どこか、かわいい子猫いませんかね……。

 いい加減限界だー。
 こんな寒い朝、寒い夜、猫がいない生活なんて。


 トコはその夜、よろよろのカラダでわたしの部屋にやって来た。
 それまでずっと、1階のコピー機の陰に隠れるように、誰にも触られない・見られないところで寝込んでいたのに。
 骨と皮だけのカラダで、2階まで上がってきた。

 彼女が全快する未来を疑ってもいなかったわたしは、「よくなってきてるんだ」と喜んだ。
 今まで飼っていた猫は、ほんとうに具合が悪いと、ほんとうに別れのときが近いと、人間の目と手の届かないところを望むようになったから。

 その1日半後、トコは死んだ。

 やっぱり、わたしの部屋から逃げ出して、1階のコピー機の陰で、だったけど。
 そこがいちばん楽な場所だったんだろうに、それでもわたしの部屋までやって来た。
 わたしのそばまで来て、横になっていた。
 カラダの許す限界まで、わたしのそばにいてくれたんだ。

 よくなると信じていたから、薬もエサも与え続けた。
 手遅れなら、そっとしておいたのに。あんなに嫌がるのを押さえつけて、飲み込ませなかったのに。
 治るって信じていたから。疑ってなかったから。

 エサを食べなくなったトコの口をこじ開けて、獣医さんから指示されたエサと薬を注射器で飲み込ませるのが、わたしの日課だった。
 噛みつかれ、引っかかれ、手が腫れ上がり仕事もできなくなり、わたしも病院へ通い、指にプラスチックを巻いてガードして、それでもエサと薬を与え続けた。
 嫌がるのを捕まえてケージに入れ、獣医さんに連れて行った。

 嫌がることばっか、してたなあ。
 なのに、それでも、部屋まで来てくれたんだね。


 手のケガが治っていくのを、爪の中の出血のあとが、消えていくのを悲しく見ていた。
 手が治る頃には、またトコに会えるかな。きっとすぐに生まれ変わって、会いに来てくれるよね。
 この内出血した親指の爪が生え替わる頃には、新しいトコに会えているよね。

 そう思って待っているのに、まだ出会いがないよ~~。

 爪は生え替わってしまったよ。
 血の色の残った最後の爪を切ったとき、泣けて泣けてしょうがなかった。

 トコが残したモノが、わたしから消えてしまった。


 どこかに子猫、いませんか。
 新たに縁があった子猫を、トコの生まれ変わりだと思って、大切にします。

コメント

日記内を検索