ダンディであることの、難しさってば。@新人公演『カサブランカ』
2009年12月1日 タカラヅカ 凪七瑠海に足りないモノはなんだろう、と思いながら観劇した。
宙組新人公演『カサブランカ』。
初主演おめでとー!のリック@カチャは、とりたてて破綻している部分もなく、学年的な及第点の実力を持つ子だ。華もあるし、若手スターとして路線コースを歩むのはふつうのことなんだろう。
現に今までそーやって、華々しい下級生ライフを送っていたはずだ。初舞台からずっと抜擢されてきただけあって、経験値も高いし、技術もある。
『エリザベート』の特出タイトルロールは今でもどーゆーことなのかさっぱりわからないが、それによって舞台人スキルはさらに上がったことだろう。
ここまで足場は固められているのに、何故こうも彼は「足りない」のだろう、と首を傾げていた。
いやそれはやはり、どうごたくを並べたところで、視覚から来るものが理由なんだろうなあ。
終演後、「カチャに足りないものってなんだろう」とうなるわたしに、友人がすっぱりと「男臭さでしょ」と言い切った。「大人の男に見えないもん」と。
友人に言い切られるまで、わたしの視覚情報は混乱していた。
けっこー良席で観ていたので(友会ありがとう)、カチャリックがものすごーく意識して「男役」を作っていることはわかったんだ。
スーツの着こなしや仕草について、彼はとてもがんばって作っていた。
その技術と気合いと、でも実際の体型とが同時に目に入るもんだから、混乱必至。
ふつーあれくらいがんばって着こなして演技していたら、男に見えると思うんだ。それだけのことをしているんだから。
なのに、ぶっちゃけ、男に見えなかった。女の子がカラダに合わない男物のスーツを着ている、もしくは首から上だけアイコラした画像のようだった。
これは……混乱するよなあ。
演技は悪くない……というか、ゆーひのコピーだった。
初主演する子が、トップを丸コピするのはスタンダードなので別にいい。コピーできる技量があるってことだ。技術のない子はコピーすらできない。
台詞の言い回しから表情から仕草から、とても真面目に本役をなぞっている分、体型の差が如実に違和感となった。
あー……難しいなこれは。
小柄な男役が本人の実力とは別の部分で一般的な美しさにマイナス点が付けられるように、スタイルが良すぎてもマイナスになってしまうのか。
カチャのスタイルに合った衣装を、彼に合わせて作ってもらえるなら問題はないのかもしれないが、本役さんのコピーデフォの新公だと大変だよな。
また、娘役泣かせの体型だと痛感した。
現実男女ならば、身長云々以前に、男の方が顔が大きい。身長が同じ、あるいは女の方が高くても、顔は女の方が小さくて当たり前なんだ。
だからカチャが男役ならば、それに寄り添う娘役は彼より顔が小さくなくてはならない。身長が170cmでも150cmでもかまわないから、とにかくカチャより小顔でないと、男女のビジュアル比がおかしくなる。パースの狂った絵に見えてしまう。
相手役のえりちゃんもそれほどスタイルが悪いわけでもないだろうに、割を一気に食ってしまっている。
同時にカチャは、自分より小顔な女の子と組まないと、ますます男に見えにくくなるということだ。
た、大変だな……。
スーツよりもコスチュームもの方が合うのかもな、彼のスタイルは。
新公は仕方ないとして、主演バウは彼が無理なく男に見える衣装を着せてあげて欲しい。……って、バウも同じ時代だからスーツなのか……?
歌える子だと思っていたので、歌が思ってたよりアレレで残念だったんだが、何ヶ月も娘役をやっていたせいだろうか。
で、肝心の芝居だが、前述の通り本役をなぞるのは新公の常だからイイとゆーか、仕方ないんだが……。
ただ、ゆーひくんの演技はゆーひくんだからもっている、許されている部分が多分にある。アレをまんまコピっても、カチャリックの魅力にはつながりにくい。
だってゆーひさん、あんまし表情変わんないし、台詞一本調子だし……アレは真似ない方が……ゲフンゲフン。(や、だからアレはゆーひだからイイんだって)
また、これはエリザベート役のときも感じたんだけど、うまいしふつーに及第点あるんだけど、なんかこう、見ていると途中で飽きてしまう。
華はあるんだし、主役でいいと思うんだけれど、わたしの好きな芝居ではないんだろう。最初に注目していたほどには、あとになると興味が持てなくなる。注目する集中力や意欲が低下していく。物語は高まっているのに、主役に興味がなくなっていくのは、どーしたもんか。
芝居ってのは好みが大きく作用するもんなんで、わたし限定かもしれないが。
それでも、外見が美しければ、そんなもんぶっ飛ばして注目せざるを得なくなるんで、やっぱまず男に見える着こなしが最重要課題か。
小柄な子はその身長ゆえにさんざん「男役としてかっこよくない」と言われながら、工夫して色男になっていってる。体型ってのは技術で補うことができるので、がんばって欲しい。
彼はこの時点ですでに88期の新公主演者、WS主演者3人を抜いた扱いが決定している。プログラムの扱い、単独バウの主演。真意はどうあれ、年功序列を表向きはなかなか崩さないタカラヅカにおいて、ここまで簡単に性急に同組内でポジションを変えてくるのは、そうそうあることじゃない。
トップスターになることが彼の宿命ならば、その宿命を眺めたいと思う。
宙組の先代のトップスターもまた、入団と同時にその宿命を背負い、キラキラ笑顔の下でいろんなものと戦ってきた人だった。
当代のトップスターは反対に、路線外認識から長い時間を掛けて真ん中へたどり着いた人だ。
いろんなキャラクタがいることが、タカラヅカのおもしろさ、素晴らしさ。
ジェンヌ人生は一通りではなく、ジェンヌの数だけあっていいと思う。
だからあとは、これからカチャがどんなスターになっていくのかが注目事項。
学年相応、ではなく、立場に相応しい実力とかハッタリとかを身につけてほしいと思う。
自分が前にナニを書いたのか、細部まではおぼえていないので、『Paradise Prince』新公の感想を今になって読み直してみたんだけど、今回と同じこと書いてるよ、オレ……。
>『殉情』でふつーの若者としてあんなにかっこよかったのに、スーツ姿になると
>やはり衣装に「着られている」感が強く、技術がないわけではないのに「女の子
>の男装」になってしまう。体格のハンデが大きいのかな。
早くスーツを着こなせるようになって欲しいなあ。いやその、すっごく一途に作って、演技していたことはわかるんだけれど。そのがんばりはあっぱれなんだけど。
がんばっていることが見えないように、ふつーに男として舞台に立ってくれるといいな。
宙組新人公演『カサブランカ』。
初主演おめでとー!のリック@カチャは、とりたてて破綻している部分もなく、学年的な及第点の実力を持つ子だ。華もあるし、若手スターとして路線コースを歩むのはふつうのことなんだろう。
現に今までそーやって、華々しい下級生ライフを送っていたはずだ。初舞台からずっと抜擢されてきただけあって、経験値も高いし、技術もある。
『エリザベート』の特出タイトルロールは今でもどーゆーことなのかさっぱりわからないが、それによって舞台人スキルはさらに上がったことだろう。
ここまで足場は固められているのに、何故こうも彼は「足りない」のだろう、と首を傾げていた。
いやそれはやはり、どうごたくを並べたところで、視覚から来るものが理由なんだろうなあ。
終演後、「カチャに足りないものってなんだろう」とうなるわたしに、友人がすっぱりと「男臭さでしょ」と言い切った。「大人の男に見えないもん」と。
友人に言い切られるまで、わたしの視覚情報は混乱していた。
けっこー良席で観ていたので(友会ありがとう)、カチャリックがものすごーく意識して「男役」を作っていることはわかったんだ。
スーツの着こなしや仕草について、彼はとてもがんばって作っていた。
その技術と気合いと、でも実際の体型とが同時に目に入るもんだから、混乱必至。
ふつーあれくらいがんばって着こなして演技していたら、男に見えると思うんだ。それだけのことをしているんだから。
なのに、ぶっちゃけ、男に見えなかった。女の子がカラダに合わない男物のスーツを着ている、もしくは首から上だけアイコラした画像のようだった。
これは……混乱するよなあ。
演技は悪くない……というか、ゆーひのコピーだった。
初主演する子が、トップを丸コピするのはスタンダードなので別にいい。コピーできる技量があるってことだ。技術のない子はコピーすらできない。
台詞の言い回しから表情から仕草から、とても真面目に本役をなぞっている分、体型の差が如実に違和感となった。
あー……難しいなこれは。
小柄な男役が本人の実力とは別の部分で一般的な美しさにマイナス点が付けられるように、スタイルが良すぎてもマイナスになってしまうのか。
カチャのスタイルに合った衣装を、彼に合わせて作ってもらえるなら問題はないのかもしれないが、本役さんのコピーデフォの新公だと大変だよな。
また、娘役泣かせの体型だと痛感した。
現実男女ならば、身長云々以前に、男の方が顔が大きい。身長が同じ、あるいは女の方が高くても、顔は女の方が小さくて当たり前なんだ。
だからカチャが男役ならば、それに寄り添う娘役は彼より顔が小さくなくてはならない。身長が170cmでも150cmでもかまわないから、とにかくカチャより小顔でないと、男女のビジュアル比がおかしくなる。パースの狂った絵に見えてしまう。
相手役のえりちゃんもそれほどスタイルが悪いわけでもないだろうに、割を一気に食ってしまっている。
同時にカチャは、自分より小顔な女の子と組まないと、ますます男に見えにくくなるということだ。
た、大変だな……。
スーツよりもコスチュームもの方が合うのかもな、彼のスタイルは。
新公は仕方ないとして、主演バウは彼が無理なく男に見える衣装を着せてあげて欲しい。……って、バウも同じ時代だからスーツなのか……?
歌える子だと思っていたので、歌が思ってたよりアレレで残念だったんだが、何ヶ月も娘役をやっていたせいだろうか。
で、肝心の芝居だが、前述の通り本役をなぞるのは新公の常だからイイとゆーか、仕方ないんだが……。
ただ、ゆーひくんの演技はゆーひくんだからもっている、許されている部分が多分にある。アレをまんまコピっても、カチャリックの魅力にはつながりにくい。
だってゆーひさん、あんまし表情変わんないし、台詞一本調子だし……アレは真似ない方が……ゲフンゲフン。(や、だからアレはゆーひだからイイんだって)
また、これはエリザベート役のときも感じたんだけど、うまいしふつーに及第点あるんだけど、なんかこう、見ていると途中で飽きてしまう。
華はあるんだし、主役でいいと思うんだけれど、わたしの好きな芝居ではないんだろう。最初に注目していたほどには、あとになると興味が持てなくなる。注目する集中力や意欲が低下していく。物語は高まっているのに、主役に興味がなくなっていくのは、どーしたもんか。
芝居ってのは好みが大きく作用するもんなんで、わたし限定かもしれないが。
それでも、外見が美しければ、そんなもんぶっ飛ばして注目せざるを得なくなるんで、やっぱまず男に見える着こなしが最重要課題か。
小柄な子はその身長ゆえにさんざん「男役としてかっこよくない」と言われながら、工夫して色男になっていってる。体型ってのは技術で補うことができるので、がんばって欲しい。
彼はこの時点ですでに88期の新公主演者、WS主演者3人を抜いた扱いが決定している。プログラムの扱い、単独バウの主演。真意はどうあれ、年功序列を表向きはなかなか崩さないタカラヅカにおいて、ここまで簡単に性急に同組内でポジションを変えてくるのは、そうそうあることじゃない。
トップスターになることが彼の宿命ならば、その宿命を眺めたいと思う。
宙組の先代のトップスターもまた、入団と同時にその宿命を背負い、キラキラ笑顔の下でいろんなものと戦ってきた人だった。
当代のトップスターは反対に、路線外認識から長い時間を掛けて真ん中へたどり着いた人だ。
いろんなキャラクタがいることが、タカラヅカのおもしろさ、素晴らしさ。
ジェンヌ人生は一通りではなく、ジェンヌの数だけあっていいと思う。
だからあとは、これからカチャがどんなスターになっていくのかが注目事項。
学年相応、ではなく、立場に相応しい実力とかハッタリとかを身につけてほしいと思う。
自分が前にナニを書いたのか、細部まではおぼえていないので、『Paradise Prince』新公の感想を今になって読み直してみたんだけど、今回と同じこと書いてるよ、オレ……。
>『殉情』でふつーの若者としてあんなにかっこよかったのに、スーツ姿になると
>やはり衣装に「着られている」感が強く、技術がないわけではないのに「女の子
>の男装」になってしまう。体格のハンデが大きいのかな。
早くスーツを着こなせるようになって欲しいなあ。いやその、すっごく一途に作って、演技していたことはわかるんだけれど。そのがんばりはあっぱれなんだけど。
がんばっていることが見えないように、ふつーに男として舞台に立ってくれるといいな。
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