花と一緒に歌うのなら、彼女が主でまっつは従だと思っていたのね。彼女のソプラノを、まっつが下から支えるのだと。
 ……すみません、んなこたぁないですね。タカラヅカは男役上位。
 あくまでもまっつがソロ歌手で、いちかちゃんはハモり要員でした。デュエットですらなく。
 や、それでも形式としてはデュエットでふたりエトワールなんだけど、まっつの単独エトだなんて思ってないし実際チガウんだけど。

 まっつがどうこうではなく、タカラヅカのシステムとして。
 まっつが主旋律と歌詞を歌い、一花はそれに「るーるー♪」とスキャット入れるか歌詞を重ねて歌うという主従ぶりは、見る前に「まっつだからきっと従の方」と勝手に思い込んでいたわたしが、まーーったく予想だにしなかったことなの。

 まっつが、パレードで1曲ソロ。いちかゃんという実も華もあるすばらしい相棒と共に。
 じーん……。

 ドリーミングな導入歌を、まっつが確実な「男役の声」で歌う。
 ショー『EXCITER!!』導入部で夢王子がうっとり歌っていた、名前通り夢夢しい美しい旋律。
 まっつの低音に、一花が確実にハモりを入れる。響き合う美しさ。

 まっつは饒舌な歌手ではない。
 美声だけど確実だけど、表現力が高いとは、あまり思ってない。

 だけどこの「エトワール」という役に求められる「的確な美しさ」は果たしていると思う。
 端正であること。
 大きく深く響くこと。

 光とか華とかには欠けているかもしれないが(笑)、まっつの的確で端正で真面目な歌声は、個人の個性よりも記号としての技術を必要とするエトワールに、ある意味合致しているのかもしれない。
 と、思った。

 ……ので、見る前はあんまりよく思ってなかったくせに、前言ころっと撤回、大フィーバー。

 やーん、エトワールうれしいっ、エトワールたのしいっ。

 まっつが本気できれいに歌ってるよーっ。
 ただ「キレイであること」に集中していいんだもの、役割的に。
 美声をより真正面から研ぎ澄ましている感じがもお、たまらん~~。

 ありがとうフジイくん、ありがとうまっつ。
 まっつのエトワールが見られて、聴けて、心からうれしい。

 
 パレードの並びは壮くんの隣。
 大きな羽根にときどき攻撃されてるのもたのしい。
 や、いっそまっつの後ろが全部壮くんの黒い羽根に覆われて欲しい(笑)。背景全部黒。まっつ黒髪だから保護色。

 いつだっけかの午後公演、まっつが肩から掛けてる赤い羽根ショールがはずれちゃったことがあって。
 肩からずり落ちるの、羽根が。
 まつださん、必死。笑顔振りまきながら、押さえるのに必死。

 で。
 それに気づいたのは、たぶん隣の壮さんのみ。羽根は壮くん側の肩に掛けているわけだし。片手でごそごそやっているのは、隣ならばわかるもんなんでしょう。

 ずり落ちる羽根を必死に押さえ、誤魔化し歌うまっつを見て。

 壮一帆、容赦なく笑う。

 今あの人爆笑した? ぱかっと笑ったぞ、まっつ見て?!!
 ナニあのSっぷり!!(笑)
 いやあ、今回壮くんとの絡みが美味しいわ~~(笑)。

 
 今回まっつまっつな位置はみんな上手側で、上手前方はふつーには手に入らないしでしょぼんなんだが、最後のパレードだけは下手側。
 エトワールで上手にはけるわりに、次に登場するときは下手端からなのー。後ろぐるーっと走ってるのかなー、とか考える(笑)。

 『EXCITER!!』のまっつは大変美味です、はい。
 あー、かっこいー。

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