『フットルース』覚え書き。映像残らないから、気持ちばかりが焦る。
 この大好きな物語を、どうやって留めればいいんだろう。

 ラスボスのムーア牧師@まっつが折れて、ダンス解禁になった。大喜びする人々。
 そんな中、チャック@きんぐは「俺は街を出る」と言う。

 チャックの「役割」はとしてもうまく出来ている。
 オープニングの主題歌「フットルース」で、レンも含め若者たち全員「♪逃げ出したい」と歌っていた。
 だけど彼らは逃げて終わるのではなく、現状に立ち向かい、自ら未来を切り開くことをおぼえた。そうやって実際に、勝利を、自由を得たんだ。
 結果を出した人々のところへ、なにもしなかった男がやって来て、オープニングと同じように「逃げ出す」と言う。そして、逃げ出す男が勝利者たちに向かって吐き捨てる。「負け犬め!」

 このチャックのダメダメっぷり。
 出発点は同じだったのに、成長した者と、そのままの者、鮮やかに線を引かれている。

 「負け犬」と罵るチャックこそが負け犬であり、逃げることしか出来ない彼は、どこへ行っても悲惨な人生を送ることになるだろう。
 「フットルース」というテーマを表すアンチテーゼとして、完璧。

 だからほんとに、きんぐの役作りがハンパでなあ。
 チャックは完全な悪役、しかもかっこいい悪役ではなく、嫌われ者の勘違い男でなきゃいかんのだわー。
 アリエルを本気で愛する必要はないし、仲間も不要。ひたすら自分勝手で下劣で、観客が「あいつ大嫌い! 不幸になってうれしい!」と思うくらいでないと、収まりが悪い。

 ひとりだけ「フットルース」できないチャックが可哀想に思えてしまう、今の状態はどうかと思う。
 チャックが「彼なりに、良い人」だと、誰もチャックに手を差し伸べないのが「ひどい」ようにも、見えてしまうから。

 でもここはタカラヅカで、二枚目男役に、みっともないつまらない男は演じさせられないのかなあ。
 わたしだって、きんぐがかっこよかったり、かわいげのあるキャラを演じてくれる方がうれしいもんなあ。

 あ、このチャック登場シーンは、上手と下手とで学生たちの反応が違って愉快。
 チャック登場の上手側は、彼に反応。咲ちゃんがさりげなくさらさちゃんを背中にかばうのがツボ。
 下手側の連中は、チャックに気づいてないので、なごやかなまま。いちばん端でウィラード@コマとラスティ@あゆっちはいちゃいちゃラヴラヴ(笑)。まなはるはいちびり(大阪弁)。

 ウィラード&ラスティの「ママが君にあれ作ってくれるって……あれ……クロワッサン!!」「クロワッサン?? ああ、ひょっとして、コサージュ?」というコントには、「サ」しか合ってへんがな!!と大阪の観客たちは盛大にツッコミ入れてることでしょう……。

 かわいいカップルのいちゃいちゃコントのあとは、熟年カップルのチークダンス。
 ムーア夫妻が濃いですほんと。
 てゆーかキスするのかと思った。いやむしろ、してくれていいから。

 正面から抱き合って、次に横並びに抱き合って退場、なんだけど、体勢を変えても「身体の隙間ができないような」……なんつーんだ、重ねたあと隙間を押して埋めるような抱きしめ方に、くらくらするっす。まっつ……。


 そしてラストシーン、物語のフィナーレ。
 タキシードに着替えた子どもたちがかわいい。

 ネタバレだから無理なのはわかるけど、こっちの「フットルース」の歌詞をプログラムに載せて欲しかった。だって、こっちこそが主題歌だよな。おしゃれして楽しく踊ろう!という内容。
 自由を手に入れ、解き放たれて踊る。
 「腰を振ろう」の男の子たちの振付が好き(笑)。タキシードで腰を振るのはいいよねー。濃ゆい花男の腰振りばっか見てたから、雪男たちの腰振りはなんかくすぐったい……(笑)。

 と思っていたら、上から来ました、例の花男。タキシードに着替えて、着飾った妻の手を取り。

 子どもたちのイベントに、本気で正装してやってくる大人たちが愛しい。

 だって、体育館だよ? ティッシュで作ったお花とかで飾ってあるわけだよ? すげーちゃちいわけじゃん。子どもだましでしかないじゃん。
 なのに牧師はじめ、大の大人たちが大真面目にタキシード着てやってくるのさ。

 それって、敬意だよね。

 子どもたちの自立を、心意気を認めてるんだ。
 正装は、相手への尊敬を表す。正しく着飾り、その場の空気に則り正しく盛り上がる……いろんなしがらみを捨て、解き放ち、「フットルース」したことが、よくわかる。

 ここでいきなりアリエル@みみちゃんと踊る牧師様。
 父と娘のダンスにあまり見えない……のは、まっつがふつーにはじけた笑顔でいるから。
 踊りたかったんだねえ、牧師様。

 あんだけひどいダンバー先生@香音くんも、しれっとタキシード着てまざってるのが……(笑)。
 だからダンバー先生のドラマを知りたいぞっ。

 みんなキラキラかわいくて、きれいで幸せで。
 最高のフィナーレ。

 踊っているときはいろんな組合わせでも、幕が下りる瞬間、ちゃんとカップルに戻ってるのがいいねー。ヴァイ@きゃびいの腰を抱く牧師様好きだなー。


 物語は終了、公演フィナーレ開始。
 ひとり街を出たはぐれ者チャック……の中の人、きんぐがセンター。
 チャックのテーマソングを歌い、踊る。

 きんぐはたしか歌の人で、「歌える路線」と言われていたはず……だよな、その昔。あれは水時代に新公やってたから、本役との兼ね合いでそんな印象になっただけか??
 年々歌ウマ認識が薄れていくのはどうしたものか(笑)。
 そして、歌がどうあれ、きんぐはきんぐというキャラを確立しつつあるんだなあと、そこが愛しい。

 バックで踊る娘たちは、さらさ、えーちゃん、あだちゅー、ありちゃん。……ありちゃん、ビッグサイズ……(笑)。

 日替わりフィナーレは、なんつっても「HERO」バージョン推しですわたしは。
 頼むよ劇団様、フィナーレだけでも映像残して。黒燕尾ワイルドエロまっつが二度と見られないなんて悲しすぎる。

 キムみみデュエダンは、実はキムくんの衣装あまり好きじゃない。みみちゃんの白ドレスが好きなせいかな、キムくんがゴテゴテし過ぎてる気がして。
 初日は「え、キムゴテゴテ、みみシンプル、そんなちぐはぐテイストでデュエダンするの?!」と驚いた。
 でもまあ、慣れた。それもありかと。
 キムくんのこれでもかというゴテゴテキラキラ衣装は、演出サイドの彼への気持ちなんだろう。豪華な衣装こそがタカラヅカのステイタスだから。

 踊るふたりがほんとに幸せそうで。きれいで。
 泣ける。


 パレード以下もかわいくて好き~~。
 みんなそれぞれの衣装でペンライト持ってにっこにこ。
 それこそオタ芸的な振付で踊ってみたり、ジャンプウェーブやったり、自由に盛り上がって終わる。

 このまま時よ止まってくれ、と思う。
 今の彼らを、この作品を、ずっとずっと、見ていたい。

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