ショーの新人公演は、どの組も等しくやるべきだ。

 『Étoile de TAKARAZUKA』新人公演を観て、痛感した。

 今星組はとてもパワーがあり、華やかな組。トップのれおんくんの実力と人気もさることながら、下級生たちのパワーもすごい。
 層が厚い、って武器だよな。
 ……と思ったあとで、冷静にひとりずつの顔を思い浮かべて、他組の同じ立場や学年子たちと、個人個人はそんなに差異を感じないことに思い至る。
 個人の技能だけの話じゃないな。
 「ショー」に力を入れている、って、直接的なパワーになるんだ。

 星組は去年の『ノバ・ボサ・ノバ』に続いて、2回目のショーの新人公演だ。
 芝居は役が付かないと勉強する機会は限られるけれど、ショーだともっと範囲が広がる。
 なんつーか、「スター!」としての練習は、ショーが適しているんだ。
 無名の下級生たちもが「スター!」修行を2年連続でできるんだもの、そりゃあ個々以前に組としてのパワーが上がるでしょうよ。他組の台詞ひとつふたつであとはモブ、なんて芝居の新公を続けてきた同じくらいの立場の子より、多く経験値稼ぎできたことでしょう。

 ショー、レビューは、タカラヅカならではのもの。大劇場ならではのもの。
 外部の俳優養成所では学べないもの。
 だからこそ、劇団が今、力を注がなければならないもの。
 小器用に小さく地味にまとまりがちな、現代の若者たちにこそ、「自ら発光する」ことは、必要な経験。

 だからすべての組で、等しくショーの新人公演をするべきだ。
 タカラヅカは今、ほんっとーに「スター!」を必要としているのだから。


 とはいえ。

 「スター」のいないショーは、観ていてつらい。

 ショー力の低下は、劇団も危惧したことがあるんだろう。で、2006年、2007年とショーのバウ・ワークショップを5組通して公演した。
 芝居との2本立てで「主演スター」を据えた『Young Bloods!!』はともかく、ダンスのみで主演も立てない『ハロー!ダンシング』は興行的にもスター育成的にも、芳しい結果を残さなかった、と思う。

 ショーで「客から金を取る」ってのは、難しい。

 芝居なら、ミュージカルなら、とりあえず物語自体で興味を引き、場を持たせることはできるけど。

 ダンスや歌の技術があったって、それだけで「タカラヅカのショー」は成り立たない。

 ショーの新公は、ほんとに大変なんだろうなあ。
 演じる生徒たちもだし、支えるスタッフもだし、また、下級生たちでそれをやって「成立させる」こと自体が。

 『ノバ・ボサ・ノバ』はミュージカルに近い作りなので、出演者に力がなくてもある程度「芝居的に」フォローできる。
 しかし、まったくガチのショーとなると、「スター」がいないと空中分解する危険がある。


 てな前置きをしつつ。

 うまいな、と思った。

 主演はマカゼくん。
 本公演で役替わり2番手を務めたことのある、新人とは名ばかりの年季の入ったスター。

 いくら劇団推しでも、経験値のない下級生では、大劇場のショーで真ん中を務めることは出来ない。大劇場ってのはそれくらい特別な、とんでもないところだと思う。
 その点マカゼくんは、今までもさんざん大劇場で真ん中に立ってきて、「今さらなんで新公に出てるの?」的な子だ。
 大階段でも総スパン衣装でも、なんでも来い。彼はもう新人カウントじゃない、押しも押されもせぬ星組3番手スターだ、そりゃショーの主演もこなせるでしょうよ。
 3番手主演公演をわざわざ用意してあげたみたいなもんだー。

 が。
 なにしろマカゼ氏は、いろいろと不自由な人だ。
 「スター!」としてのヴィジュアルは問題ないんだが、なにしろ基礎技術力が低い。歌苦手、ダンス苦手、得意技は「スターです!」と真ん中に立つこと。
 いくらスター力があっても、この実力でショー1本まるまる君臨しろというのは、あんまりだ。……いやその、見せられる、観客が(笑)。

 つーことで、「スター!」としてのハッタリのみ場面はマカゼ。
 見てくれだけでない技術を発揮して歌やダンスを「魅せる」場面は、礼くんが受け持った。

 わたしは相変わらず下準備ができておらず、「芝居はれいやくん主演、ショーはマカゼ主演」程度の認識で観劇した。
 だもんで、れおんくんの役を、マカゼ以外がやることを、知らずにいた。
 や、少しは役割を別の子に振るのかもしれない、とは思ったよ。芝居と違って、通し役じゃないんだから。

 しかし、あそこまで礼くん大活躍とは思わなかった……!

 配役の潔さに、膝を打った。

 マカゼはきれーな衣装でばーんっ!!とポーズ取るだけ!!
 難しいところ、技術半端ないところは礼くんに丸投げ!!

 すげえ!!
 これなら、つらくない!!

 過去の「スターのいないショー」「下級生だけの、場の持たないショー」を知っているだけに、それらの欠点を改善したこの星新公に感動した。

 マカゼは、スターだ。
 足りないところが山ほどあるけど、彼は真ん中に立つことが相応しい。
 彼がわたし好みの容姿をしているっちゅーことも個人的に大きい(笑)んだけど、顔立ちだーのでかい図体だーのだけじゃない、「愛らしさ」があると思うんだ。
 足りないところを補う魅力というか。
 ヘタレかわいいっちゅーか、危なっかしいところも含めて、彼を魅力的だと思う。

 この『Étoile de TAKARAZUKA』新公に、トップスターがいる。
 この面子の中では、揺るぎなくトップスターだ。

 しかし、彼だけでは55分持たない。彼はスターだけど、練習中の身だ。実力ナシのハッタリ力のみで1公演支えられない。

 トップとして実力を見せつける場面は、礼くんが受け持つ。
 「ホンモノ」ってのは、こーゆーもんなんだ、と見せつける。

 男役らしい顔立ちとか体格とかを持たず、丸っこいオンナノコな顔とカラダで、ただ技術のみで、「真ん中であること」を見せつける。
 足りない部分を吹っ飛ばす、たぐいまれな実力で。


 面白かった。

 ベニー主演だった、『スカーレット・ピンパーネル』新人公演を思い出した。

 ベニーとまひろが好対照でね。
 ベニーがてかーーっ!!と彼独自の明るさで、実力以前のところで舞台を占領し、客席を沸かせたあと、まひろが真っ黒に熟れて登場し、実力と熱で舞台を支配する。
 この繰り返しだった、あの伝説の新公。
 面白すぎて、客席で悶えたわー(笑)。


 適材適所、良い新公でした。
 通し役の芝居では、こうはできない。

 どの組でもショーの新公してくださいよ。
 華担当、実力担当とか、分けて使えば、作品を空中分解させずに済むんだから。

 ……なのに来年、ショーなしばっかだし……。

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