彼の、生きる目的。@Victorian Jazz
2012年11月27日 タカラヅカ わからないことがあるの。
『Victorian Jazz』は他愛ないお話。悪役もバカだし、誰も死なないし、気軽に観られる軽快な小品だから、考え過ぎちゃいけないことはわかってる。
その上で、基本的な疑問。
主人公ナイジェルさんは、ナニがしたかったのか。
ナイジェルさん@だいもんは、「脱出王」を自称する奇術師。本人はすごいつもりらしいが、実際には売れないパフォーマーで、借金まみれ。
食い詰めて仕方なく犯罪を働くことになった。
人を騙して、金を入手する。
立派に、犯罪。容赦なく、犯罪。
似たところでシャンドンさんという人がいる。『マジシャンの憂鬱』という作品の主人公で、職業はマジシャン。彼は「透視術」を使う奇跡のマジシャンとして時代の寵児になり、ついにはその国の皇太子に召喚される。
シャンドンさんはぎりぎりセーフだと思う。
だって彼は最初から「マジシャン」だと名乗っている。マジックには種も仕掛けもある。その上で本物の魔法のように、超能力のように見せかけるのが、仕事。
シャンドンさんはマジシャンであり、後付けで超能力者ってことになっているので、たとえ透視が全部嘘でも「だからマジックだと言ったでしょう? マジックに種や仕掛けがあるからって責められても困ります」と言える。
彼はマジックの延長で「透視術」を使い、結果超能力者のように祭り上げられることになる。あとに引けないので、皇太子の前で茶番劇を演じ、ほんとうに透視しているかのように振る舞うはめになった。
それは「マジック」の範囲を逸脱し、詐欺と呼べる行動だけど、スタートは「マジック」。最初から詐欺目的でやったわけじゃない。
でもナイジェルさんはチガウ。
彼は明確に、金欲しさに、詐欺を計画する。
懸賞金目当てに、降霊術師のふりをする。
自ら「英国心霊主義協会」へ出向き、「降霊術師のナイジェルです」と名乗る。
えーっとこれって、マジで犯罪だよね?
詐欺だよね?
シャンドンさんはマジシャンだけど、ナイジェルさんは詐欺師だよね?
降霊術は、嘘っぱち。お金を得るために、フリをしただけ。観察眼に長けた彼は、その人を見るだけで背景がわかる、だから「霊が教えてくれる」ことにして真実を言い当てる。
ザ・詐欺師。
依頼主の求める答えを差し出すわけだから、答えと報酬が等価交換、釣り合っているから問題なし?
いやいや、結果としてそうであったとしても、提示する初期情報が違っていたら犯罪でしょ?
おいしい桃が食べたくて「産地直送、今朝採れた桃を販売してます」という店で桃を買った。払った金額に見合うだけおいしかった。……でもその桃は、産地も出荷日も嘘っぱちだった、……って、おいしかったとしても、「騙された!」と思うよね? 古い某国産の桃を照明や包装で誤魔化して「本日何時出荷・国内産」とシールを貼って売っていたなら、詐欺だよね?
まあ、犯罪でもいいや。
ナイジェルさんは、目的のためになんでもやっちゃう人、そういう設定なのね? 悪人ヒーローは、物語の中ならアリ。
で、わかんないのはここから。
ナイジェルさんは、なんの罪もない人々から、お金を騙し取ることに成功した。……ふつーなら、そこで逃げ出すよね?
協会の人たちから支援を約束された。それって「歩合制」だとか「年間契約でひと月ごとの支給」だったりしたの?
そんな長期スパンで詐欺行為を続ける前提だったの?
ふつー、「降霊術師だ」と信じ込ませることに成功したなら、そこでどんと大金を出させるよね? 理由はなんでもでっちあげて。
だって、犯行時間は短い方がいいし、関係者は少ない方がいい。
信じさせることに成功した、そしたら即お金を出させるよね? ナイジェルさんはなにしろアタマが良くて舌先三寸で人を騙すことが得意なんだもの。言いくるめられて、お金を得られないはずがない。
目的はお金。お金は手に入った。んじゃ、逃げなきゃ。
なのに彼は、何故かそのまま、機嫌良く嘘をつき続けていた。詐欺行為を続けていた。
お金が手に入らずしぶしぶ、には見えない。
ナイジェルさんは堂々と本名で降霊術師を名乗り、マスコミに取り上げられる。カリスマとしてもてはやされる。
それこそ、町中でサインを求められるのが日常になるくらいに。
とーーっても、スターライフを満喫している、ように見えた。
ナイジェルさんは、ナニがしたいの?
目的はお金ではなかったってこと?
彼は売れない奇術師だった。てっきり奇術で名を成したいんだと思っていた。お金が必要なのも、奇術で使う金庫を買い戻すためだったし。
でも、どうやら違うようだ。
ナイジェルさんは、「降霊術師」だと名乗ってしまった。
マジシャンがジョブチェンジして超能力者になることはできる。シャンドンさんのように。
それと同じで、奇術師がジョブチェンジして降霊術師になることはできる。
マジシャン(奇術師)は、技術を駆使する「人間」だ。本当は超能力者だが、人間のフリをしていた、なら通用する。高次の能力を持つ者が、あえて身分を隠していたならば。
だけどその逆はない。
降霊術師から奇術師のジョブチェンジは、できない。
一旦「私は超能力者です」と言って報酬を得ていた者が、「実はただの奇術師で、みんなトリックだったんです」では通らないためだ。
本名で降霊術師としてデビューし、しかも世間にちやほやされてしまったら、もう奇術師には戻れない。
降霊術師を辞めるときは、なにもかも捨てて逃げ出すとき。
顔と名前の知られたところでは、もう新しいことはナニも出来ない。
ナイジェルさんの目的は、世間にちやほやされること?
奇術であろうとインチキ降霊術でも、なんでもよし? 世間から「天才現る!」「ナイジェル様~~ステキ~~!」と言われれば、それで人生成功なの?
あちこちで奇術へのこだわりを見せていたし、ラストはアメリカへ奇術修行に旅立つし、あくまでもナイジェルさんの基盤は「奇術師」だと思っていたから、わけわかんない。
ナイジェルさん、ナニがしたいの?
奇術師としての自分を大切にするなら、そもそも犯罪なんかに手を染めないし、あえてそうしたとしても、1回限りでやめるよね?
得たお金でそれこそアメリカへ渡って、名前を変えて奇術師として生きるよね?
降霊術師として大スターになって、ナニがしたかったんだろう……。
『Victorian Jazz』は他愛ないお話。悪役もバカだし、誰も死なないし、気軽に観られる軽快な小品だから、考え過ぎちゃいけないことはわかってる。
その上で、基本的な疑問。
主人公ナイジェルさんは、ナニがしたかったのか。
ナイジェルさん@だいもんは、「脱出王」を自称する奇術師。本人はすごいつもりらしいが、実際には売れないパフォーマーで、借金まみれ。
食い詰めて仕方なく犯罪を働くことになった。
人を騙して、金を入手する。
立派に、犯罪。容赦なく、犯罪。
似たところでシャンドンさんという人がいる。『マジシャンの憂鬱』という作品の主人公で、職業はマジシャン。彼は「透視術」を使う奇跡のマジシャンとして時代の寵児になり、ついにはその国の皇太子に召喚される。
シャンドンさんはぎりぎりセーフだと思う。
だって彼は最初から「マジシャン」だと名乗っている。マジックには種も仕掛けもある。その上で本物の魔法のように、超能力のように見せかけるのが、仕事。
シャンドンさんはマジシャンであり、後付けで超能力者ってことになっているので、たとえ透視が全部嘘でも「だからマジックだと言ったでしょう? マジックに種や仕掛けがあるからって責められても困ります」と言える。
彼はマジックの延長で「透視術」を使い、結果超能力者のように祭り上げられることになる。あとに引けないので、皇太子の前で茶番劇を演じ、ほんとうに透視しているかのように振る舞うはめになった。
それは「マジック」の範囲を逸脱し、詐欺と呼べる行動だけど、スタートは「マジック」。最初から詐欺目的でやったわけじゃない。
でもナイジェルさんはチガウ。
彼は明確に、金欲しさに、詐欺を計画する。
懸賞金目当てに、降霊術師のふりをする。
自ら「英国心霊主義協会」へ出向き、「降霊術師のナイジェルです」と名乗る。
えーっとこれって、マジで犯罪だよね?
詐欺だよね?
シャンドンさんはマジシャンだけど、ナイジェルさんは詐欺師だよね?
降霊術は、嘘っぱち。お金を得るために、フリをしただけ。観察眼に長けた彼は、その人を見るだけで背景がわかる、だから「霊が教えてくれる」ことにして真実を言い当てる。
ザ・詐欺師。
依頼主の求める答えを差し出すわけだから、答えと報酬が等価交換、釣り合っているから問題なし?
いやいや、結果としてそうであったとしても、提示する初期情報が違っていたら犯罪でしょ?
おいしい桃が食べたくて「産地直送、今朝採れた桃を販売してます」という店で桃を買った。払った金額に見合うだけおいしかった。……でもその桃は、産地も出荷日も嘘っぱちだった、……って、おいしかったとしても、「騙された!」と思うよね? 古い某国産の桃を照明や包装で誤魔化して「本日何時出荷・国内産」とシールを貼って売っていたなら、詐欺だよね?
まあ、犯罪でもいいや。
ナイジェルさんは、目的のためになんでもやっちゃう人、そういう設定なのね? 悪人ヒーローは、物語の中ならアリ。
で、わかんないのはここから。
ナイジェルさんは、なんの罪もない人々から、お金を騙し取ることに成功した。……ふつーなら、そこで逃げ出すよね?
協会の人たちから支援を約束された。それって「歩合制」だとか「年間契約でひと月ごとの支給」だったりしたの?
そんな長期スパンで詐欺行為を続ける前提だったの?
ふつー、「降霊術師だ」と信じ込ませることに成功したなら、そこでどんと大金を出させるよね? 理由はなんでもでっちあげて。
だって、犯行時間は短い方がいいし、関係者は少ない方がいい。
信じさせることに成功した、そしたら即お金を出させるよね? ナイジェルさんはなにしろアタマが良くて舌先三寸で人を騙すことが得意なんだもの。言いくるめられて、お金を得られないはずがない。
目的はお金。お金は手に入った。んじゃ、逃げなきゃ。
なのに彼は、何故かそのまま、機嫌良く嘘をつき続けていた。詐欺行為を続けていた。
お金が手に入らずしぶしぶ、には見えない。
ナイジェルさんは堂々と本名で降霊術師を名乗り、マスコミに取り上げられる。カリスマとしてもてはやされる。
それこそ、町中でサインを求められるのが日常になるくらいに。
とーーっても、スターライフを満喫している、ように見えた。
ナイジェルさんは、ナニがしたいの?
目的はお金ではなかったってこと?
彼は売れない奇術師だった。てっきり奇術で名を成したいんだと思っていた。お金が必要なのも、奇術で使う金庫を買い戻すためだったし。
でも、どうやら違うようだ。
ナイジェルさんは、「降霊術師」だと名乗ってしまった。
マジシャンがジョブチェンジして超能力者になることはできる。シャンドンさんのように。
それと同じで、奇術師がジョブチェンジして降霊術師になることはできる。
マジシャン(奇術師)は、技術を駆使する「人間」だ。本当は超能力者だが、人間のフリをしていた、なら通用する。高次の能力を持つ者が、あえて身分を隠していたならば。
だけどその逆はない。
降霊術師から奇術師のジョブチェンジは、できない。
一旦「私は超能力者です」と言って報酬を得ていた者が、「実はただの奇術師で、みんなトリックだったんです」では通らないためだ。
本名で降霊術師としてデビューし、しかも世間にちやほやされてしまったら、もう奇術師には戻れない。
降霊術師を辞めるときは、なにもかも捨てて逃げ出すとき。
顔と名前の知られたところでは、もう新しいことはナニも出来ない。
ナイジェルさんの目的は、世間にちやほやされること?
奇術であろうとインチキ降霊術でも、なんでもよし? 世間から「天才現る!」「ナイジェル様~~ステキ~~!」と言われれば、それで人生成功なの?
あちこちで奇術へのこだわりを見せていたし、ラストはアメリカへ奇術修行に旅立つし、あくまでもナイジェルさんの基盤は「奇術師」だと思っていたから、わけわかんない。
ナイジェルさん、ナニがしたいの?
奇術師としての自分を大切にするなら、そもそも犯罪なんかに手を染めないし、あえてそうしたとしても、1回限りでやめるよね?
得たお金でそれこそアメリカへ渡って、名前を変えて奇術師として生きるよね?
降霊術師として大スターになって、ナニがしたかったんだろう……。
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